マガジンのカバー画像

39
不定期投稿です。 たまにストーリ性が重厚なやつがあります。 テーマはわりと自由です。
運営しているクリエイター

2023年2月の記事一覧

【詩】マルを描こう

「先生、できました!」 瞳をキラキラさせながら弟子が報告する ハイハイと弟子に歩み寄るその視界には なんということでしょう 確かに美しい丸印 精密に計算された筆致と筆色には 弟子の純粋で誠実な人柄が滲み出ている そして そこから紡がれるファンタジア 音色を聴き取った魔法使いの先生 こくりと頷き返す「よくできました」 実はここからが始まりなのだ 「これを人々に広めてくるのです」 魔法使いの弟子は口元をキュッと引き締める 「はい、先生!」 弟子はチョロキューと街へ繰り出す

【詩】じわじわジンジャー

ここは冬将軍の主催するパーティ会場 クリスマス 正月 バレンタイン イベントは過ぎ去りそろそろ大詰め 雪細工やオーロラで会場は大盛況 けれども人間代表の私にはちょっと寒い 艶やかでスマートなドレスコード勢の中で 一人だけ まるで雪だるまみたいな着こなし でも ハードモードの中でこそ映える冬を どうにか最後まで楽しめますようにって とっておきのお守りを持ってきた 自家製・自慢のホットジンジャー! 蜜蜂から分けてもらった琥珀の雫と 冬支度よりも前に収穫しておいた生姜に ふわ

【詩】もういいかい?

「もういいかい?」 豆を握りしめ そっと問いかける ずっとこの日を待っていた気がする 鬼退治をするチャンス 容赦のない寒さの中で かじかんで痛覚の麻痺した耳たぶに ナイフのような言葉が木霊していた 君はきっと知らないんだろう だって自分の言葉ってすぐ忘れちゃうから ぼくは一秒たりとも忘れない 言われたことを返品するまでは オニハソト フクハウチ 「もういいかい?」 渾身を込めて豆をぶつける 雑節の鬼が逃げ惑い 隠れる それを探して捕らえるのも そういえば鬼 「まぁだ