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リゾテック未来予想図      "コロナ禍の今、敢えて沖縄の未来を語る"

先日、沖縄が目指すべき観光業は「足腰の強い、サステイナブルで倒れない観光業」であり、SDGsの考え方に加えBCPの考え方が必要と述べた。

今回はいわゆる未来を想定し、バックキャスティングで、何をなすべきかを考えるSDGsの考え方に則り、昨年執筆したリゾテック未来予想図を改めて公開したい。

20年後の業界紙がリゾート地沖縄を記事にしたという仮定での執筆である。

執筆した際には、観光がここまでダメージを受けるとは考えてもみなかった。しかしながら、テクノロジーはいまだに未来予想図にも重要であることに変わりはない。加えて倒れない観光を作るためにも極めて重要であることが今回のコロナで顕在化した。
リゾテックのコンセプトは更に重要性を増している。

それでは20年後の沖縄の未来をどうぞ!

**2039年7月 〇日の業界紙の記事(リゾテック未来予想図) **

世界ナンバーワンのリゾート地OKINAWA
2039年7月、OKINAWAは、米国○紙及び世界的にも権威ある機関〇〇から、世界ナンバーワンのリゾート地としての称号を獲得した。
OKINAWAは以前より入域観光客としては世界トップクラスの観光地ではあったが、質的には長らくハワイや地中海リゾート地の後塵を排してきた。ようやく質量共に念願の世界ナンバーワンになったと言えよう。

テクノロジーの導入
目に見えない部分にテクノロジーを導入し労働生産性を高め、おもてなしの部分を徹底的に充実、AI導入によるビッグデータ解析によりさらなる労働生産性や付加価値を高め、特に顧客分析による個別管理は富裕層の満足度を高めた。
温暖化で世界的にも死滅が進んでいるサンゴにみられるように、観光資源が枯渇しつつあるリゾート地が多い中、OKINAWAはサンゴの育成もテクノロジーを活用、八重山諸島はその重要な実証の場となっている。
また、返還された米軍基地をOKINAWAは有効に生まれ変わらせた。戦略特区を活用したスマートシティ化を実現、乗用ドローン、自動運転をはじめとするスマートリゾートシテイーとして生まれ変わり、全体の規模としてはまだ及ぼないものの、ことリゾートシテイーとしてはシンガポール政府を始めとする名だたるリゾート地の政府民間企業が見学に訪れるような地域になっている。
OKINAWAが、リゾートに関するテクノロジーに関しては世界一の集積地になっていることもまた特筆すべき点であろう。国や県はOKINAWAを世界最高のリゾート地として育てるべく、リゾートに関するテクノロジーの内外からの誘致活動や、税制面の優遇を20年前から継続的に行ってきた果実が実った形だ。

OKINAWAモデル
テクノロジーはあくまで従であるが、観光とテクノロジーが組むことにより観光をテクノロジーが支えることにより、観光そのものがもつ人間らしいあたたかさやおもてなしを最大限に研ぎ澄ますことができるという考え方もOKINAWAでは根付き始めている。
自然環境やおもてなしの維持継続とわくわく感の創出をテクノロジーで支える、このOKINAWAモデルは、アジアを中心とするリゾート各地へも応用されていることからもOKINAWAがトップの地位になった裏付けでもあり、このOKINAWAモデルは沖縄リゾート経済圏の拡大に一役買っているともいえる。

リゾテック-リゾートとテクノロジーの融合−
この称号を得るには平坦な道ではなかった。

この原点は20年前のある言葉の創造と概念によることは論を待たない。
「ResorTech」(リゾテック)である

リゾテックは観光産業をテクノロジーで支え世界最高峰のリゾート地を目指しOKINAWAを豊かにすることを表すコンセプトワードだ。
世界ナンバーワンの称号に輝いた、 OKINAWAモデル、それこそがリゾテックの概念そのものなのである。
この言葉が生まれる前は観光業界とIT業界は必要に応じて個別に接点があるだけだった。この言葉と概念により観光産業とIT産業を繋ぎ、業界同士の垣根を超えたコミュニケーションが生まれた。観光産業とIT産業の融合の結果、今ではリゾテック産業と言ってもいい産業が生まれており、OKINAWAの観光産業はすでに2兆円 、IT産業も約1.5兆円と20年前の3倍の規模になっている。またIT産業では観光産業専門のデータサイエンティストも生まれており、彼らのほとんどはデータサイエンティストでありながら、ホテルや旅行会社でも働くことのできるパラレルワーカーだ。また彼らはリゾテックによって磨かれたテレワークやワーケーションを存分に活用している。
OKINAWAの主力エンジンである観光産業とIT産業の成長は、他の産業を牽引し、OKINAWAの経済は雁行型で成長を続けている。もちろんOKINAWAの県民所得はもはや20年前のそれとは大きく異なることは言うまでもない。

ResorTechOkinawaおきなわ国際IT見本市
リゾテック創造の前年2018年に発足したISCOと県はこのリゾテックのブランディング戦略の一環として、「ResorTechOkinawaおきなわ国際IT見本市」の開催を決め、翌年には「ResorTechOkinawaおきなわ国際IT見本市プレ開催」を実行した。
国際IT見本市は大きなプロジェクトではあったが、県やISCOはそれだけではなくフューチャーセッションや、勉強会などを通じ、当時流行っていたSDGSのバックキャスティング思考で考える啓蒙活動を盛んに行った。また、媒体やSNSによる宣伝活動や国際交流も積極的に行った。これら継続的な啓蒙活動や国際交流と相俟って、ニッチではあるものの斬新でシャープな切り口であったプレ開催の成功がきっかけとなり、「ResorTechおきなわ国際IT見本市」は年を重ねるごとにその規模や質を高めていった。さらに、サステイナブルで差別化の図られた国際見本市の1つとして認知され、内外から多くの人の往来を呼んだ。観光業界とIT業界のマッチング、スタートアップとファウンダー、ハイリゾートのオーナーが毎年OKINAWAを訪れるようになった。

実証実験の地OKINAWA
ResorTech国際IT見本市の特徴は単なる展示会ではなく、OKINAWAが持つリゾートの現場をフルに活用した実証実験にあった。国際IT見本市は、開催期間前後も含めた、OKINAWA全体で行われる実証実験の結果発表や計画発表の場ともなり、実証実験そのものが観光客の回遊性を生んだ。「ResorTech国際IT見本市」は点ではなく、空間と時間をうまく利用した取組みとなり、リゾートを支えるテクノロジーがこの20年間サステイナブルにブラッシュアップされ続けたことが今のOKINAWAの地位に繋がったと言えよう。

OKINAWAの新たな飛躍
OKINAWAはリゾテックという言葉のもと、リゾートとテクノロジーを融合し、世界一のリゾート地としての地位を築いた。テクノロジー側からすればリゾートに関するテクノロジーは世界トップレベルの集積地でもある。
リゾートにとって自然環境は最も重要な資源であることから、今、沖縄のリゾテックは海洋ゴミ問題など世界の課題解決にも向かっている。OKINAWAはリゾテックのもと今や世界の課題解決をも牽引する地域にもなろうとしている。                                     

執筆:沖縄経済同友会 情報通信委員長 花牟礼 真一(2019年7月22日執筆)

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