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本の感想まとめ

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2021年9月の記事一覧

うつくしい人の感想

うつくしい人の感想

百合は自分が分からなくなっていた。
他者からどう思われるかを考えて友達も恋人も仕事先も選んできた。
彼女は強烈な自己否定に苛まれていた。
親のお金に頼っている、会社を辞めた、怠惰な生活を送っている自分。
姉の存在が彼女をさらに追い詰めた。
美しい姉をみると、自分の汚なさを感じさせられた。
そして、彼女を不安や孤独の沼に陥れた。

そんな百合がある島のホテルに旅行へ行き、二人の人間と出会う。
物事の

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この嘘がばれないうちにの感想

この嘘がばれないうちにの感想

「コーヒーが冷めないうちに」の続編である。
今作も心温まる話が4遍。

人は誰しも心の奥に一つや二つ後悔を抱えているのではないだろうか。
人は一度くらい死にたいと思ったことがあるのではないだろうか。

自分が死ねばすべて終わる。
そんな風に感じていた幸雄だが、それは死んだ母を悲しませるということに気づいた。

自分が妻を殺したと感じ、警察官という仕事に自分を縛りつけた清。
自分が母を殺したと感じ、

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窓の魚の感想

窓の魚の感想

曖昧な沼のような雰囲気をまとった作品だった。
誰が死んだのか、小説には記されていない。
牡丹の刺青の女か、ナツか…
身元が分からないというから、牡丹の刺青の女なのかもしれない。
鳴き声だけが聞こえて姿が見えない(牡丹の刺青の女にだけ見えていた)猫の存在は何を示していたのか…

ナツ、アキオ、ハルナ、トウヤマの4人とも何かが欠落していた。
みんな秘密を持っていて本当の自分を奥深くに隠しているようだっ

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乳と卵の感想

乳と卵の感想

短い小説だけれど、難しかった。
文章の書き方が止まらなく、点の箇所が多くて一文が長かった。

豊胸手術を受けることに取り憑かれている巻子と、言葉を発することを拒否する娘の緑子が、東京の巻子の妹の家を訪ねる。

クライマックスの緑子が卵をめちゃくちゃに割りながら「お母さん」と叫ぶシーンが印象的だった。
言葉にならない声を発している感じがした。
緑子は初経を迎え、日記のなかで卵子について考えるが、生き

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