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「ここが変だよテレビ局!」坪田信貴×土屋敏男 対談連載vol.2

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■「最短・最速・70%」でスタートする

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坪田某大手電機メーカーで、前例のない新しい企画を若手社員から募集するというのがあったんです。よくありますよね、新規事業募集。そこで若手社員が、センサーがついた自動掃除機の試作品を作って出そうとした。ところがこれは取締役会でNGが出たんです。その理由が「もし2階を掃除している時にセンサーが作動せず落ちて、そこにいた子供がケガをしたら誰が責任を取るんだ」っていう。そしたらその数年後に「ルンバ」が世界中で大ヒットしたから、そこから追従してもう一回作ることになって(笑) いわゆる大企業病ですよね。

土屋
イノベーションを起こしたいっていうのは日本中の企業がみんな思ってるけど、いわゆる「ピラミッド型の決定ライン」の中で必ずリスクのことを言う人が出てくる。

坪田
必ずどこかの網の目に引っ掛かります。でもそれって正論だからこそどうしようもない。アメリカのスタートアップでは「スケーリング」という考え方があって、数十億ドル(数千億円)のビジネスになるものかどうかで考える。この時に一番重要な考え方が「最短・最速・70%でスタートする」だと思うんです。

土屋
どういうことですか?

坪田
完璧なものを作るんじゃなくて、とりあえず最短と最速で試作品を作って市場に出せと。当然欠陥もあるけれど、それは結果が出たところで変えていく。これがいわばIT系の考え方なんです。アップデートをどんどんしていくっていうことですよね。でも、日本はどちらかというとゼロリスクを求めるんですよ。

土屋
マニュアルが山ほどあったりね。

坪田
そうなんですよね。でもどれだけマニュアルを厚くしても100%リスクをゼロにできるわけではないから、結局どこかで止まってしまうと思うんです。

土屋
僕は『電波少年』という番組をやっていて、テレビにおけるイノベーションを起こした番組みたいな言い方をされることがあるんですけど、例えば若い連中とかと話すとよく言われるんです。「いいですね土屋さん、あの頃はコンプライアンスがゆるくて」って。そうじゃないんですよ。あの頃もコンプライアンスはちゃんとあったんです。でもね、僕は聞かなかった。

坪田
あはは(笑)

土屋
1992年にね、「首相官邸にアポなしで行っていいですか」ってプロデューサーに聞いたんですよ。そしたらプロデューサーは「お前がそう言うなら行け」って言ってくれたんです。それでそのプロデューサーはCP(チーフプロデューサー)に、「自分が責任を取るから土屋を行かせてやりたい」って言って、CPも「お前が言うなら」ってなるんですよ。でもCPも聞いちゃったから、局次長に言うんですね。それで局次長も「よしわかった」ってなって、次に局長に言うわけですよ。そしたらそれを聞いた局長は「ん〜報道がなんて言うかな。やめといたほうがいいだろ」 って言って止まる(笑)

坪田
いやー同じですね、ほんとに。

土屋
全員が善意なんですよ。プロデューサーたちも理解してくれたけど、最終的にはやっぱりダメだという話になった。

坪田
まぁリスクをトータルで考えたらNGに決まってますから、その局長さんも間違っていないっていうのが難しいところなんですよね。

土屋
だから僕は、もう上に言うのをやめた(笑) そのかわり、やった時にどれだけのリスクがあって、自分が負えるか負えないか、逃げ方・消し方はどうするかみたいなことを考えるようになった。でもその時にこっそり応援してくれる人もいて、報道の人が当時の首相のスケジュールを裏で教えてくれたりとかしてね(笑)


■「丁寧な作業」からイノベーションは生まれない

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土屋僕は今「電波少年W」っていう番組でテレビのいろんな歴史を扱ってるんだけど、テレビの歴史って「こんなものテレビじゃない」って言われたものが次の時代のテレビなんですよね。「欽ちゃん」「ドリフ」「北の国から」「ひょうきん族」みんなそう言われてきたんです。

「丁寧な作業をしましょう」っていう言葉を、日テレではよく聞くんですよ。でもそれって実は、イノベーションとものすごく対立する言葉ですよね。この会社もイノベーションを起こさないと勝てないとは思ってるんだけど、「ピラミッド型の決定ライン」とか「丁寧な作業」という文化になってしまっている。それって「変化が起きないようにしている」ということに気が付くべきだと思います。

坪田
いや、おっしゃる通りだと思います。僕ね、大崎さん(注:吉本興業ホールディングス代表取締役会長・大崎 洋さん)から、吉本のDXをやってほしいと言われたんです。その時に2つ条件を出しました。1つは、予算を確定すること。基本的に利回りの考え方をしてほしいから、元本が少なければ少ないほどそのインパクトは少なくなります。100万円だったらどんなに頑張っても1000万だけど、10億円なら1000億になる。それを踏まえて、このDXにどれだけのものをかけるのか、その覚悟を予算で見せてほしいと言いました。そしたら、吉本としてはかなり大きい金額を提示してくれて、本気だなと。

