ヌイグルミと同居している
もう「女の子」なんて呼ばれる年齢じゃないのだけれど、お恥ずかしながら、最近ヌイグルミと暮らしている。
事の発端は、「犬が飼いたい」という気持ちからだった。最近は一日中部屋の中にいて誰とも話さない日々が続いていたので、急にさみしくなってしまったみたい。何か、小さくて、私がいないと生きられないような、そんなものを手元に置いておきたいと思った。
もしかしたら、これが母性本能というものなのかもしれない。普通の女の人は、ここで子どもが欲しいという発想になるけれど、どうやら私は犬が欲しいという気持ちに行きついたみたいだ。それでもまだ、生きてる犬を飼う覚悟はないのだけれど。
最近はインターネットで「犬 飼ってる気持ちになる方法」とか、「犬 代わり」とか調べまくっていた。アイボいいな~と思ったけれど、メーカー希望価格を見て目玉が飛び出たため、候補から外した。
ここで、そういえば部屋にヌイグルミがあったことを思い出した。幼児向けアニメのキャラクターで、小さい子に混じって映画を観に行くほど好きだったので、思わず買ってしまったんだった。おそらく原寸大のそれは、私の部屋の隅に座っていた。
私は、そのヌイグルミと一緒に暮らすことにした。アニメではちゃんと名前も設定されているので、その通りに呼んでいる。朝起きると大体布団から落ちているので(ベッドじゃないので落ちても危なくない)、またこちらに抱き寄せて二度寝をする。
二度寝が終わったら椅子に座らせておいて、私は布団を畳んだり、ラジオ体操をしたり、コーヒーを淹れたりする。そして、それを膝の上に乗せながら、椅子に座ってコーヒーを飲む。
作業をしている時は、大体椅子に座らせている。たまに畳んだ布団の上で遊んでいる時もある。今日は暇そうだったので、椅子を窓のほうに向けてやったら、嬉しそうに外を眺めていた。
あと、今日は割と時間があったので、一緒に遊んだ。膝の上に乗せて持ちあげてみたり、耳のうしろをかいてあげたりした。
夜は必ず私の右側に寝かせる。私が右向きで寝ることが多いので。つい強く抱きしめてしまうけれど、特に文句を言われたことはない。でも、やっぱり途中から暑くなるみたいで、朝になると布団の外に出ている。
しばらくこんな生活が続いているけれど、このままいけば、私はそれのために頑張れるようになるかもしれないと思った。それが幸せに暮らすためならば、毎日いっしょうけんめい働けそうな気がしてる。
誰かと暮らすのがこんなに楽しいなんて。飯も食わず、文句も言わず、ただ私の気が向いた時にフワフワのおなかを差し出してくれる存在であれば、私は普通の人みたいに、自分以外のために生きられるのかもしれない。
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