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ITJ 2023 ではじまる FINISHERS PORTRAITSが実現にいたるまでの物語

前回の記事から続く物語です。
https://note.com/nuichi/n/n3933279b9cc9

IZU Trail Journey 10th anniversary !

トレイルランナーが何度もリピ出場してしまう愛され大会。記念すべき10回目という舞台で、Athty フォトとのコラボレーション企画「FINISHERS PORTRAITS」が実施されます。

FINISHERS PORTRAITS とは。以下、2023年12月5日のロンランからのプレスリリースより抜粋です。

FINISHERS PORTRAITS は、数々のトレイルランニング大会の公式フォトグラファーや、スポーツメーカーのプロダクト写真撮影などでランニング/トレイルランニング界のフォトシーンを牽引するプロ・フォトグラファーである、藤巻翔、小関信平、永易量行の三人による、ロングレース完走者のための全く新しいフォトサービスです。

IZU Trail Journey では、全面的な主催側協力を得て、フィニッシュ会場である修禅寺総合会館内の特設スタジオにて、完走したばかりのランナー(希望者)を撮影します。

FINISHERS PORTRAITS 特典として、購入後のデジタル写真に大会公式デジタルフィニッシャーバッジを載せることができます。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000067696.html

さて、何がどうなったらこんな企画が生まれ、実現に至るのか想像できますか?

大会プロデューサーの千葉さんが「こういうのやってよー」とつぶやいたら最高の写真家が集まり、瞬く間に舞台装置が組み上がって実現に至っていた… のような魔法ではないんです。

実際のところは藤巻さん、信平さん、永易さんの三人がずっと前からあたためていたアイデアを今回、暗中模索・駆けずり回り、未経験・未知の課題を次々撃破し、圧倒的に足りない時間というプレッシャーもはねのけて、実際に具現化したんです。
今回、ロンランも全面協力させていただきました。

この記事は、FINISHERS PORTRAITS 誕生秘話を私からの視点でお伝えします。
(また別の機会には、お三方の視点からの誕生物語も聞きたいなと思っています)

ロンラン、プロ写真家とはじめて話す

私たちロンランは写真を事業にしてゆこうとしている割には、実のところ写真を生業にしている方達とのリレーションが薄く、写真家自身や、写真撮影をとりまく実態・課題についての知見がまだ圧倒的に足りませんでした。

奇遇にもロンラン共同創業者タケさんの友人に、トレイルランニング大会のオフィシャル撮影やスポーツ製品撮影の第一線で活躍しているプロ写真家、小関信平さんがいたため、ざっくばらんにいろいろ質問させてもらう場をセッティングしてもらいました。2023年10月23日、月曜日。夜21時と遅い時間スタートのオンラインミーティングでした。

するとミーティングの冒頭、私たちがしたためた沢山の質問リストに手を付ける前に信平さんから逆相談。「自分の仲間うちで、完走ランナーに写真を届けるサービスをやりたい構想が前からあって…」私もタケさんも仕事柄、人の相談にはつい深く耳を傾けてしまうタチです。質問リストはひとまず閉じ、ヒアリングが始まりました。

つまりはこういうことです。彼らはプロフォトグラファーで、その両手からクリエイティブを生み出してゆくスキルがある。しかし実は、自分達が撮影した「ランナーの写真」が、被写体であるランナー本人に届く機会はとても少ない。撮った写真の中には、日の目さえ見ないものも多い。なんとか自分達が魂を込めて撮ったこの写真を、ランナー自身に受け取ってもらえないものか

長年、この葛藤は拭えませんでした。また、長いロングトレイルレースのなかで、最高に感極まる瞬間であるフィニッシュ/完走。この時のランナー達の表情と感情を写真に残し、お渡ししたい。その思いはつのるばかり。その実現を阻むとりわけ大きな課題は二つ。ひとつ目は「主催者の理解・調整」、ふたつ目は「写真提供の手段」です。

「主催者の理解・調整」については、信頼関係が構築できている気のいい既知の主催者達であれば主旨への賛同は得られそうですし、接点がまだない主催者達にしても、ランナーから大会への満足度・エンゲージメント向上という点が合致するため、否定的な意見はあまり考えられないです。

しかしながら、利害関係者との調整は、始める前から気が重くなるようなタフな課題です。それ以外にも当然、撮影会場の確保、撮影場の構築などが現実的になかなかの難課題。

併せて(あるいはそれ以上に)「写真提供の手段」については皆目検討がつかず、インターネットを通じて何らかの Web サイトやアプリでお渡しする必要があるけれど、いったいどこで、どうやれば実現できるのか…

こういった状況だったのですが、私たちからするとあまりにもタイミングが良過ぎました。フォトグラファー・エコノミーに可能性を感じて模索し始めていた矢先に、その仕組みを欲している写真家に出会った!写真家にニーズがあることを認識できました。

