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【バルセロナ指導者留学経験談①】Alevínの7人制サッカーを1シーズン経験し感じたこと。


皆さんこんにちは。西田です。


今回は私が2020年-2021年で、バルセロナ7人制サッカーを1シーズン経験したときのことについて書いてみたいと思います。自分なりに思ったことなどを書いていきたいと思っているので、最後まで読んで頂けると嬉しいです。そして一人でも多くの方にバルセロナのサッカーに興味をもっていただけると嬉しいです!


前回の記事では、スペインの7人制サッカーについて書かせていただきました。もしまだこちらを読んでいない方がおられましたら、こちらもよろしくお願い致します!



このバルセロナ留学の1番の目的は、スペインのサッカーを自分の目で見て、肌で感じることで、自分にはまだ持っていなかった知識や考え方そして、どのような指導や練習を行っているのかを学び、吸収することで、指導者としてさらに成長することでした。


その目的を実現させるためにもいくつかのチームを見て回りましたが、最終的にバルセロナ市内のBadalona地区にあるF.F.BadalonaのAlevínE/Primera año(日本の10歳)を第二監督としてチームに関わらせてもらえることになりました。


【チーム初合流の日】


スペインではサッカーのシーズンは日本とは異なり、だいたい9月から翌年の6月の期間で行われます。私もコロナの影響のより予定より、入国が遅れたましたが、2020年の7月には入国することができた為、2020-2021シーズンのAlevínEの新シーズン最初の練習からチームに関わり始めることが出来ました。


しかし、突然異国から来た、まだスペイン語も拙い日本人である私は「果たしてうまく馴染めるのだろうか?ちゃんと彼らの言っていることを理解してコミュニケーションが取れるのだろうか?笑われたり、馬鹿にされたりしないだろうか?」など色々考えてしまい、長いヨーロッパの夏休み明けである選手と、その保護者たちとの初対面はなかなかの緊張具合でした。


ですが、どうやら勝手に緊張していたのは私だけだったようで、まだまだ夏休み気分が抜けきってない彼らは、私がいることに対して全く気にする様子もなく、すんなりと受け入れてもらいました。


このスペイン人の誰に対しても気さくな感じと、来るもの拒まずの精神、そしていつでも陽気でおおらかな人柄はさすがスペイン人だなと感じたことの一つでした。そして選手の保護者も皆さん良い人で、シーズンを通して何度も助けられたり、励まされたのを覚えています。


【AlevínEの子供達の第一印象】


AlevínEは全員10歳の11人で構成されたチームでした。私が彼らと初めて会ってから感じた印象は、日本の子供よりも遥かに良い意味でも悪い意味でも積極的で、好奇心が高いということです。練習に対する質問、気になったことはそれがどんな瞬間であっても(自分が話している時でも平気で遮って質問してくるので、結構苦労したこともありましたが。。。笑)その瞬間に質問しないと気が済まないので、私自身も新しく来た日本人に興味津々で色々質問され、それに対して拙いスペイン語で何とか答えていたのを覚えています。


また、選手の中には急に飽きてしまいピッチに座り込んだり、ボールを触らずにはいられなかったり、じっとコーチの話を聞くことが出来ないなんてことは日常茶飯事でしたし、彼らの興味の最優先事項は「何か面白そうなこと」「自分にとって好きなことや興味があること」なので、バルセロナに来る前まで日本で日本の子供たちに指導をしていた私は、最初の頃はそれらのことに非常に驚きを感じましたし、それと同時に日本の「こういう時ははこうしないといけない」「やって良いことと悪いこと」などを学校や親などからしっかり教わる教育指導がより際立って見えました。


