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North Star Metricの作り方(第1回) - 顧客視点のプロダクト指標 NSMとは

こんにちは、NTTレゾナントテクノロジー アジャイルデザイン部の上田です。私たちはプロダクトの施策効果を測るために「North Star Metric(NSM)」という指標を用いて計測を行っています。前回ブログで紹介した Mobius Outcome Delivery フレームワークのプラクティスとしても活用し、チームが指標を作成・管理するフレームワークとして、施策の決定や意思決定の軸にしています。そこで今回から私たちが実践しているNorth Star Metricの作り方について全4回に分けて紹介します。

<参考> Amplitude - North Star Playbook :  https://amplitude.com/north-star


North Star Metric(NSM) の作り方

<第1回>←今回はこちら
はじめに - North Star Metricとは
<第2回:実践編 前編>
1. プロダクトの仮説を定義する
2. プロダクトのタイプを特定する
3. NSMを定義する
<第3回:実践編  中編>
4. NSMを構成するKPIを決める
5. KPIに紐づく施策を決める
<第4回:実践編 後編>
6. 施策を実施しNSMを検証する
7. NSMを見つけるチェックポイント


はじめに - North Star Metricとは

North Star Metric(以下NSM)は、プロダクトがもたらす価値がユーザーに届いているかを測る単一の指標です。プロダクトがもたらす顧客価値やビジョンを反映しており、プロダクトが生み出すビジネスインパクトを数値化し、実際に顧客価値に向き合うチームが計測できるようにします。

NSMはビジネスやプロダクトだけでなく、チームの行動指針となる要素を反映しています。プロダクトやビジネスの成長を測るフレームワークとしても広く取り入れられ、Amazon、Netflix、Facebook、Airbnb 等の国内外のスタートアップのプロダクトが採用しています。グロースハックの提唱者で投資家のSean Ellisも下記のように述べているとおり、チームで取り組みの最適化をすることで成長を促進させます。

The North Star Metric is the single metric that best captures the core value that your product delivers to customers. Optimizing your efforts to grow this metric is key to driving sustainable growth across your full customer base.
- North Star Metricは、プロダクトが顧客に提供するコアバリューを最もよく捉えた単一の指標です。この指標を高めるための取り組みを最適化することが、すべての顧客層の数を持続的に成長させるための鍵となります。

出典元「Growth Hackers - What is a North Star Metric? by Sean Ellis
https://blog.growthhackers.com/what-is-a-north-star-metric-b31a8512923f


NSMは、顧客が成果や価値を享受した対価として課金し、結果売上に貢献し、ビジネスの成長に繋がるという考えに基づきます。プロダクトやビジネスの成長という測りづらい目標に対して、顧客のプロダクト体験価値に着目し、顧客がプロダクトに価値を感じ使い続けてくれたかどうか、価値提供を数値化して、目標への進捗を定量的に計測できるようにします。


KGIとKPIとの違い

目標の進捗を測る指標には、KGI(Key Goal Indicator : 重要目標達成指標)やKPI(Key Performance Indicator: 重要業績評価指標)を用いた計測が多いですが、NSMはそれらとはどのように違うのでしょうか。

KGIは、ビジネスの最終目標の進捗を測る指標として用いられ、KPIはKGI達成のために要素分解したものをツリーで構成し、KPIに紐づく施策の効果を評価します。通常ビジネスインパクトを収益等の財務的視点で考えるため、KGIは売上であることが多いです。したがって、KGI=売上の最大化するようKPIを構成していきます。

KGI=売上を分解すると、デジタルプロダクトなどでは、PU(課金ユーザー数)✕  ARPPU(平均購入単価)といったKPIを演算して出すことができます。下部のKPIも分解でき、PU=xAU(アクティブユーザー)✕  PUR(課金率)などの計算式で組み立てることができます。売上の最大化のため、上下のKPIをみながら、数値を上げる施策を考えていくことが多いと思います。

しかしながら、この方法だと売上の最大化のための指標設計となり、プロダクトの成し遂げたいビジョンや、継続利用につながる顧客価値を生み出すいった、先行指標の観点が反映されることはありません。また、顧客の定着や体験価値向上を目指しプロダクトの改善がなされたとしても、体験価値向上とKGI=売上の関係性が定義しきれていないため、チームの活動が事業成果に影響しているか、正しく計測しえない、追いきれない課題があります。


NSMは先行指標として、アクションを導く根拠となる

NSMは、KGIとKPIの橋渡し=中間指標となり、下部のKPIと施策を束ねます。NSMはKGIの先行指標=次の改善のアクションに繋がる指標として、ビジネスインパクトを作り出していきます。KGI-NSM-KPI-施策を一連のストーリーとして考えることで、プロダクトチームがビジネスインパクトやビジネスの成功までを測れるようになります。

先行指標とは、未来の行動や意思決定に繋がる指標(Actionable Metrics)であり、期待する変化を促す指標です。設定したNSMが、計測するにとどまり改善につながらない虚栄の指標(Vanity Metrics)になってないか、チームの活動に本質的に影響を及えるものかなどを、チェックしながら見極めていきましょう。


以上「North Star Metricの作り方」第1回として、NSMの概要を紹介しました。次回は具体的に私たちが実践するNSMの作り方についてお伝えします。

<参考文献>


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