【物語詩】子どもになった夢を見た日
背中に羽が生えたように体が軽い
でも見える世界は急に低い
驚きでジタバタする手足は短い
どうやら体が子どもになったみたい
小さい頃ってこんなに自由だったっけ
夢を自覚した僕は久しぶりに微笑む
不思議なことにマンションの部屋の中
ちょっぴり古臭い実家ではない
昔を回想しているわけではないらしい……
仕方ない ここにいても仕方ない
ご都合主義で最初から子供服は着ているし
夢の中ならきっとなんとかなるさ
ベットの脇からスマホを
スーツのポケットから財布を取り出し
なぜかあった子どもサイズの靴で飛び出す
通い慣れた道でも新鮮に感じる
体が子どもになっただけなのに
かつては子どもだったのに既視感はない
それに コンビニでおにぎりを買っても
電車に乗るため改札をくぐっても
誰一人それを止めようとはしない
皆 ニコニコしながら見守っている
……一人で出歩くには平気な年齢なのか
これも ご都合主義の一環なのか
少し駅を乗り継いで 実家の最寄り駅へ
そう言えば……随分と懐かしいな
僕は随分と遠くに旅をしたんだな
いつもより長い時間が掛かったけれど
そう言えば 夢にしては長いけれど
これできっと安心して夢が醒める
微睡む目を擦って家路を急ぐ
背の高いチャイムを鳴らしたら
目を丸くした両親が出迎えてくれた
あれ……僕は若返ったのに
父も母も年を取ったままなんだな
遠のく意識の 薄いベールの中で
父が何か言っている 母が泣いている
ごめんね どうしても もう眠たいんだ
でもね 帰ってくるまで楽しかったんだよ
帰るだけなのに冒険しているみたいで
僕 楽しかったんだよ
だから目が覚めたら また冒険するから
会いに行くからさ サプライズでさ
僕のちっぽけな仕事の武勇伝でも聞いてよ
しょうもない子どもじみた話だと思って
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