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ぐるりと四国旅日記 その3 「松山・道後」編

JR四国 予讃線特急「いしづち」は西へひた走る。

愛媛県に入り、車窓右手に瀬戸内海を眺めながら、川之江 伊予三島 新居浜 伊予西条 今治と細かく停車していく。古くからの内航開運の拠点である良港と、それに付随した工業地が発達した小都市が連綿と続くため、どの駅でも少しづつ降車客と乗車客がある。1時間ごとに高松・岡山と松山との間に特急を走らせる需要がある証明といえるだろうか。

15時過ぎ、松山駅に到着。ここには昨年秋にも来たので久しぶりな感は無いが、駅西側で工事中の高架化事業はかなり進捗した模様。国鉄時代からさほど手の入っていない現駅舎もまもなく見納めか。

さて、今夜の宿は、松山駅ではなく松山市駅に隣接したホテルである。四国は国鉄のネットワーク構築が比較的遅く、松山駅の開業は昭和に入ってからである。

それよりも遥か早く、明治年間に松山近郷の鉄道が伊予鉄道により開かれ、その市内側ターミナルとなったのが初代松山駅、現在の松山市駅で、駅の規模といい周りの繁華度合いといい、簡素で長閑な松山駅は百貨店や地下街、ホテルから観覧車までを擁する松山市駅に遠く及ばない。明らかに松山市駅のほうが栄えている。

ホテルに着き、今回の旅に関してうまいこと適用された「全国旅行支援」の手続きをする。接種証明の提示や、確認書への署名など若干煩雑だが、これで宿代が4割引、さらに宿泊施設と同一県内で使えるクーポンが平日なら3000円も貰えるのだから文句はさほどない。

部屋に通され荷解き。前夜の不眠を多少でも解消すべく、2時間ほど昼寝。

少しスッキリして17時半に宿を出発。松山市駅を少し眺めたのち、同駅前から伊予鉄の市内路面電車、本町六丁目行きに乗る。

実は今回の旅を平日に設定したのはこの電車に乗るため。延長1.5kmの路線・本町線。かつては20分毎に電車が行き交っていた普通の路線だったのだが、並行して走る同じ伊予鉄のバスの影響などもあり、徐々に本数を減らし、2020年からは土日祝運休となり、ある意味勤め人には非常に乗りにくい路線になってしまったのだ。

市内電車なので、風景は絶えず市街地。本町一丁目付近が松山城の堀端沿いになるのが唯一のハイライトか。わずか10分ほどで終点の本町六丁目。すぐに折り返しの便に乗り、帰りは南堀端で下車した。

南堀端で降りたのは、この日の夕食会場をここから近い花園町の居酒屋「あかり」としたため。刺身をはじめ愛媛の幸を中心にした数品を肴に、ビールとみかんサワーをいただく。うん、うまい。地元のお客さんからの信頼も厚い店のようで接客もよく、満足満腹であった。

店を出たのはまだ20時にもなっていないが、疲労回復のためにそのまま宿に帰り就寝。やはり走らないホテルの方が寝やすいですね。(当たり前)

翌朝。ホテルの大浴場で朝風呂を浴び、7時過ぎにチェックアウト。松山市駅内のドトールで朝食を摂り、朝から乗り鉄大会。伊予鉄のまだ乗っていない2線区、横河原線と高浜線に乗るべく、まずは横河原線のホームへ。

松山市と東側の東温市を結ぶ横河原線。元京王電鉄の車体を使用した車両に乗ること30分。朝の郊外方向にしては思いの外乗客があり不思議に思っていたが、愛媛大学医学部の最寄りで多くが下車し氷解。

終点の横河原は小さな駅だが、周辺は都市近郊らしい雰囲気。駅前の駐輪場にはビッシリ自転車が置かれ、さらにこの先にあるであろう住宅地の広がりと、松山都市圏の広大さを想像させた。

横河原線で不思議なことがもう一つ。通常日本の鉄道は左側通行であり、単線区間の行き違い駅も多くはそれに倣って運用される。ところが横河原線、これがあまり適用されず、駅によって右に行ったり左に行ったりと面白い。なぜだろう、なぜかしら?もちろん、適当にやっているわけもなく、なんらかの原則はあるのだろうが…

そんな横河原線の電車は松山市駅に戻り、高浜線にそのまま直通する。この高浜線、松山市から三津の間は四国初の鉄道であり、現在も複線の立派な線路がプライドを感じさせる。

途中通った瀬戸内海に面した小駅、梅津寺はかつて「東京ラブストーリー」の撮影に使われた経歴をもち今も観光スポットの模様。そこからほどなくして終点の高浜駅。木造の立派な駅舎である。道を挟んだ向かいには高浜港の施設が立ち並ぶ。

今は周辺の離島への航路が発着するだけの小さな港だが、かつては松山の玄関口の役割を担っていたとのこと。そもそも伊予鉄の創業路線となったのも港と市内の連絡が目的であったのだろう。

また折り返して松山市内に戻り、大手町で市内電車に乗り換え道後温泉へ向かう。「六時屋」で銘菓タルトと最中アイスを食べてから、「飛鳥乃湯」にて昼風呂。

改築中の本館と同じサービスが受けられるこちら。少し熱めだが気持ちの良いお湯をいただいてから浴衣に着替えて2階の大広間で湯茶の接待を受ける。2階のぬれ縁で秋風を感じながら小一時間リラックスさせてもらった。

昼食は「飛鳥乃湯」の真向かいにある郷土料理店「金兵衛」へ。名物の一つ、八幡浜ちゃんぽんをいただく。長崎のそれと違い、鶏がらベースのスープを使うのが特徴だそうで、見た目よりあっさりしており、スイスイ食べられる。野菜もたっぷりでうまかった。

食後、市内電車で松山の一番の繁華街・大街道へ。ここから松山市駅まで続く大アーケードを散歩して腹ごなし。あ、名物の「労研饅頭」は一つ買っておいて、と。

さて、大街道。平日昼間だから歩行客が少ないのはやむを得ないのだが、なんとなく昨年よりも空き店舗が増えた様子で気にかかる。高松と同様、商業需要の郊外への流出が続いているのだろうか。

20分ほどで松山市駅へ。ホテルに預けていた荷物をピックアップして、ちょうど目の前に停車した伊予鉄バスでJR松山駅へ。

ここからはJR四国の「四万十・宇和海フリーきっぷ」を使用した旅となる。駅構内のセブンイレブンでコーヒーなどを買い、これから乗り込む宇和島行きの特急「宇和海」を待つこととする。

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