農業で生計を立てる方法?
2020年末に勤めていた会社に辞表を出して農家を継ぐと決めたとき、父の経営を丸々なぞれば生活が成り立つだろうと、そんな風に思っていた。
父の農業売上を参考に、ぼくが生活するにあたっての必要最低限の収入は問題なさそうだと試算していた。
だからぼくも父と同じことが出来れば自分にも同じくらいの収益が見込める道理だと考えたのだ。
ところが、この考えには問題があった。
本題に入る前に、農家の経営計画は農地面積や土地柄、年齢、地域の農家人口など、実に様々な要因によって決定されるため、まったく同じ条件を持つ農家は存在しないといえる。
ゆえに、これはあくまでぼくの実家の場合の話だと断っておきたい。
さて、問題とは何か。
野菜が売れない?
生産技術について触れるつもりは無いのでここでは書かないが、父に支えられながら野菜が作れるようになると、次のステップについて考えるようになる。
自分で作った野菜をどこで売ればよいか。
考えられる選択肢はいくつかあった。
市場、農協
農産物直売所
加工業者、卸売業者
それぞれ見てみよう。
市場、農協
市場や農協出荷は、単価が安いとかいくつかの理由で不採用とした。
農産物直売所
そこで、ぼくでも出荷可能な近隣の農産物直売所を探すうちに、気付いたことがあった。
「ぼくでも出荷可能な農産物直売所」とは、同時に、売り場を求めている近隣の農家もこぞって出荷に来るという事だ。
すなわち店頭には地域の旬の野菜がうず高く陳列されることになる。
所狭しと積み上げられた棚に、ぼくが作った野菜を置いたところで、
果たして誰かに買ってもらえるだろうか。
ぼくのイメージでは、新参者の作った野菜を優先して手に取ってもらう理由が見当たらなかった。
格安で陳列すれば売れるかもしれないが、価格破壊は同業者に迷惑をかけるし、第一自分の利益を削ることになる。
農産物直売所に出荷するのは難しいだろうか。
加工業者、卸売業者
いくつかの加工業者・卸売業者さんと話をしてみたが、どこも一度の出荷に必要な量がぼくの生産可能な量を大幅に上回るということがわかった。
父と一緒に畑仕事をしている都合上、父の耕作面積を削るわけにもいかないし、かといって農地を拡大するにしても簡単なことではない。
相応の準備がいるのだ。
こうして、自分なりに野菜を販売する方法を考えなければならなくなった。
マルシェというスタイル
就農して半年ほどしたとき、近隣の自治体が月に数回、朝市なる販売会を行っているという話を耳にした。
農産物のほか、生花や焼き団子、お弁当などが売られるらしい。
野菜の売り先について悩んでいたぼくはすぐに出店を申し出た。
来客者はほとんど高齢の女性で、気さくに話をしながらぼくが作った野菜を買ってくれた。
初出店ながら、ありがたいことにそこそこの売上を得ることが出来た。
ついに自分で売り先を作った、という喜びがあると同時に、2-3時間も拘束時間を作ってしまって大丈夫だろうか、という不安もあった。
しかし、この一歩をきっかけに農産物直売所や卸売業者への出荷は一旦、見送ってみよう、という覚悟ができた。
そうしてぼくはマルシェという形で、地域に直接野菜を販売する農家として生計を立ててみようと決めたのだ。
しかし、この方法にも多くの課題があった。
続く。
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