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書店員時代の悪夢

昼寝をしていて、久々に悪夢を見た。

久々に書店員時代の夢。
原因はおそらく、町に出るとあちこちで流れているクリスマスソングのせい。

意外に思われるけど、書店のクリスマスは忙しい。一年の中で一番のかき入れ時と言っていい。

なぜなら、子供へのクリスマスプレゼントに絵本が選ばれることが多いから。

これ自体は嬉しい。こんなに世の中にたくさんの娯楽が溢れているのに、子供達に絵本が選ばれる…あるいは、子供に絵本を与えたいと思う家族がいることは本当に嬉しい。薄利多売の書店において、売上が上がることも。

ただ、ラッピング地獄が恐ろしい。

ラッピング。簡単なようで奥が深い。そして確認事項も多く、忙しい時間においては魔の迷宮への入り口でもある。

よほど自分の中でトラウマになっているのか、夢の中の内容も妙にリアルだった。

12月に入ると、土日にはレジ付近にスタッフを一人増員する。通常はレジ担当者がラッピングを担当することも多いけど、この時期はそれでは間に合わない。ラッピング専用の担当者を一人置いておく。

ラッピング担当をしている私に、バイトの男の子が本を持ってくる。

コミックが5冊。絵本が3冊。計算ドリルが4冊。

(意外とコミックや計算ドリルもラッピングを希望されることが多い。コミックはともかく、ドリルの場合は貰った子供の反応が気になってしまう…)

それぞれジャンルごとに包み紙で巻いていく。絵本が難しい。コミックやドリルは大きさが揃っているけど、絵本は大きさがまちまちなので。

終わりかけたところで、バイト君が「レジ打ち忘れてました!」と声をかけてくる。私はヒィー!と思わず悲鳴を上げる。本のバーコードは本体の背面に印刷されている。そして本はすでにツリーの模様の包み紙に覆われている。

「スリップ見ながらレジ打って!」と私は叫ぶ。

スリップというのは、たまに本に挟まってるあの栞のような紙のこと。

本のタイトルやISBN(その本のマイナンバーのようなもの。本を注文するときに、本屋さんに伝えると喜ばれる)といった情報が書かれている。

昔はこの紙を使って在庫の管理や発注を行なっていたけど、最近はデジタル化しているのでそんなに重要ではなくなっている。一方で、書店員としては、出版社への返品ができない、などの情報も載っているので地味に便利なこともある。ここまで余談。

スリップにはISBNが記載されているので、これをレジに直接打ち込めば、バーコードを通したのと同じ扱いになる。これで問題解決だ!

と思ったところで、バイトの男の子が叫ぶ。

「ラッピング、一冊ごとにしてほしいそうです!!」

一気に目の前が真っ暗になる。目の前には三つのプレゼント。これもあるある。聞けばよかった、事前に確認しておけば…。

膝が折れそうになったところで、サービスカウンターの横からお客さんが

「探して欲しい本があるんだけど」
「このボールペンの芯ってどれ?」
「ねこのきもちって雑誌、どこ探してもないよ(ねこのきもちは通販雑誌なので、書店にはありません)」
「Amazonで本取り寄せてほしいんだけど(家でやってください利益がなくなります)」

と一斉に声をかけてくる。

ああ…ああ…と視界がぐにゃ〜となったところで目が覚めた。汗だく。知ってる天井。布団の上に寝ている私は、もう書店員ではない。

恐ろしかった…と呟く反面、いまになって湧いてくる気持ちも沢山ある。

せっかくクリスマスプレゼントとして本を選んでくれたんだから、もっと丁寧な接客をすればよかった。

スタッフの確認漏れがあるなら、簡易マニュアルを作ればよかった。

問い合わせでレジ周りがパニックにならないように、配置も見直した方がよかったし、問い合わせあるあるも何か企画にしてみたら面白かったかも。

などなど…。お店や会社、当時の自分の状況を思い返すと、多分無理だったけど。あれもこれもと、今更思うことがある。もっと頑張れば良かったという未練が自分の中にある。十分頑張った、という気持ちもあるけど。

という、夢の話だった。
12月の土日に書店に行く人は、店員さんがパニックになっていてもどうか温かい気持ちで見守ってあげてください…。あと口頭で本を注文するときは、ISBNを教えてあげてください…。

(あと全然聞いてもらってウェルカム!だけど、ボールペンの芯は芯本体に品番が印字されてるので、それ見ると探す時に楽ですよ)

そんな感じで。
ではまた、機会がありましたら。

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