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サマンサタバサの呪いにかかった話

みなさんは、昔の恋人との思い出が不意に頭をよぎってしまうことってありませんか?
街中ですれ違った人が、昔の恋人と同じ香りでふと隣で寝ていたことを思い出してしまったり。昔の恋人が好きだった音楽がラジオで流れて来て、あの頃が妙に懐かしくなってしまったり。
そういう風に、普段は心の奥底にしまってある昔の恋人との思い出が、何かのふとしたきっかけで脳内に解き放たれてしまうことを「呪い」と私は呼んでいます。

突然ですが、私が高校時代に付き合っていた恋人は、
1日のやりとりの最後に送るメールを必ず「お疲れサマンサタバサ」で締める人でした。

高校生当時の私はバンド一筋でブランドものに全く興味がなく、サマンサタバサという言葉を初めて聞いた時、本当に意味がわかりませんでした。
物事が複雑すぎるときはまず分解して考えるようにしているのですが、サマンサ と タバサ で区切っても何の意味があるのかさっぱりわからない。
私はわからないことをわからないままで済ましても平気な人間なので、しばらくの間は「まあいっか」という感じで放置していたのですが、

「明日の部活は何時まで〜?」「19時かな〜」「じゃあ、一緒に帰れるね!」
明日の帰り道デートを約束した最後に、
「それじゃあ、今日もお疲れサマンサタバサ!

「週末のお出かけどうする?」「博多で映画見ない?」「じゃあ、午前11時に駅に集合で!」
週末のお出かけの約束をとりつけた最後に、
「おやすみなさい!お疲れサマンサタバサ〜!

色々なやりとりのしめくくりに、あんまりにもしつこく毎日「お疲れサマンサタバーサ!」で終わるものだから、根負けして検索しました。
と言っても、そのときは「大人の女性が持つバッグなのね、フーン」くらいの軽い気持ちになるだけでした。

そこから虚しくも、その恋は終わってしまいました。
私は晴れて大学生になり、福岡の若者はみんな集まる天神CITYに頻繁に繰り出すわけですが、パルコでサマンサタバサの実店舗に初めて遭遇することになります。
「あー懐かしいな〜」そのときは、本当にサマンサタバサが存在したことに驚く反面、昔を思い出してクスッとなるだけでした。
そして2ヶ月後にパルコのサマンサタバサの前を通ります。「あー懐かしい、ウンウン」。その足で地下街をうろついているとサマンサモスモス(※調べたら系列どころか全く関係ないんですね、知らなかった)の前を通りました。「そんなこともあったなあ」。2ヶ月後、博多駅のアミュのサマンサタバサの前を通ると「彼、元気かな〜」・・・

えっ、常に思い出してない?しかも頻度高くない?

気づいた時にはすでに時遅し。
そう。すでに私の中で「サマンサすなわち元恋人」の種がまかれ、芽がでて、スクスクと育ってしまっていました。
サマンサ系列のお店の前を通るだけで高校の時の恋人を思い出してしまう体になってしまったのです。

多分呪いにかかってしまった要因は、彼が私のサマンサタバサ処女を奪っていってしまったからだとおもいます。
それに加え、呪いの発動回数があまりにも多すぎる。

香りとかであれば、この世に何百種類あって他の人がかぶる、かつそれを身につけてる人間とすれ違う。例え、多くても一年に一回の機会だと思います。

それに比べて、サマンサタバサの店舗は全国で何店舗あると思いますか。約300店舗です。単純計算でいくと、1都道府県あたり最低6店舗あります。
今は関東に住んでいるので、多分実際の数値より分布がおおきく、遭遇確率は高いことでしょう。
さらにサマンサと名のつくお店となると、多分もう数え切れないくらいです。
たいていのデパートには多分サマンサと名のつくお店はどこかの階には入っていると思います。
年一のペースどころでなく、下手すれば二週間に一回くらいのペースで出会って思い出すわけです。
記憶喪失にならない限り、未来永劫この呪いは続いてしまう。

これがもし、サマンサタバサではなく、マクドナルドだったら。
家に帰って最初のメールの文頭。「ただいマクドナルド!」
これはもう安易すぎて、その場で失笑して、「あーハイハイ、マクドナルドね」で終わっていたと思います。
マクドナルドは、小さい頃から知っているから。何も心に引っかかるものがないから。水のように多分記憶からすり抜けていきます。

どうして、サマンサタバサという絶妙なところをついてきたのよ、元恋人よ。
はかったな。(多分、何も考えてなかっただろうけど)

みなさんも、恋人からのよくわからない言葉、今で言うと例えば「お疲れもんどう」とかには要注意です。檸檬堂ってなんなの?えっ、美味しい何これ…初めての出会い…そして季節は巡り、彼と別れ、一人になり、晩酌がしたくなり、スーパーで時々遭遇する檸檬堂を見て思い出すわけです。「彼、元気かな…」
油断してたら、言葉の呪いにかけられて忘れられない体にされますよ。

それではみなさん。お疲れサマンサタバサ
また会いましょう。

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