【物語詩】海に包まれる
白は200色あるって聞くけれど
海にはすべての白が詰まっているのかな?
砂浜の 波打ち際の飛沫を見つめながら
私はぼんやりと考える
黒いパンプスを履いた足元は
紺のスーツよりも憂鬱そうで頼りない
今日の面接も上手くできなかった
不調の釣り人みたいに溜息が出る
小さい頃からよく遊んでいたこの海は
今日はなぜか大人しく揺れている
気分転換で寄り道したのに
あの頃の私を鮮やかに思い出せない
もうダメなのかな 休んだらいいのかな
頭の中の声が 波のように押して引いて
気づけば 私は 海の一部になっていた
いろんな人が訪れて 去って行き
いろんな言葉を海は飲み込んできた
かつての私みたいな子ども達の笑い声や
恋人や家族の穏やかな語らいや
老人の声なき追想による悟りや
いろんな叫びや 呟きや 歌声や
大きい心 小さい心 飛んでいく
渦潮に呑まれて 深いところに溶けていく
ぬるま湯のような微睡みで
心臓の辺りに溜まっていた毒が流され
漂流していた瓶のように透明になった頃
ふと 私は人間に戻っていた
靴の中まで海水に浸り砂だらけになった足
魚が水面で跳ねるように砂浜へ上がると
人間になった人魚のように
生まれ変わった心地が 夢ではないのだと
目尻から湧いた海の雫を指で掬い取り
日常へと帰る前に 最後に振り返る
深くて大らかで すべての青を持つ海を
もうじき夕陽で 赤く染まる前に
あとがき
今回は明日が「海の日」ということで、海をテーマに作詞してみました。祝日っぽい、めでたく明るい作品にはなりませんでしたが、海辺の匂いとか波の音を想像しながら楽しく書けました♪
トップ画像も、ここ最近の中では上出来かも!(笑)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?