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10月の読書

9月はディストピア小説から派生して、世界情勢に関する本、そして息抜きとしてSF小説を読んだ。

今月は、英語の勉強を始めたり、仕事がちょっと忙しくなったりと、情報過多になってしまったので、休憩中(虚弱…!)

そんな感じで、10月に読んだ本は短編が多くなりました。では、以下からさらっと紹介してみたいと思います〜。

美女と野獣 Beauty and the Beast (ラダーシリーズ Level 1

英語の勉強を始めたので、息抜き用に買ったもの。

ひたすら基礎学習をしていると「商談に遅れそうとか、荷物が破損しているとかそういう例文的な話はもうええねーん!!」という気持ちになる。そういうときに楽しく読むための本。

このラダーシリーズは、作品ごとにレベルが設定されていて、はしご(ladder)を登るように、ステップアップしながら英語の多読、速読ができる。

というわけで、一番やさしいlevel1の「美女と野獣」からチャレンジしてみた。レベルは大体中学生くらい。なので、比較的スラスラと読める。

美女と野獣というとディズニー映画が有名だけど、その元になった原作がある。最初にヴィルヌーヴという人によって書かれたものと、それをボーモンという人が1/9程度のボリュームに短縮して書き直したもの。このラダーシリーズは後者になる。

この原作の美女と野獣は、ディズニー版とは異なる部分が結構多い。

ディズニー版のベルにあたる主人公には、3人の兄と2人の姉がいたり(大家族!)、父親は元々大金持ちの商人だったり。

この父親の事業が失敗して、一家は没落。

色々あって野獣の城に迷い込んだ父親が、薔薇を盗んだ罪を贖うために末娘を差し出さなくてはならなくなる。野獣と親交を深める美女だったが、弱った父親の姿を魔法の鏡で見てしまい、家に帰りたいと野獣に申し出る。というところはディズニー版とは大体同じ。

ただビビるのが、美女の姉たちが彼女の美しさや純粋さを妬んで、野獣との生活を壊すために、実の父親を毒殺しようとする点。

作中、美女が一週間以内に城に戻らないと、野獣は死んでしまうという謎の誓約があるのですが、このお姉ちゃんたちは父親が一週間かけてゆ〜っくり死ぬように、毒の量を微調整したりしています。怖すぎ。

そしてそんな悪事の報いとして、最終的には妖精に魔法をかけられて、石像にされた上、野獣と美女が暮らす城に横に飾られます。

美女はそれでいいのか?!
石像になった姉を見ながら、楽しく庭をお散歩できるのか?!

と、ツッコミどころがたくさんありましたが、昔のヨーロッパのおとぎ話や童話って、こんなふうに妙に残酷なものが多いような気がします。

あと、末っ子が成功する一方で、年長の兄姉が悲惨な目に遭うパターンも。

調べてみると、民俗学では「末子成功譚」というものに分類されるようです。これは世界各国で見られるもので、長子が優遇される世の中において、逆転劇を描くことで物語の面白さを確立した…とか、逆に末子相続の風習から生まれた、とか、理由はさまざま。これもまた、調べてみると面白そうです。

夜を乗り越える(小学館よしもと新書) 又吉直樹


お笑いコンビ、ピースのボケ担当であり、第153回芥川賞作家でもある又吉直樹さんによるエッセイ。

又吉さん自身の過去の経験から「読書とは何か」「なぜ本を読むのか」というテーマに向き合った作品。

又吉さんのイメージというと、いまでこそ「内向的で繊細そう」「独自の世界観がある」という感じ。

しかし意外なことに、幼少期は体が大きかったためか、周囲からガキ大将としての振る舞いを期待されていたとか。

大人に対する不信感や反骨精神、周囲の期待に応えようという気持ちから、問題児のような扱いをされるようになり…。しかし、信頼できる人との出会いや進学のタイミングによって、素の自分を出すようになります。