ですが、それは国、文化が違うからであり、彼らにとってはそれは別に考えることでもなく、普段生活している時と同じようにしているだけなのです。なので、いちいちそういった行動に対して「日本のやり方、教育」を、あくまでも学びに来ている私から干渉することは少し違うかな?と思ったので、度が過ぎたこと以外は「そういうものだ」という精神で、むしろそうなってしまう原因は私たちコーチ側に問題があると感じ、練習内容や、コミュニケーションの取り方、練習の流れや、彼らの行動、考えていることを日々試行錯誤しなければならないと気付かされた点でもありました。


なので、そういったことを考えると、日本にいる時はある意味「楽に」指導が出来ていたのかもしれません。それは決して練習に対して妥協して選手たちに指導していたということではなく、私も常に全力で向き合ってきたつもりなので、そういうことではありません。ここでの「楽」という意味は、コーチの話をしっかり聞く、一回言ったことはこちらが繰り返して言わなくてもやってる「日本人の子供」のおかげで、私たちが限られた練習時間の中で、指導することに集中できたということです。


たったの1シーズンを第2監督として、つまり第1監督の手伝い的な立場だった私でも、練習前、中、後で考えること、気をつけることが多過ぎて、一回の練習の疲労度は全然日本にいた時より大きいと感じました。実は、このチームを率いていた第1監督も実は日本人の方でして、その方はもう8年間もバルセロナに在住し、指導歴も経験も多く積んでいるという方でした。私は知り合いを通じて紹介してもらったのですが、その方から学んだことは本当にたくさんあり、共に1シーズン過ごすことが出来て良かったと感じています。彼の選手たちに対する接し方や、練習内容、指導方法などは、Badalonaにたくさんのチームがあり多くのチームがグウランドを共有しながら練習しているわけですが、他チームのスペイン人の監督らよりも選手やチームのことを常に考え悩み、挑戦していたように感じました。


【バルセロナの7人制サッカーの監督という立場】


前回の記事でも述べたように、バルセロナでは10歳の子供たちのリーグ戦でも結果が芳しくないと下のカテゴリーに降格するルールがあります。クラブが抱えているチームがそんなに多くなく、クラブ自体もあまり大きいクラブでなければその影響は小さいものですが、F.F.BadalonaはC.F.Badalonaを母体にした下部組織であり、20-21シーズンのBadalonaのトップチームはスペインのSegundaB(3部)に所属し、FC.BarcelonaBと同じリーグで戦っていたという決して小さくはないクラブなのです。


その為、下部組織であるF.F.Badalonaは多くのチームを抱えることができますし、他のチームから良い選手をスカウトする側のクラブでもあるわけです。ですから、各チームのリーグ戦の一戦一戦の結果がそのクラブの評判にも関わってきますので、リーグ戦ではなるべく良い成績を収められるようにしないといけませんし、かつ、その中で将来を見据えた良い選手も育成していかなければいけないのです。


そんなプレッシャーと責任を全指導者は背負っているため、7人制サッカーといえど、普段の練習、そして毎試合は一回たりとも無駄にはできません。しかし、このような環境が良い指導者、良い選手を数多く輩出し、サッカー大国スペインという歴史や成績を今現在も築き上げているのだと実感しました。


そういった環境の中で、一人の日本人の指導者が様々な重圧の中で戦っていることは尊敬に値するものだし、日本人の指導者でもスペインというレベルの高い国でもやれるんだという自信につながる一つの証明になるのではないかと思います。事実、彼は目の肥えたスペイン人の保護者からも熱い信頼を集めていましたし、良い関係を築いている姿をシーズンを通して目にすることが出来ました。


【普段の練習と試合の様子】


さて、ここからはそんな環境のもと、第1、第2監督(私)、そして同じくF.F.BadalonaのCadateB(14歳〜15歳のチーム)で選手をやっているGKコーチ(彼もCadeteBではGKとしてプレー)の3人の指導者と選手11人で構成されたAlevínEの普段の練習やリーグ戦を戦った感想、そして結果などを書いていきたいと思います。


