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不定期投稿です。 たまにストーリ性が重厚なやつがあります。 テーマはわりと自由です。
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【詩】冬の音が聞こえてくる

寝坊をしてしまった私は 時計を見た途端に大きい独り言をする 「嘘だ」「なんでこうなったの?」 バタバタと身支度して未来へ駆ける あいにくなことに お天気はゴキゲン斜め なんだか良くない空気だと思いながら カーディガンを羽織った体を翻えす ポカスカと本日の仕事をこなして へとへとになった仕業を追えずに グダグダの心境に仕えて夢を見る 確かに聞こえたの 「嘘だ」「なんてこった」 ごうごうと低く硬く唸っていたの 貴方は誰ですかと問うて 「俺は将軍だ」と答えられて それはサム

【詩】鳥と花

唄を忘れたカナリヤは 月夜の海で心を取り戻すらしい きっと波で涙を思い出すように じっくりと不死鳥のように生まれ変わって わたしの命は一度きりだけれど どうやら 心が茨で縛られてしまって 生まれ変わらないと羽ばたけないみたい わたしを見ているあなた どうか慈悲があるなら 夢を見させて もしも棘が血を吸わなければ 美しい薔薇が咲かないというならば わたしは花を纏う鳥になりたいな いろんな国を渡り飛び 虹のように煌めく知識を食べながら わたしに咲く花へ美貌を与えるの わ

【詩?】ぐるぐる

どうしたらいいって思う。 しんどいなって言いたいと思う。 正義が敵を倒すように、 スッキリできる必殺技があればいいのにな。 現実はそうもいかない。 私たちの人生はテレビドラマじゃない。 あっさりと30分や1時間では終われない。 だから、しんどいとか嫌だとか みっともないこと言えないときもある。 それがそうあるべきって信じ込んで、 言えないことをしんどくなるときもある。 溜め込むと、頭の中で乱反射して、 モヤモヤの正体すら見えないときもある。 ぐるぐる。ぐるぐる。 まる

【詩】じわじわジンジャー

ここは冬将軍の主催するパーティ会場 クリスマス 正月 バレンタイン イベントは過ぎ去りそろそろ大詰め 雪細工やオーロラで会場は大盛況 けれども人間代表の私にはちょっと寒い 艶やかでスマートなドレスコード勢の中で 一人だけ まるで雪だるまみたいな着こなし でも ハードモードの中でこそ映える冬を どうにか最後まで楽しめますようにって とっておきのお守りを持ってきた 自家製・自慢のホットジンジャー! 蜜蜂から分けてもらった琥珀の雫と 冬支度よりも前に収穫しておいた生姜に ふわ

【詩】もういいかい?

「もういいかい?」 豆を握りしめ そっと問いかける ずっとこの日を待っていた気がする 鬼退治をするチャンス 容赦のない寒さの中で かじかんで痛覚の麻痺した耳たぶに ナイフのような言葉が木霊していた 君はきっと知らないんだろう だって自分の言葉ってすぐ忘れちゃうから ぼくは一秒たりとも忘れない 言われたことを返品するまでは オニハソト フクハウチ 「もういいかい?」 渾身を込めて豆をぶつける 雑節の鬼が逃げ惑い 隠れる それを探して捕らえるのも そういえば鬼 「まぁだ

【詩】私の魔女が言うには

私の心の魔女が言う 「モヤモヤ、ムシャクシャしているねえ」 炎の魔術を準備をしながら 「いっそ全部燃やし尽くしてみるかえ?」 私の中の私が言う 「きっと大丈夫」 「時間が経てば、良くなるから」 私の心の魔女が言う 「メソメソ、クシャクシャしているねえ」 泉の魔術を準備しながら 「いっそ全て流してみるかえ?」 私の中の私が言う 「たぶん大丈夫」 「時間が経てば、良くなるから」 私の心の魔女が言う 「なよなよ、ひょろひょろしているねえ」 芽の魔術を準備しながら 「いっそ覆

【詩】2022年11月18日のどこか

今日は11月18日だなと思って 11時18分に時計を確認する そんなささやかな偶然にニヤリとする人 自分は5月18日生まれだからと 午後5時18分にテレビの時刻表示を見て なんとなく満足している私 11月18日と5月18日って ちょうど半年の距離感だなと 計算してみたり そうしているうちに 良い報せに気づいちゃったりして 他の誰にも琴線を鳴らせなくても 自分だけ拍手喝采のことってあるよね 「自分」というワンダーランドの中で ファンタジーなハプニングに驚き笑い 少しだけ

【詩】ごますりの道

暗い道を歩いているんだ 重い空気を吸っているんだ 「ありがとうございます!」 ニパッと笑って溜息を隠したり 「その通りですね!」 相槌の軌道をこっそり斜めにしたり 「こうしてよね」 無理難題を押し付けられ 「なんで解からないの?」 答えられないルールを悪用され 生きるためで、あなたへの行為ではない 心に誓ってヘラヘラとゴマをすっている もう感覚もない程にずっと それなのに香りは無くて 自分は何をやっているんだろうとも思う どうしてだろう? 胡麻の香りはあんなに好きだっ

【詩】ねんどろーん

舞い上がった気持ちは 吹き飛び去るほどもでもなく こねこねと 私の手中に収まっている 手放せてしまえたら楽なのに ずっと嚙み砕くように揉んでいる 誰かに飲み込んでもらえるように でも引っ込み思案だから ぶち込めないんだ うねうねと ねぇ どう行けば飛ぶ? 奥手な私の放筆力は だんだん狭くなっている気がする 活力を注いで活路を開けろ! まるで血潮を巡らせるように 途切れる前に届けたいんだ もにょもにょ ごにょごにょ…… とか思う間に暗闇が 容赦のない獲り合い合戦が

【詩】はじめての果実

ひょんっとテーブルに現れた 見覚えのないフルーツ 実らない初恋のように 一目惚れしたんだ 眺めて香りを嗅いで触れてみた なんという変態行為 高鳴る心臓にフェチズムがブッ飛ぶ 掠れた喉が潤いを求める こぼれた言葉を手紙にしたためる キスしてみたんだ そっと取り分けて緊張のヒトクチ ひどく秩序を乱す口づけは甘酸っぱく どうしようもない切なさで涙の味 とどのつまり僕は淡く広がって 未経験の君に翻弄されてしまった はじめてが溢れて過ぎていて 果実に相応しい人間なのかなんて