廃棄物処理をめぐる法律問題のアウトライン


1 はじめに

人や企業が生活や事業を行っていく上でどうしても出てくるゴミ・廃棄物ですが、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図る観点から、法律に従った処理をしなければなりません。

ここ最近のニュースだけを見ても、こんなものがあります。
産廃業者でありながら、許可・届出の範囲から外れた形で、廃棄物を役員の所有地にみだりに投棄したとして、役員が逮捕された事案です。

そもそも産業廃棄物の処分の許可を得ていなかった事案です。

(無罪判決が出た事案ではありますが)木くずを違法焼却した件で共謀が争われた事案です。

これは最近SNSで騒がれる事案の部類ですが、トルコ籍の男性が無許可で廃棄物・外壁材を不法投棄した事案です。

どんな企業であっても、廃棄物処理の問題は多かれ少なかれ出てきますので、今回は、初歩的な問題を中心に説明したいと思います(※3条参照。事業者が排出する廃棄物は、一般廃棄物であろうと産業廃棄物であろうと、自らの責任において適正に処理しなければならないことが規定されています)。

第三条 事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。

ちなみに、上記の愛知県豊川市の会社は、役員含めて罰金・禁錮の有罪判決がかくていしたことにより、産業廃棄物収集運搬業の許可を取り消されるに至っています(欠格事由)。廃棄物処理法違反は、企業の存続に大きく関わる問題といえるでしょう。

2 廃棄物とは(種類)

廃棄物とは廃棄物処理法2条1項で定義されており、気体や放射性物質(※例外あり)は除外されています。
そして一般廃棄物は産業廃棄物以外を指すとされるところ、輸入等されたものを除く産業廃棄物は、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油等を言います(廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令)。

他方、紙くず、木くず、繊維くずや動物の死体などは、特定の業種から排出されたものに限り産業廃棄物とされています。

(定義)
第二条 この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。
2 この法律において「一般廃棄物」とは、産業廃棄物以外の廃棄物をいう。
4 この法律において「産業廃棄物」とは、次に掲げる廃棄物をいう。
一 事業活動に伴つて生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物
二 輸入された廃棄物(前号に掲げる廃棄物、船舶及び航空機の航行に伴い生ずる廃棄物(政令で定めるものに限る。第十五条の四の五第一項において「航行廃棄物」という。)並びに本邦に入国する者が携帯する廃棄物(政令で定めるものに限る。同項において「携帯廃棄物」という。)を除く。)

こちらは有名なおから事件判決。
施行令2条4号は、食料品製造業、医薬品製造業又は香料製造業において原料として使用した動物又は植物に係る固形状の「不要物」が産業廃棄物に含まれる旨を規定しますが、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び事業者の意思等を総合的に勘案して決するのが相当であると判示されています。

おからは、豆腐製造業者によって大量に排出されているが、非常に腐敗しやすく、本件当時、食用などとして有償で取り引きされて利用されるわずかな量を除き、大部分は、無償で牧畜業者等に引き渡され、あるいは、有料で廃棄物処理業者にその処理が委託されており、被告人は、豆腐製造業者から収集、運搬して処分していた本件おからについて処理料金を徴していたというのであるから、本件おからが同号にいう「不要物」に当たり、前記法律二条四項にいう「産業廃棄物」に該当するとした原判断は、正当である。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=50185

3 廃棄物の運搬や処理について

廃棄物の処理・運搬は、各自治体毎に条例による独自の規制が定められていますので、注意が必要です。

参考:愛知県産業廃棄物適正処理指導要綱
https://kankyojoho.pref.aichi.jp/DownLoad/DownLoad/sanpaiyoukou.pdf

4 個別事案

(1)PCB

PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、人工的に作られた主に油状の化学物質です。毒性が強く、現在は製造が中止され、国が中心となって回収が進められています。特別管理を要する廃棄物です。

http://pcb-soukishori.env.go.jp/

(2)アスベスト

アスベストも同様に製造使用が禁止されており、飛散性のないものは一般の産業廃棄物として処理されますが、飛散性のあるものは特別管理産業廃棄物として特別の基準が適用されます。

(3)水銀

水銀は水俣条約や水銀環境汚染防止法による規制がなされており、使用製造が禁止されています。

(4)ダイオキシン

ダイオキシンはごみ焼却にともない生じるものですが、廃棄物しょうきゃくろからのばいじん・燃え殻の処分基準(ダイオキシンの含有量の規制)が定められています。
排出量は昨今激減している模様です。

https://www.env.go.jp/content/900535416.pdf




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