プロコフィエフの交響曲2番など
プロコフィエフというクラシックのロシアの作曲家がいる。彼は「ピーターとおおかみ」という昔のディズニー作品で有名であり、日本ではソフトバンクの白い犬のお父さんのCMで登場する「ロミオとジュリエット」の騎士の踊りがよく知られている。
そんなユーモラスな作風と程よい叙情性が魅力的な彼だが、近代の作曲家らしく、作風にはかなりの多様性がある。
全体的に古典性とユーモアは保たれているのだが、曲によっては上記のように聞きやすいものもあれば、意図的に客の耳に圧をかけるかのように激しい激烈な音響をもつものもある。
例えば交響曲2番だ。「鉄と鋼の交響曲」である。
交響曲第2番/プロコフィエフ
オネゲルの、機関車を模した「パシフィック231」から着想を得て作られたこの作品、プロコフィエフはかなりの意欲を注いで作曲した。プロコフィエフの最大の憧れは、同じロシア人であり、「春の祭典」の激烈な音響によってモダニズムとして一斉を風靡したストラヴィンスキーであった。
春の祭典/ストラヴィンスキー ニジンスキー振付
この「春の祭典」はパリで大ブレイクした。プロコフィエフはそんなストラヴィンスキーに憧れつつ、先述の交響曲第2番を初演したわけだが。
パリの流行は残念ながらとても早かったのだ。SNSのごとく。
時は5人組の時代。人々はモダン疲れをし、エリックサティやプーランクなどの独特の親しみやすさが好まれた時代。そんな時代に突如「鉄と鋼の交響曲」をぶっこまれても、一世代前の音楽のように捉えられ、それはそれはとても冷遇されていたのである。
サティ/ジムノペティ1番 パスカルロジェ演奏
これによってプロコフィエフ自身がひどい自己嫌悪に再生され、ある意味で今後の人生につながっていったと考えれば交響曲第2番は意義深い作品といえる。晩年に彼は改訂を試みようとしたが、その前に脳溢血で亡くなってしまったため叶わぬ夢となった。
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さて、この交響曲2番なのだが一瞬だけ極めて美しい瞬間がある。それは第2楽章の冒頭である。ジブリにも通じるような灰色の空のメランコリーのような不思議なメロディだ。これも後に変奏されて破壊的な姿に変身していくわけだが。笑
自分は一つの持論として、
物凄い激しい曲ほど、穏やかで美しいシーンは何よりも美しい。
というのがある。
非常に主観的な持論だが、これは特に近代作曲家に多く観測されるように思われる。
たとえば同じプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番第4楽章は出だしは激しいのに、
中間部(2:27~)のメロディは非常に美しいフォルムをもつ。
バルトークの弦楽四重奏第4番はバルトークのなかでもとびきりに鋭い曲だが、
静の部分となる第3楽章は森の中で耳を澄ますような美しさがある。
そんなわけで、さあ綺麗な曲作るぞという時ほど、そういうことを狙わず、黒々とした物を発散しておいた方が本当に綺麗なものができるのかもしれない。とふと思ったこの頃であった。
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