基本的にAlevín以下のチームは、メインのグランドのほぼ隣に位置するグランドを使用して普段の練習を行っていました。グランドの大きさは通常の11人制サッカーで使われるサッカーコート一面でしたので、複数チームがグランドを共有し、練習を行っていました。また、そのグランドはリーグ戦の時もホームグランドとして使用されていました。

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※試合の時の様子


バルセロナの場合、練習の開始時間は日本に比べ遅く、一番早い練習時間でも17時から〜19時30分で、AlevínEは基本的にそのあとからの練習でしたので、19時30分〜21時までの1時間半の練習そして、チーム数も多い為、曜日もしっかり振り分けられており、私たちは火・木・金の週3回の練習となっていました。

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※普段の練習の様子


【20-21シーズンのリーグ戦を振り返って】


20-21シーズンと言っていますが、実はコロナウイルスの影響もあり、通常前期後期の、ホームアンドアウェーで同じ相手にそれぞれ1試合ずつ対戦するリーグ戦は、開幕が遅れに遅れ、前期を開催することが出来ませんでした。つまり、後期のみの各相手とは1試合ずつの対戦で、試合数が少なくなった分、1試合1試合の結果がより重要になったリーグ戦でもありました。


私たちAlevínEはSegunda Divisiónの合わせて16チームGrup15で20-21のリーグ戦は戦うことになりました。(この年、AlevínのDivisiónは4つ、SegundaのGrup数は46グループ)そして後期だけとなったことで全15試合のなかで勝ち点を競い合うというレギュレーションになりました。Alevínは前記事でも述べたように10歳11歳の2学年が該当するカテゴリーです。なのでリーグ内には11歳のみで構成されたチーム、10歳11歳の混合チーム、そして私たちのような10歳のみで構成されたチームが存在し、それらがランダムに各グループへ振り分けれることになっています。


そのため、Alevínの上のリーグにあたるPreferenteやPrimera Divisiónでは、各クラブのレベルにもよりますが、ほとんどが11歳の選手で構成されたチームになっています。そんな中で、私たちが戦ったグループ15はSegunda Divisiónにも関わらず、なんと10歳のみで構成されたチームは私たちを含め、たったの2チームだったのです!


皆さんから見たら「たかが1歳差でしょ?」と思われるかもしれません。しかし、この年代の1歳差とは、私たち大人の1歳差とは全くもって異なります。なぜなら、ゴールデンエイジに該当する彼らの成長スピードはとても早く、たった1歳の差でも選手の間には体の大きさにかなりの差があります。また、力の強さ、足の速さなどでも大きな差があるため、リーグ戦を戦う上でこの年齢差は大きなハンデとアドバンテージを生むことになります。そのため、1人で15試合中40ゴール以上も決めてしまう選手がリーグにいることも珍しくはありません。露骨にフィジカル面での差が見られるカテゴリー、かつ11人制よりもより一人一人の選手のプレー回数やプレーの影響度、そしてチャンス、ピンチの数などが圧倒的に多い7人制サッカーという特徴を持ったAlevínのリーグ戦において、いかに1歳差の影響力が大きかがお分かり頂けますでしょうか?


そんな組み合わせのGrup15でしたが、このグループはなんと、前評判による優勝候補が4チームもいたという私たちにとって大変難しいグループでした。


しかし、そんなグループで戦った私たちの結果は、なんと16チーム中6位という結果を修めることが出来ました。この難しいグループの中での6位、そして優勝候補の4チームにも惨敗せずに良い試合をすることが出来たことは本当に嬉しかったです。

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※FCFより


この成績は間違いなくピッチのなかで戦った選手自身の実力ですし、もちろん日々の練習に全力投球していた監督の賜物だと感じています。


【15試合のリーグ戦で感じたこと】


リーグ戦は全部で15試合でしたが、今振り返ると1試合1試合が全てが印象に残っています。なぜなら、つまらなかった試合などは1試合も無く、全試合選手、指導者がチームとして戦うことが出来たからです。圧勝できた試合もあれば、惜敗や苦しんだ上での劇的勝利や、なんとか試合終了間際に引き分けに持ち込み勝ち点をもぎ取った試合、試合を通して自分たちのやりたいことが出来ずに負けてしまった試合など、そして、どの相手も抱えている選手やクラブのレベルに沿った異なるサッカーをしてきたので「7人制サッカーってこんなにも深くて面白いんだ!」と今まで知らなかったサッカーの一面を経験することが出来ました。


