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択捉島の無線妨害小隊で死亡事故

 択捉島の第46機関銃・砲兵連隊に、無線妨害小隊が存在しているエビデンスを見付けました。
 きっかけは、タイトル画像の12月1日の気象です。

 2021年12月3日の「サハリン・インフォ」と言うローカルメディアです。
(引用:https://sakhalin.info/kurilsk/214748)

По факту гибели солдата на Курилах завели дело о халатности
21:39 3 декабря 2021
クリル諸島での兵士の死亡について職務怠慢事件と決まった
Новости Курильских островов, Происшествия, Курильск


Военным следственным отделом СК РФ по гарнизону Горячие Ключи по факту гибели военнослужащего войсковой части 71436, младшего сержанта, возбуждено уголовное дело по признакам преступления, предусмотренного частью 2 статьи 293 УК РФ (халатность, повлекшая по неосторожности смерть человека).
ロシア連邦捜査委員会ゴリャチエ・クリュチ(投稿者注:択捉島瀬石温泉。第49機関銃・砲兵連隊が所在)駐屯地担当軍捜査局により、71436部隊(投稿者注※)の軍人である伍長の死亡の事実について、連邦刑法293条2項(過失致死を招く職務怠慢)の定める刑事事件として告発された。
 
Предварительно установлено, что с 26 ноября по 2 декабря 2021 года личный состав экипажа взвода радиопомех, включая младшего сержанта Ю., заступил на дежурство на острове Итуруп — участок "высота 410 м", расположенный вне населенного пункта, с размещением дежурной смены в жилом модуле контейнерного типа.
2021年12月2日、Yu伍長を含む無線妨害小隊の乗組員の兵士達は、択捉島内の住宅地の外にある「410m高地」のコンテナハウス型で当直に就いていた事が、これまでに明らかになった。
 
1 декабря на острове начался тайфун, скорость ветра достигала 39 м/сек. Около 20 часов в результате сильного порыва ветра жилой модуль перевернуло и переломило, в результате чего обломками конструкции придавило Ю., который от полученных травм скончался на месте.
12月1日、嵐が始まり風速39m/秒に達した。20時頃突風で住居型モジュールは転倒し破損、この破片によってYuは押し潰されて即死した。
(投稿者注:以下の内容は、現在捜査が継続中というものなので略)
В настоящее время устанавливаются все обстоятельства произошедшего, проводится комплекс следственных действий, назначена судебно-медицинская экспертиза.
Расследование уголовного дела продолжается, сообщает ИА Сах.ком со ссылкой на главное военное следственное управление СК РФ.

ИА Сах.ком

※71435部隊と言うのは、志願兵の募集のために部隊の紹介をしている民間のウェブサイト(https://armius.ru/suhoputnie-voyska/raketnie-i-artilleriya/vch71435)によれば46機関銃・砲兵連隊の事らしいです。

 無線妨害小隊が連隊にあるらしいので、再度連隊の編制を調べたら(当然、wikipediaのロシア語版様なのですが)、以前投稿していた、まとめ(3.3)の訳に漏れがありました。すいませんでした。
 修正して、連隊の編制に電子戦中隊と指揮(通信)中隊を加え、再度アップしました。
 記事の無線妨害小隊は、電子戦中隊に所属しているのでしょう。


 それにしても、無線妨害小隊が郊外の高台で当直勤務して、何をしているのでしょうか?
 まあ普通に考えて、妨害が必要な時に備えて、敵の周波数の検知とか内容の傍受とか、つまり無線の偵察なんでしょうね。?

 一方で嵐が来ても撤収しないという事は、この当直勤務は、年中無休でやっているか、あるいはこの時期に必要だったかのどちらかです。

  このヒントは、別のローカルメディア「サハリン・メディア」にあるようです。(https://sakhalinmedia.ru/news/1202434/?from=40  На Итурупе из-за ветра погиб военнослужащий
Сильный порыв ветра подбросил вагончик с военными на Курилах)では、コンテナハウスがトレーラーハウスと報じられています。本記事にも「乗組員の兵士」とあるので、恐らく、軍用トラックに積載されたシェルターが強風に煽られたのだろうと思います。
 
 恒久的な施設での勤務ではなく、一時的に展開した施設での勤務であれば、「施設の固定不備」と言う事故の原因も理解し易くなります。

 では、この時期に必要だった理由は何でしょうか?

 色々調べてみると、ちょうどこの時期、北海道道東の矢臼別演習場(択捉島まで300km)で大砲の射撃を始めています。(http://town.shibecha.hokkaido.jp/gyousei/bousai_chuui/chuui/jieitaiensyuu.html)
 また、5日から、ここで日米共同訓練も始まっているので、データを集めるチャンス(衛星通信だとダメですが、HFやVHFだったらいけるかな?)だったようです。

  この辺が、この事件のバックグラウンドなのかもしれません。

 今回は、隣国の動向に応じて46連隊はちゃんと仕事してるよ、けどコンテナ固定するの忘れて大変だったよ、と言う内容でした。

  軍上層部は国際情勢に対応した高度な運用を求めているが、現場の兵隊達の現実と乖離していると言うロシア軍の悩みが表面化した一端だと思います。
 
 ロシア軍は強いが弱い。
 用法・用量を守って、正しく恐れましょう。
 

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