【交通事故判例】交差点出合い頭衝突事故(信号機なし、優先関係あり)について降雪により優先関係が認識し得ないとして過失割合を50:50とした事案

旭川地方裁判所令和5年3月16日判決(確定)判例時報2580・2581号

信号機による交通整理がなされていない十字路交差点で、優先道路(中央線が引かれている)を直進進行したステップワゴン・原告車の左側面に、同車の左側から交差点を同じく直進進行したコンフォートの前部が衝突したと言う事案。

判例タイムズでは原告:被告が10:90とされるのが原則ですが(判例タイムズ105)、本件では以下の理由に50:50と判断されました。

1 交差点内は積雪で中央線が確認できない
2 道路の幅員は6.8mと6.4mであり、その差がほとんどない(その上積雪で両者の道路幅は余計認識が困難だった)
3 一時停止線も積雪により確認できないし、一時停止標識は通常は逆三角形だが雪の付着により正三角形を成しており表示内容が認識できない
4 原告は、被告がタクシー運転手であり道路状況を熟知していたと主張したが、本件十字路は国道から1本内側に入る道路で主要な道路とはいえないことからすれば供述が直ちに不自然とは言えない

事などから、被告には、本件十字路の優先関係を確認できたと伺わせた事情はない、と。
 

道交法4条1項、同法施行令1条の2第1項は、道路標識等を設置管理して交通の規制をするときは車両がその前方から見やすいようにする等して設置管理しなければならない旨を定めており、そのような規制が効力を生じるためには、道路標識が客観的に認知可能であることが必要です。本件ではその前提が成立していないため、優先関係により過失割合を定めることはできないと判断したと思われます。

他方、一切の優先関係がない交差点であれば、単純に左方優先の原則が適用され、(優先であるはずの)原告ではなく、被告の過失がより少ないと判断される可能性もあった事案じゃないかと思います。

そういう意味では、50:50と認定した裁判所の判断は適切だと考えることができます。
判例タイムズ101 同程度の速度であれば、右方・原告:左方・被告=60:40

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