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「ここが変だよテレビ局!」坪田信貴×土屋敏男 対談連載vol.3

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■「ユーザー」こそビジネスの全て

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土屋テレビって今のビジネスモデルをずっとやってきた。それを壊すことはものすごく怖いわけですよ。だけどそれを壊していかないと新規事業にならないし、そこのすり抜け方みたいなことを考えるのがこれからは大事ですよね。

坪田
本当にそう思います。

土屋
吉本はやっぱりNSCが大きいですよね。芸人っていうのは弟子入りして、師匠のカバン持って、袖から見て芸を盗んで育つっていう価値観が主流の時に大崎さんが学校を作った。学校で芸人なんかできるわけないだろって9割以上の人間が反対していた。でもそれをやったから、今の吉本がある。

坪田
自分たちの一番の強みを、内部にいるからこそわかっていないっていうことも多々あるんです。例えば吉本の事例でいうと、「沖縄ラフ&ピース専門学校」っていうのがあって、エンターテインメントコースは吉本だからたくさん生徒が来てるけど、それ以外のコースの生徒をどう集めるかというのが会議で話されていたんです。会議では「沖縄中の本屋さんに行って、受験コーナーにポスターを貼ってもらって応募者を集める」っていう結論になっていたんですね。

僕、それに結構衝撃を受けて。だって「なんばグランド花月」に年間100万人お客さんが来るんですよ。その人たちは吉本のファンなんですから、そこにアプローチをして沖縄のことを紹介してもらえばいい。吉本のどの会議に出てもIDや台帳の話が一回も出てきていなかったので、あるかどうか聞いたんですね。そしたら一応あって、90万人くらい登録されていた。でもたまにメールが送られるメーリングリストとしてしか使われてなかったんです。そこで「吉本のDXはこれが全てですから、これをとにかく大きくしましょう」と言ったんです。3年経って、今は最大600万IDにまでなりました。

土屋
IDを持つのは大きいですよね。

坪田
テレビ業界に関わる前は、正直「Hulu」とか「フジテレビオンデマンド」とかプラットフォームを分けてIDをそれぞれとっているのが意味がわからないと思っていました。だってAmazonなら、出版社は横並びで全部を扱っていて、それがプラットフォームの本来の良さですよね。

そこにNetflixが出てきて、テレビ局は「TVer」をやり始めた。これは言葉を選ぶようでちょっと選ばず言うんですけど(笑)、正直「TVer」を初めて見た時に「絶対これ電通が作ったでしょ!」って思ったんですよ。ログインしたら一番最初に出てくるのが広告なんです。アプリを立ち上げた瞬間に、いきなり押し売りされるんですよ。これで広告費を稼いで各局さんに分担しましょうということだと思うんですけど、ユーザーは番組が見たいのに、いきなり広告が出てくる。これはITプロダクトとしてはありえない。ユーザーではない側に向いてる人が作っているから、こうなるんですよね。

本来は視聴者がめっちゃおもろいって思うコンテンツを作ることに長けている人達なんだから、どうしてそこでユーザー利便性を低くするんだろうって。視聴者が見たいものに課金をしてもらって、それを分配すれば、プラットフォームを分けなくてもコンテンツを作っているところにお金が回るはずなんですよね。さらに言うと、プラットフォームが集約されればIDも集約されて、それが共有されるわけです。テレビの力を考えれば1億2000万のIDがとれるんですよ。1億2000万取れたら、たぶんそれだけで年商プラス1000億いけますよ。


■テレビに残された影響力

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坪田テレビの強さっていうは、端末とコンテンツ力。昔はブームを作っていたのがテレビじゃないですか。でも今はどちらかというと、ブームを追いかけてる。

あるディレクターさんに聞いたのは、昔は企画会議だと、まだ誰も知らないけどここがおいしいとか、この人が面白いっていうのを見つけて特集しようという感じで番組が作られていた。でも今の企画会議では、それって何か実績あるのとか、他のテレビでどれくらいの視聴率があったのかとか、YouTubeで登録者数何万人とか、すでに話題になっているものを根拠として求められる。だから、テレビは昔はコンテンツクリエイターだったけど、今はコンテンツフォロワーになっちゃってるんじゃないか、拡散機能になっちゃってるんじゃないかと。でもその拡散機能っていうのはすごくて、僕自身も『ビリギャル』で『情熱大陸』に出させていただいた時に、坪田塾への問い合わせが1カ月で5000件あったんです。あまりにも電話がずーっと鳴り続けて他の業務ができなくなるから、電話線を抜きました(笑)

