マリカー不正競争防止法違反事件の簡単なまとめ


1 はじめに

数年前の事件ですが、公道でマリオカートを模したコスプレやカートをレンタルする事業について、任天堂が訴訟を提起しました。結論としては任天堂のほぼ全面勝訴で、不正競争防止法違反が正面から争われた事案です。

2 物議を醸した標章や衣装等

今もネットで探せば出てくる画像です。少なくとも日本国内の方であればあのマリオカートを連想させるものであるでしょう。

https://kai-you.net/article/38845
https://kai-you.net/article/38845
https://www.bengo4.com/c_18/n_12248/

これは本件の裁判とは直接関係がありませんが、利用客が交通事故を起こしたこともあるようで、当時はかなり社会問題となっていました。


3 何が問題なのか(判決の解説)


不正競争防止法は、以下の行為を禁止しています。

一 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為
二 自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

商品が、その需要者の間で広く認識されている場合は、周知の商品であるとして、同一又は類似の商品等表示をして他人の商品や営業と混同を生じさせる所定の行為が禁じられています(1号)。
また、商品が(その需要者の間に限らず)一定の需要者又は取引者の間で全国的に広く知られており、かつ高い名声、信用および評価を獲得したものである場合は、著名の商品であるとして、同一又は類似の商品等表示をして所定の行為をすることが禁じられています(2号)。

※2号の著名な商品等表示についてはより全国的に知られていることから個別に混同の要件は必要とされていません。)

裁判所(重要な争点は知財高裁中間判決で記載されていますの)は、様々な雑誌やテレビの資料はもちろん、元のゲームの出荷本数を考慮して、マリオカートが全国的に知られたブランド商品の表示であること、そしてマリカーがマリオカートの略称として同様にしられていることを認定しました。

裁判所は、以下の通り、マリオカート(MARIO KART)は著名の表示であるとして、相手方の事業が不正競争行為にあたると認定しています。

以上の検討のとおり,原告文字表示マリオカートは著名であって,被告標章第1 の1の需要者である日本国内の本件需要者との関係で被告標章第1の1と類似して おり,「MARIO KART」表示は著名であって,被告標章第1の2~4の需要者である 日本国内外の本件需要者との関係で被告標章第1の2~4と類似するものである。 また,前記第2の2(4),第3の1~3で認定した一審被告会社が単独又は関連 団体と共同で行っている被告標章第1の使用行為は,いずれも被告標章第1を,自 己がしている本件レンタル事業という役務を表示するものとして使用するものとい える。 そして,不競法2条1項2号は,著名表示をフリーライドやダイリューションか ら保護するために設けられた規定であって,混同のおそれが不要とされているもの であるから,一審被告らが主張するような打ち消し表示の存在や本件各コスチュー ムの使用割合が低いこと(ただし,この点についての一審被告らの主張を採用でき ないことは,後記6(2)エのとおりである。)といった事情は,何ら不正競争行為 の成立を妨げるものではない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,自ら又は関係団体と共同 して被告標章第1を前記第2の2(4),第3の1~3で認定したとおり使用する一 審被告会社の行為は,外国語のみで記載されたウェブサイト等で用いることも含め て不正競争行為に該当するものである

また、相手方の会社はマリカーの商標権を有していましたが、これを理由に不正競争に当たらないとする旨の相手方の主張は、権利濫用として許されない旨が判断されました。

本件商標の登録出願がされたのは平成27年5月13日であるところ, 前記4(2)で検討したとおり,その頃までには,原告文字表示マリオカート及び「M ARIO KART」表示は日本国内で著名となっており,かつ原告文字表示マリカーも, 「マリオカート」を示すものとして,日本国内の本件需要者の間で周知になってい て,かつ後記8のとおり,一審被告会社の代表者である一審被告Yはそのことを知 っていたものと認められる。 これに加え,①一審被告会社が設立当初の商号を敢えて「株式会社マリカー」と していたこと,②平成28年11月15日当時に品川第1号店において配布されて いた本件チラシには,「マリオのコスプレをして乗ればリアルマリオカート状 態!!」と記載されていたこと(甲3,4),③平成28年8月12日当時に品川 第1号店サイト1には,「みんなでコスプレして走れば,リアルマリカーで楽しさ 倍増」と記載されるとともに,「マリオ」のコスチュームを着用した人物の写真が 同記載に併せて掲載され,また,平成29年2月23日当時に品川第1号店サイト 1に「みんなでコスプレして走れば,リアルマリカーで楽しさ倍増」と記載されて いたこと(甲6の1,甲35),④平成29年2月23日当時に,河口湖店サイト に「スーパーマリオのコスプレをして乗れば,まさにリアルマリオカート状態!!」 と記載されていたこと(甲6の2),⑤後記6認定のとおり,一審原告の著名な商 品等表示である原告表現物に類似する被告標章第2のコスチュームを用いた宣伝行 為や本件各コスチュームを用いた本件貸与行為が行われ,特に,平成27年11月 2日にアップロードされた本件動画1(甲42の1,甲43の1)の0:05秒時 点には「MARIOKART」という英語の音声が収録され,かつ同音声について,「マリ 101 オカート」の日本語字幕が付けられていたことも考え併せると,一審被告会社は, 周知又は著名な原告文字表示及び「MARIO KART」表示が持つ顧客吸引力を不当に利 用しようとする意図をもって本件商標に関する権利をゼント社より取得したものと 推認することができる。 したがって,一審被告会社が,一審原告に対し,本件商標に係る権利を有すると 主張することは権利の濫用として許されないというべきであり,一審被告らの上記 主張は理由がない。

4 参考URL等

以下は自分の備忘録でもありますが、裁判の流れです。
東京地裁判決

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/072/088072_hanrei.pdf

知財高裁判決

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/285/089285_hanrei.pdf

(なお中間判決)
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/735/088735_hanrei.pdf

最高裁決定上告を受理しない、と


株式会社マリカー(株式会社Mariモビリティ開発)のサイト

5 商標権について

マリカーという商標ですが、当時は相手方の会社が商標権を有していました。その後は上記裁判の流れを受けて、相手方の商標が無効とされたという経緯があります


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