ウクライナ・ロシア戦争について

2022年2月に始まったウクライナ・ロシア戦争の終局について、この戦争が長期化すると世の識者、評論家諸氏は言っている。

では、果たしてウクライナが勝利すると考える人はどれくらいいるだろうか?

無論、究極の犠牲を伴う抗戦、抵抗を続けるウクライナ国民に敬意を表する。
私は、現状でウクライナが軍事的にロシアを圧倒する勝利というのはあり得ないと考えている。

あくまでも武力・軍事力による一方的な現状変更を行うロシアの特別軍事作戦と称した「侵略・戦争行為」を許容しないし肯定しない。
日々ニュースショーで取り上げられる戦況分析を行う軍事、ロシア・東欧情勢の専門家・コメンテーター諸氏はこの戦争の終局について明確に述べる人はあまり見かけず、言及したとしてもこの戦争は長くなるというだけだ。

勿論、世界情勢の不確実性は否めない。
しかし、米国の軍事戦略専門家である、ジョン・J・ミアシャイマー氏の著作、奥山 真司氏訳の「大国政治の悲劇」(五月書房新社https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784772706001)という書籍を引用するまでもなく、戦争がグランドパワー=陸軍による相手国の圧倒、制圧を以てしか勝利、終結し得ないように、ウクライナ軍がロシアとの国境を越え、ロシアの首都モスクワを軍事的に制圧するようなことはあり得ない。

また、現状でロシアに占領されたとされる国土の20%、ウクライナ東部と南部地域、そしてクリミア半島の全てをウクライナが単独の力で回復し、2014年以前に戻ることは果たして可能だろうか?

私は、具体的な”いつ"という時点は別として、ウクライナ・ロシア戦争の3年目以降、ウクライナ東部に非武装地帯を設けた停戦ライン、さながら朝鮮半島の38度線を決めた休戦協定を模したような「線」によって停戦に至るのが現実的と考えている。

勿論、それにはウクライナを自己の領土であると主張するプーチン・ロシアが現状での妥協的な停戦交渉のテーブルにつくという前提が必要であり、漏れ聞こえてくる自国が勝利しつつあると考えるプーチン・ロシアの姿勢が変化することはあり得るのか、停戦交渉のテーブルにつくか否かの見通しは厳しいと思う。

それは終戦ではなく、飽くまでも一時的な戦闘行為の停止であり、協定上はウクライナ、ロシア双方の支配領域が固定される。ウクライナ国民が果たしてそれを受け入れるか、現政権の行く末にも関わる問題ではある。

そして、それは短期、中期的にヨーロッパにおいて紛争の再燃を思わせる不安定要素となり、バルト3国、フィンランド、スウェーデン、ポーランドといった国々との間で緊張が高まると予想される。

また、今後ロシア同様の軍事力による現状変更の意図をもつ勢力に一定の「確信」を与えると思う。

私は、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナを元からロシアの一部と考えていることから停戦から数年後のウクライナ・ロシア戦争の再燃があり得ると思う。


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