その過程で太宰治の「人間失格」に出会い、あの有名な「ワザ、ワザ」のシーンに衝撃を受けたそうですが…

私も同じく「ワザ、ワザ」にショックを受けた人間だったので、わかるわかる…と共感してしまいました。

他人に自分を見透かされる感じ。それも、自分が見下している相手から。

さらに、その指摘を帳消しに暴露を封じ込めるために、相手の親友になろうとする。

ちょっと嫌悪感が湧くくらいの卑しさを感じてしまうけど、人間ってそんなもん。太宰治は、みんなが心のうちに持っている卑しさを描くのがうまいな…と思います。だからこそ、体調が良い時にしか読めなかったりもしますが…。

おすすめの太宰治作品も紹介されているので、太宰治に興味がある人や、自分以外の人が何を思って読書をしているのか気になる…という人に良いかも。

駆け込み訴え(青空文庫)
太宰治

又吉さんのエッセイを読んで、もっと太宰の作品を読んでみたいな〜と思い立ち…そんな時は青空文庫だ!とたどり着いた一作。

私は「春とヒコーキ」というお笑いコンビが好きなのですが、ボケ担当のぐんぴぃさん(ネット界隈ではバキバキ童貞の通り名の方が有名かもしれません)が好きな作品として挙げていた一作でもあります。

(余談//ぐんぴぃさん、ラジオやYouTubeはど下ネタばかりなのですが、話のジャンルを問わずプレゼンがめちゃくちゃ上手いんですよね。下ネタの合間に挟まれる映画のレビューが好きで、いつかぐんぴぃさんの書いた本を読んでみたい…と思っています//余談終わり)

突然、駆け込んできて「自分の師を殺してください」と訴える男の独白により、物語は進んでいきます。

男の言動には揺らぎがある。師を殺したいほど憎悪する一方で、深い愛情を見せる。相手を神格化したかと思えば、独占欲、束縛欲といった俗っぽい感情も見せる。

話を読み進めるとわかるのですが、この男の正体はいわゆるイスカリオテのユダ。

つまり男が殺して欲しい師というのは、イエス・キリストになります。

ユダ=「元キリストのトップオタ」というのは、上記リンクのぐんぴぃさんによるフレーズなのですが…これがまさにぴったり。

勝手な好きになって勝手に期待して、自分が相手に向ける感情は、他の者のように俗っぽいものではないと語りながら、向けたのと同じだけの愛がないと憤る。

向けた愛と同じだけの憎悪が、心の中でマーブル状になっていく。

現代でもよく見る構図ですよね。芸能人に対してとか、自分のSNS、あるいは身近な人間関係でも。私自身、どちらの立場の気持ちも感じたことがあるような気がします。

↑の感想でも述べましたが、太宰はこういう人間の身勝手さを描きながら

こんな汚い人間って嫌だよね〜

けどいま、嫌悪感を感じているあなたも、同じ穴のムジナだよね〜

と、目の前に叩きつけてくるような気がします。それが気持ちいいとも思うのですが、やっぱり元気がないと読めなさそう。

右大臣実朝(青空文庫)
太宰治


続けて読んだこの一作。鎌倉幕府の第三代将軍、源実朝の若年期〜生涯の終わりまでを描いた作品。

私も世に漏れなく「鎌倉殿の13人」にハマっていて…、特にこの物語の主人公である源実朝が好きです。

演じている役者さんの素朴で繊細な演技も相まって、どんどん魅力を感じています。が、このドラマで登場人物を好きになるのは、悲劇の伏線…。

本当に面白いドラマですが、元になった史実がなによりもドラマチックかもしれませんね。

この右大臣実朝は、実朝の侍従によって語られます。合間に吾妻鏡の記述が挟まっているのですが、感情のこもった語り口と淡々とした記録が、心を揺さぶる。うまいな〜…

本当の悲劇こそ、淡々と描かれるのが心に響く、と思います。誰かの目を通して叙述的に表現された悲劇ももちろん良いですが、その情景をただただ想像させられて、置いてきぼりにされるのも良い。

ちょうど追いかけで実朝の歌人らしさが強調された回を観たのですが、この小説とはまた違った解釈で面白かったです。

ドラマを観ながら、生まれる場所や時代が違えば、違う道があったのかも…と思いつつ、この右大臣実朝で描かれる「きれいな神様」のような現実味のない実朝もいいなぁ…と歴史に思いを馳せてしまいます。


そんな感じで。
来月は何を読もうかな〜。

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