この機会は、フォトグラファー・エコノミー型のシステムを組みあげ、実戦投入(→評価→フィードバック→ブラッシュアップ→…)ができるまたとない好機となるかも知れない。

この日は、10月初旬以降着々と開発が進んでいた Athty フォトのプロトタイプを紹介し、さらに後日11月2日には永易さんも交えてディスカッションを重ねました。

ディスカッションの結論としては、細部については何もかも決まっていないし、足りないものも多く、お互い苦労に見合う対価があるかも未知だけど、ただ一点。協力し合えば実現できそうだ…! というイメージだけは全員が持てました。

走ると決めたなら、走りきるしかない

私たちロンランはまず、彼らがもたらしたい体験・思いをしっかりと聞き出し、イメージし、目線を揃えました。同じ目線というのはデジタル製品開発のプロフェッショナルとしては最低ラインです。在りたい姿を見据えて、目線を数段階上げて、期待値を超えてゆく。良質なサービス/プロダクトを生み出すためには、こういった深い関わり方が不可欠です。

更に、Athty フォトをフォトグラファー・エコノミー型のサービスとして変化・拡張させてゆく場合に足らない要素を整理し、製品ロードマップに書き加え始めました。

このプロセス中には重要な気づきがありました。旧来の労働集約型の撮影スキームと異なり、フォトグラファー・エコノミー型の場合は、フォトグラファーを信頼し、自主性に委ねる分、倫理観や社会的・道義的責任をフォトグラファー自身にもしっかり認識頂く必要があるという点。加えて、事前の信用性確認・審査プロセスも不可欠です。

これらを被写体となるランナー達に、形式的/強制的な同意取得ではなく、本心からの賛同と支持を得てゆくための情報発信が極めて重要になってきます。

また、フォトグラファー個々人のクリエイティブ性や創意工夫、活動量などを尊重し、それに見合った対価がフォトグラファーにしっかり配分されるべきです。※この点で、既存の多くのフォトストック系サービスなどは、プラットフォーム側への収益配分比率が不自然に大きいサービスばかり、と私は感じています。

さて彼ら写真家達はというと、ITJ を候補と定め、主催者側との交渉からスタートです。関連する利害関係者との調整、撮影スタジオの設計、気のいいランナー仲間達を集めての試写兼プロモーション用写真の撮影。加えて、公式サイトの立ち上げ(ドメイン取得、デザイン、実装…)、Athty フォト仕様を把握して操作フローや UX や UI の議論、更にマーケティングに対するあれこれアイデア出しに… まだまだあります。

考えられますか?写真家のお三方はクライアントワークなどの既存の仕事もあるなかそれと並行で(!)、未経験・未知のあれこれ全部を議論し、解決策を決め、私たちや主催者側とも議論し、実現のために奔走してこられたんです。

FINISHERS PORTRAITS チームは比較的早い段階で私たちとのタッグを正式に決めてくださり、私たちも「一緒にやりましょう!」と答えました。その後このタッグはうまく噛み合い、スピーディに無駄なく怒濤の準備を進め、そして 12月10日、ITJ という大舞台での実現が形になりました。

すべての完走したランナーに、思い出の写真を

あらめて感じているのですが、信念というのはすごい原動力です。私たちも並外れた馬力と実行力を持っている自負がありますが、藤巻さん、小関さん、永易さんのお三方も、実にパワフルでした。

ランナーが完走後、最高の思い出になる写真を手にできる ── 日本中を見渡しても存在しない、こんなに素晴らしい体験が生まれるとは。まだまだランニング界隈、発展途上です。ロンランとの出会いがきっかけとなってFINISHERS PORTRAITSが世に出たことを誇らしく思い、今回お三方の一助となれたことも光栄に思っています。

FINISHERS PORTRAITS、これからも多数のトレイルランニングレースへ参加・出店したいという意欲をお持ちです。今回の ITJ を皮切りに、日本中のトレイルランニング大会のフィニッシュ会場で待ってくれている存在になって欲しいなと思っています。ご興味のある主催者の方は FINISHERS PORTRAITS チームまでお気軽にご連絡ください(公式サイトに連絡窓口記載)。

ITJ 参加の皆さんへ。とにもかくにも制限時間内に完走してください!まずはそれからだ笑。そしてITJ フィニッシュ後はぜひ修禅寺総合会館内の特設スタジオにお越しいただき、最高の一枚を撮ってもらってください!友人知人、家族との写真ももちろん OK とのことです。でも混雑時はスムーズに入退室お願いします。

写真は下記 Athty フォト ITJ ページからご購入いただけます。事前に会員登録しておくと購入がスムーズです。

https://athty.com/photo-store/itj

最後に。FINISHERS PORTRAITS 実現に際しては、企画と思いに理解を示し、実現に協力くださった IZU Trail Journey 大会主催者の皆さまに心から御礼申し上げます。私たちの見えないところで、時にハードに時にソフトに調整してくださったようだなと感じております。さすが ITJ !またひとつランナーからのエンゲージメントが高まったなと。


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