メモ書き 中小企業でも定期的に受ける相談・株式の取扱いや株主総会・取締役会について

株式の取り扱い、株主名簿

株主名簿について
株主名簿は会社法上、作成が必要(121条「記載し、又は記録しなければならない」)とされていますが、実際に作成・備え付け(125条)をしている会社は多くない印象です。会社設立時の登記情報から大きく乖離してしまい、時間の経過で現在誰が株主か分からないようなケースも出てくると非常に困ります。(株式の帰属に争いが生じても、株主名簿がないと誰が権利の取得を対抗できないのか、判断が難しくなる事例が過去にありました。130条)。そもそも、(実際に処されるどうかは別として)過料の規制があります(976)。
特別な様式、書式は決まっていませんので、ノートやデータでも構いませんから、会社の規模や事務処理の便宜を踏まえ作成しておきましょう。

なお、一定の大きな組織上の行為をする場合には株主リストの作成が求められるようになりました。この点でも株主の内訳を把握しておくことは大切ですね。

様式はどんな様式でも良いと書きましたが、以下は法定記載事項ですので要注意。121条。
株主の氏名・名称及び住所
株主の有する株式の種類、数
株式取得日
株券発行の場合は株券の番号

昨今の情勢から以下の点にも気をつけましょう。
株主名簿記載事項に関する株主の個人情報の取り扱いについては実務上は以下のガイドラインが参考にされています。(会員限定ですので、同ガイドラインを踏まえたと思われるNTTさんの発表文をご紹介)

https://www.kabukon.tokyo/activity/data/study/study_2022_04.pdf

株主様の生活状況に変化があった場合も注意しましょう。
相続発生による株式の一般承継は130条に定める「譲渡」に含まれないのが近似の多数説ですが、株主の把握のためには名義書換が妥当です。
株主様のご体調によっては成年後見人が就任している場合もあります。民法859条の財産管理の一環として株式の処分(非上場・非公開会社に対しては、株式の買い取りを求められる事が多い)を進めることがあります。
いずれにせよ、戸籍や成年後見登記の資料を徴求して事実関係を確認することは必要です。

株主総会、取締役会

株主総会、取締役会についても
そもそも開催の実態がない場合や、登記手続上必要な場合に限り遡って議事録が作成される場合も見受けられます。
総株主や取締役全員の賛成があれば決議を省略することも出来ますが、後々のリスクを踏まえると、作成しておくことが無難です。またそのような例外が通らないケースもあります(監査役会等)

記載事項や開催の流れは条文や実務書を見て頂けたらと思いますが、昨今の新型コロナウイルスが原因で株主側の出席に制限を設ける必要が生じたケースがあります。裁判にまで発展した事例もありますが、コロナ限らず何らかの原因で制限を必要とする場合には参考になるでしょう。

また、これは実務家からすると当たり前ではありますが、取締役が会社と利益相反するような取引をする場合に、株主総会ないし取締役会に対して、重要な事実を開示し、承認を受けなければなりません。356条、365条。
会社にとって利益しかないような事例(取締役→会社へ贈与)、報酬支払い、取引約款に基づく契約(取締役が自分の会社の運営する飲食店で食事等)、使用人分給与(そもそも給与体系が明確であり取締役会、株主総会の承認が前提)といった例外的な場合を除いて、グレーそうな場合も含めて所定の手続きを経ておいた方が良いでしょう。


余談ですが、日本取引所グループは、3月期決算で定時株主総会開催予定日の公表をしている会社を以下の通りまとめています。賛否両論ありますが、今も2,3割は総会日が被っているようですね。


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