土屋
なるほどなるほど。

坪田
もう1つ、決裁権も全て僕にくださいと言ったんです。新規事業やりましょうっていう時に、「500万でこれをやろうと思っています」みたいなことを、上にいるよくわかっていない偉い人に対してプレゼン資料を作って説明する労力たるや。数学でいうと足し算・引き算のような基本的なところから、しかもそれをバカにしてない感じで説明しないといけないというこの労力たるや、もう地獄なわけです(笑)

土屋
その人件費で500万とかだったりするから(笑)

坪田
しかも問題は、事業を100個やるうち、成功する数ってうまくいっても10個じゃないですか。その中から爆発的に成長するものが出てくる。これが最初に200万の事業がうまくいかない、300万も、500万もうまくいかないってなると、4つ目くらいの段階で「お前のこと信用できるの?」ってなってきますよね。でも本当は「最短・最速・70%」をバンバン出してどれか1個でも成功させないといけないんだから、そこは僕に決裁権をくれないとスピード感を持ってやれないですと言いました。それで決裁権をもらって最初にやったのが「カジサック」だったんです。

土屋
そうなんですね。

坪田
梶原さん(注:キングコング・梶原雄太さん)がYouTubeをやりたいと言っていた時、UUUMに所属しようかなとおっしゃっていたんです。そこで僕は誰にも許可を取らずに、「吉本が全精力を上げて、予算も含めて完全にバックアップするから一緒にやろう」と口説いてやってみたら大成功した。最終的には鎌田さん(注・UUUM株式会社 鎌田和樹さん)からも、何か一緒にやりましょうよと向こうから声をかけてもらって。

土屋
それってすごいヒントがあると思う。吉本って、売れるタレント売れないタレントがいるのは当たり前。売れるのは、NSCに入ってくる1000人の中に1人いたら儲けものっていう感じだもんね。テレビ局はさっき言ったように、地上波テレビっていう完璧なビジネスモデルしかやったことがないから、失敗に慣れてない。全部成功するものだと思ってる。そこの考え方をまず変えないといけないんだよね。新規事業をやる時、一体何勝何敗するつもりなんですかっていう。

坪田
1勝9敗で良い方ですよね。

土屋
そうなんですよ。そのかわり、9敗の損失を1勝が全部カバーするという考え方。そのためにはまず自社の中で、うちでいうと日本テレビの中で覚悟すること。それから、全部上にあげないでなるべく下のラインで采配をしていくっていうことだと思うんです。

坪田
本当にその通りです。これ、上の人が悪いんじゃないんです。機能が違うというだけの話。責任を取らないといけない部門なんだから、何か判断するってなったらリスクを回避するのは当然なんですよね。「カジサック」が成功しましたけど、僕は他のプロジェクトでは2000万くらい損失も出しているんです。でもトータルで見ると数十億はプラス。

土屋
それって実はかなりラッキーなことでもあって、普通は9連敗して、10戦目で初めて1勝するくらいの感じだぞ、と。それをどこかでやっぱり全部勝とうとする。うちはテレビが強い立場になってから入社しきている人間ばかりだしね。

坪田
いわゆる成功しているスタートアップは、「ピボット」っていって、一度やり始めた事業の業態を変えて成功してるところがほとんどなんですよ。例えばYouTubeって最初は動画の出会い系サービスだったんですよね。自己紹介動画を投稿して、知らない人と出会うというような。でもそのうちに猫の面白動画みたいなものを投稿する人が増えたから、思いっきりピボットして、みんなが自己表現ができるプラットフォームに変えた。

あとは仮想通貨のコインチェック。「STORYS.JP」っていうネットで自分の人生を語るというサイトからスタートしていて、このサービス自体は全然儲からなかったんですよ。それで思いっきり仮想通貨の事業に転換したんですよね。

土屋
そうなんですよね。例えば電子商店街みたいなものも、アメリカでも最初にIBMがものすごいお金かけてやったんだけどうまくいかなかくて、その後にAmazonが、石にかじりついてでもやった。

坪田
本当にそうで、実はネットサービスの今のトップ企業、いわゆる「GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazonの略称)」と呼ばれるようなところって、10年前とか20年前は全然違った。5年後10年後にも当然それは起こり得る。今はGoogleに勝てるなんて誰も思わないけど、10年後はきっと違う形になっていると思います。そういう時代ですよね。


⇒ vol.3へ続く!


坪田 信貴(つぼた のぶたか)
累計120万部突破の書籍『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(通称『ビリギャル』)の著者。これまでに1300人以上の子どもたちを個別指導し、心理学を駆使した学習法により、多くの生徒の偏差値を短期間で急激に上げることで定評がある。大企業の人材育成コンサルタント等もつとめ、起業家・経営者としての顔も持つ。テレビ・ラジオ等でも活躍中。新著に『人に迷惑をかけるなと言ってはいけない 子どもの認知を歪ませる親の言葉と28の言い換え例』。


土屋 敏男(つちや としお)
日本テレビ放送網株式会社 社長室R&Dラボ シニアクリエイター。『電波少年』『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』等の制作に携わり、長年テレビの制作現場で活躍。一般社団法人1964TOKYO VR代表理事。2019年ライブイベント『NO BORDER』企画演出。映画『We Love Television?』監督。2021年『電波少年W』企画演出。


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