1 はじめに
数年前の事件ですが、公道でマリオカートを模したコスプレやカートをレンタルする事業について、任天堂が訴訟を提起しました。結論としては任天堂のほぼ全面勝訴で、不正競争防止法違反が正面から争われた事案です。
2 物議を醸した標章や衣装等
今もネットで探せば出てくる画像です。少なくとも日本国内の方であればあのマリオカートを連想させるものであるでしょう。
これは本件の裁判とは直接関係がありませんが、利用客が交通事故を起こしたこともあるようで、当時はかなり社会問題となっていました。
3 何が問題なのか(判決の解説)
不正競争防止法は、以下の行為を禁止しています。
商品が、その需要者の間で広く認識されている場合は、周知の商品であるとして、同一又は類似の商品等表示をして他人の商品や営業と混同を生じさせる所定の行為が禁じられています(1号)。
また、商品が(その需要者の間に限らず)一定の需要者又は取引者の間で全国的に広く知られており、かつ高い名声、信用および評価を獲得したものである場合は、著名の商品であるとして、同一又は類似の商品等表示をして所定の行為をすることが禁じられています(2号)。
※2号の著名な商品等表示についてはより全国的に知られていることから個別に混同の要件は必要とされていません。)
裁判所(重要な争点は知財高裁中間判決で記載されていますの)は、様々な雑誌やテレビの資料はもちろん、元のゲームの出荷本数を考慮して、マリオカートが全国的に知られたブランド商品の表示であること、そしてマリカーがマリオカートの略称として同様にしられていることを認定しました。
裁判所は、以下の通り、マリオカート(MARIO KART)は著名の表示であるとして、相手方の事業が不正競争行為にあたると認定しています。
また、相手方の会社はマリカーの商標権を有していましたが、これを理由に不正競争に当たらないとする旨の相手方の主張は、権利濫用として許されない旨が判断されました。
4 参考URL等
以下は自分の備忘録でもありますが、裁判の流れです。
東京地裁判決
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/072/088072_hanrei.pdf
知財高裁判決
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/285/089285_hanrei.pdf
(なお中間判決)
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/735/088735_hanrei.pdf
最高裁決定上告を受理しない、と
株式会社マリカー(株式会社Mariモビリティ開発)のサイト
5 商標権について
マリカーという商標ですが、当時は相手方の会社が商標権を有していました。その後は上記裁判の流れを受けて、相手方の商標が無効とされたという経緯があります