今も書きましたが、7人制サッカーは本当に面白いです。サッカーの基本は全てここに詰まっていると感じましたし、練習も試合も11制サッカーとはまた違った考慮することや、工夫しなければならないことがたくさんあり、毎週が私にとって刺激的でした。


また、気づきのなかの一つに、バルセロナの選手はこの年代からでも勝利への執念は大人とそこまで変わらないということがありました。大人顔負けのファールのもらい方、審判への抗議、ピンチを防ぐためのファール、状況を理解したプレー、時間稼ぎなど、、、そういうことを選手に教える指導者はいるはずがないと思っているので、おそらく彼らは自然に多くの試合を経験していく中で、また他のチームの試合を観戦することで覚えていったのだと思います。


理想はそのようなことをしなくても、サッカーの内容で圧倒し、勝利できれば良いのですが、どうしても戦術だけでは補えないフィジカル的な部分の差やチームのレベルの差というものが現実にはあります。彼らはその現実を理解し、自分たちのやりたいサッカーをしつつも、より「勝ち点3」の確率を上げるためのプレーができるということに私は大変感心しました。


日本の同世代の子供も過去に見ていましたが、サッカーが始まったら、もう他のことを考えている余裕が無いような選手が多いように感じています。それに比べ、バルセロナの選手たちはより「サッカー」というスポーツをこの年代から理解しているように感じました。それはつまり、そのような強かなプレーのみならず、戦術理解度の高さや、試合のなかで、今自分は何をするべきなのかを考えられる選手が非常に多いということです。


普段はやんちゃで、好奇心旺盛な子供たちですが、彼らはサッカーになると一気に10歳の子供からサッカー選手へと変わりました。普段の練習でも本当に負けず嫌いですし、サッカーを上手くなろうという姿勢も何度も見受けられました。なので、練習でも試合でも、負けたり、ファールを受けて転ぶとすぐ泣いてしまうような一面はあるものの、彼らを見ていると私も「子供」としてではなく「サッカー選手」として接さなければならないと感じさせられました。


そして何よりもこのような選手が育つ裏には、前記事でも書いたような、そのようなことを学び、経験し、実行できる環境がバルセロナには備わっていることも大きな要因の一つだと考えられるのではないでしょうか?


【まとめ】


このような経験こそがまさに私がこのバルセロナ留学で求めていたことでした。試合に勝った時、ゴールを決めてチームみんなで喜びあった時のあの体の底から湧き上がってくる感情は本当に格別なものです。改めて、この感情は指導者にしか味わえないものだと思いましたし、これこそがこの仕事の1番のやりがいだとも感じました。


ここまで楽しく、充実したシーズンを送れたのは、言うまでもなく選手全員と、コーチ陣のおかげですし、何よりも私が学ぶことを受け入れてくれたF.F.Badalona、選手保護者の皆さん、そして毎日お世話になった監督には感謝しかありません。今シーズンのAlevín2年目の活躍が本当に楽しみですし、彼らはすでに物凄いポテンシャルを持っているので、それを存分に活かして今後も成長して行きつつ、サッカーを楽しんで欲しいと思っています。そして、もしサッカーを続けてくれていたら、またいつかバルセロナで会えたら良いなと思っています。


それでは今回はこの辺りで終わりにしたいと思います!

最後まで読んでいただきありがとうございました!

引き続きバルセロナでの経験談などを書いていきたいと思いますので、また覗きに来ていただけると嬉しいです。

それではまた次回の記事で!

Hasta luego!



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