土屋
テレビの影響力だよね。

坪田

ほんとにすごい。ネットで話題になった時って、1日で60万アクセスが来ても、問い合わせは1件だった。でも東海テレビのニュースで15分くらいの特集された時は120件来た。ネットは消費する文化で、読んで面白かったらシェアして終わりっていう感じだけど、テレビは購買とか問い合わせっていう現実の行動につながるんだっていうのを実感したんですよね。テレビがビジネスに与える影響は本当に大きい。

土屋
だからこれがまだ残ってるうちに勝負に出れるかどうか、今って結構ギリギリのタイミングだと思うんですよね。

坪田
僕がテレビを使ったビジネスを考えるとしたら、スタートアップに出資して、そのスタートアップをコンテンツにするということをやると思います。単なる宣伝じゃなくて、ちゃんと視聴者が面白いと思うコンテンツにする。

土屋
テレビ局側のフィールドに持ち込んで面白くするっていうことですね。

坪田                                テレビにはそういう能力があるじゃないですか。テレビ局っていうのは公のものだから、自分の利益のために宣伝することはできないと言うかもしれないんですけど。

土屋
クリアすべき点は沢山あるだろうけど、テレビの持つ強みを活かす方法を模索すべきだということですよね。

坪田
例えば映画も、テレビ局は製作委員会に出資して、自局で宣伝していたりするじゃないですか。テレビの拡散機能を使うって本当に効果的だと思いますよ。

土屋
先日名古屋の中京テレビから、新規事業をやりたいけど若手社員から企画が出てこないから何かしゃべりに来てくれって言われて。でも、それもう番組企画でやったらいいじゃんっていう話をしたんですよね。例えば、中京テレビは新規事業で15億使います。名古屋のケーキ屋さんに出資したり、一方で新興国のベンチャーに出資したり、15億がだんだん減っていって果たしてこれがどうなるか?みたいな番組にすればいいんですよ。こっちのフィールドの中に取り込んだ方がやり方が見えると思うんですよね。



■「ホウレンソウ」は会社を滅ぼす

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土屋最近三木谷さん(注・楽天グループ創業者・三木谷 浩史さん)が、「日本もブレーキの壊れた人間を賞賛する文化を育てるべきだ」みたいなことを言っていたんです。ジェフ・ベゾス(注・Amazon創業者)にしても三木谷さんにしても、創業時って間違いなくブレーキが壊れてるんですよね。周りを巻き込むエネルギーがあった。はたして日本テレビの中に、そのエネルギーはあるのか。ないんだとしたら、エネルギーがある人を見つけないと新しいことはできない。

事業をピボットしていくってことでいうと、番組もまさにそうなんですよね。『電波少年』も、例えば最初は「アポなし突撃」、次に「ヒッチハイク」、その次に「なすびの懸賞」って変わっていった。特に日本テレビの番組は、お客さんの動向を見てどんどん内容を変えていくものが多いんですよ。そういうのが得意なのに、事業に当てはめると、突然みんなスーツ着始めてビジネススクール行って、みたいになる(笑) 

坪田
そうなんですよね。例えば事業計画を募集して、100人の経営者に300万ずつ渡します。300万で100人だから3億円じゃないですか。そのうち1個が上場するレベルになれば余裕で回収できるから、そういうビジネスをやるべきなんじゃないかと思います。

土屋
1勝99敗スタイルだね(笑)

坪田
そうですね(笑) でもそれでいいんです。上場したら3億円入れたものが10億になる。今度吉本はBS放送をやるんですが、平日はCMを一切入れず「1番組1起業(プロジェクト)」しようと。「47都道府県住みます芸人」を使った地域活性化みたいなものとか、事業化してそのうち1個でも当たればいいよねっていうビジネスモデルでやるんです。

