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窓の魚の感想

曖昧な沼のような雰囲気をまとった作品だった。
誰が死んだのか、小説には記されていない。
牡丹の刺青の女か、ナツか…
身元が分からないというから、牡丹の刺青の女なのかもしれない。
鳴き声だけが聞こえて姿が見えない(牡丹の刺青の女にだけ見えていた)猫の存在は何を示していたのか…

ナツ、アキオ、ハルナ、トウヤマの4人とも何かが欠落していた。
みんな秘密を持っていて本当の自分を奥深くに隠しているようだった。
個人的にはアキオの弱い者に対する異様な愛情が印象的だった。「ナツが死ぬのが怖いのではない。死んでいくナツの隣にいないのが怖いのだ。」という一節は心が震えた。

解説に「小説の余韻に浸ってほしい」と書かれていたけれど、確かにこの小説には多分に余韻が残される。

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