土屋
「47都道府県住みます芸人」ってもう10年くらい経っているけど、色々やってうまくいかなかったのもたくさんある。でもそれを続けてきたから、BSにチャレンジする時にはこの人たちが使える。やり続けていたということがすごいと思うし、さらにバージョンアップして1勝99敗を目指すのがすごい。それがテレビ局っていうのはなかなかできないんです。

坪田
やっぱり常勝軍団だからでしょうね。特に日テレさんなんて、そこでもナンバーワンですから。

土屋
昔は、番組を作った後に何のチェックもなく放送ができたんですよ。だから商品棚にいきなりボンって乗せることができた。でも今だったら、企画書の段階でチェック、下見でチェック、各セクションでチェックしたらどこかでたぶん引っかかって、『電波少年』なんて商品棚には並ばなかった。商品棚に並んだからいろんな問題が確かに起きたけども、そこにイノベーションも起きた。でも今は、どこかでみんな報告しちゃう。「ホウレンソウ」しちゃうんですよ。「ホウレンソウは会社を滅ぼす」って最近言ってるんですけど、これ言うとだいたい真ん中から上の立場の人がみんな嫌な顔をするんですよね(笑)

坪田
あはは(笑) でも僕も近いことを言ってます。社会人の基本はホウレンソウだっていうけど、ホウレンソウって言う上司ほど嫌われてる。本当に尊敬していたり信頼している上司なら、ホウレンソウなんて言わなくても相談に行くんですよ。

たとえば、幼稚園くらいの子供って何でもうるさいくらい報告してくるんだけど、思春期くらいになると「今日学校どうだった?」「別に」ってなる。これは思春期だからってみんな言うんですけど、違うんです。

土屋
ほぉぉ。

坪田
小さい子供たちは、言ったことに対して親が何でも「よかったね!」とか肯定的な反応をしてくれるから、会話を楽しむんですよね。だけどこれが小学生になると、子供が楽しかったことを話した返しで、親がダメ出しを始める。「なんでテストの勉強しなかったの」みたいなね。報告は報告で聞いて別件で言えばいいのに、報告の段階でダメ出しをするから、だんだん「言わないほうがいい」っていう戦略が正しくなってくるんですよ。

僕がいつも思うのは、ホウレンソウは大事なんです。大事なんだけど、部下から自然とホウレンソウされるような上司になりなさいよって言うべきなんじゃないのかなって思います。

土屋
ホウレンソウって言う上司に限って「それ聞いてない」っていうからね。聞いてないっていうやつは即座に減俸すべきだと思う(笑) それはあなたが言われるだけの力を持ってないからということなんですよね。

坪田
あはは(笑)

土屋
お前を信頼して権限を渡すからあとはもう報告しなくていい、お前に任せるという人間を選んで、そいつにイノベーションを起こさせる方がいい。上の人が介入するとものすごく生産性が下がってスピードが落ちる、そのデメリットを上の人は実感できていないんです。1勝9敗の文化とか、ブレーキの付いてない人を評価するとか、そういうことをおさえないで新規事業をいくらやっても多分ダメだからね。

坪田
全く同意見です。でも僕は本当にテレビが好きだし、可能性はすごくあると思うので本当に頑張って欲しいです。

土屋
その期待に応えたいです。いまがラストチャンスですね。今日は本当にありがとうございました!

坪田
こちらこそありがとうございました!



この対談のこれまでの記事はこちら↓↓↓


坪田 信貴(つぼた のぶたか)
累計120万部突破の書籍『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(通称『ビリギャル』)の著者。これまでに1300人以上の子どもたちを個別指導し、心理学を駆使した学習法により、多くの生徒の偏差値を短期間で急激に上げることで定評がある。大企業の人材育成コンサルタント等もつとめ、起業家・経営者としての顔も持つ。テレビ・ラジオ等でも活躍中。新著に『人に迷惑をかけるなと言ってはいけない 子どもの認知を歪ませる親の言葉と28の言い換え例』。


土屋 敏男(つちや としお)
日本テレビ放送網株式会社 社長室R&Dラボ シニアクリエイター。『電波少年』『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』等の制作に携わり、長年テレビの制作現場で活躍。一般社団法人1964TOKYO VR代表理事。2019年ライブイベント『NO BORDER』企画演出。映画『We Love Television?』監督。2021年『電波少年W』企画演出。

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