【ロゴデザイン(Jリーグ編)】#4

今回は、サッカークラブ(Jリーグ)のロゴデザインについて投稿します。
前回の投稿でも記載しましたが、デザインのトレンドはシンプルになっています。
その背景として、媒体がアナログからデジタルへ、さらにPCからスマホとなり、これまでの複雑なデザインではうまくいかなくなり、より視認性が重要視されています。それは、企業だけではなくサッカークラブも同様です。

<前回の記事>

海外では、ユベントスのロゴ(エンブレム)変更が有名ですが、
直近Jリーグでも変更事例が増えてきています。
今年は、FC東京や名古屋グランパス、ザスパクサツなどがエンブレムの変更を行っています。
クラブ20周年や30周年といった節目に検討・変更されるケースが多く、
サポーターからアンケート、意見を募って決定しているクラブもあります。

変更したのは数年前の話にはなりますが、今年16年ぶりにJ1昇格を果たした
東京ヴェルディの事例が面白かったので、ヴェルディを中心にJクラブの事例について記載します。


東京ヴェルディ

①社名変更

東京ヴェルディを運営する、東京ヴェルディ1969フットボールクラブ株式会社は2017年に社名変更を行います。

■社名変更 ※下段は英文名
旧)
東京ヴェルディ1969フットボールクラブ株式会社
TOKYO VERDY 1969 FOOTBALL CLUB ,Inc.

新)
東京ヴェルディ株式会社
TOKYO VERDY ,Inc.

■変更理由
3年後の2020年には、我々東京ヴェルディがホームタウンとして活動する東京にて、オリンピック・パラリンピックが開催され、その前年にはクラブが創立50年の節目の年を迎えます。

クラブ、そして東京が新たな歴史のページを刻む年を間近に控え、
我々は、地域密着型総合スポーツクラブとしての役割を一層強化し、
将来に向けて発展させていく意識
をあらたにしております。

これまで我々は、地域密着型総合スポーツクラブとして、バレーボールチーム、トライアスロンセッション、フットサルクラブ、eスポーツチーム、ビーチサッカーチームを展開し、サッカー以外の競技の普及事業や文化活動にも力を入れてきました。

今後も、地域社会や地域に住む皆様にスポーツを通して貢献する存在として認識していただけるように、この度、会社名を『東京ヴェルディ株式会社』に変更することを決定いたしました。

社名変更のお知らせ | 東京ヴェルディ / Tokyo Verdy

②エンブレムとロゴデザイン変更

旧ロゴ
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000038293.html
新ロゴ
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000038293.html

ロゴデザインの変更にあたり、
①デジタル・マーケティングへの対応
②ヴェルディだけが持つ価値の再表現
③総合クラブで展開できる新システム
④ファッションとして成立するクオリティー

をポイントに、世界の名門クラブと同等レベルのクオリティを投下するために、ロゴ・タイポグラフィの巨匠『 Neville Brody 』を起用

東京ヴェルディの総合クラブ化とエンブレム・ロゴデザイン変更について | 東京ヴェルディ / Tokyo Verdy


③リブランディング

リブランディングをけん引するのは、「東京ヴェルディ・バンバータ」のゼネラルマネージャーでもあり、“クリエイティブ総合商社”を目指すアマダナ(amadana)を率いる熊本浩志社長と、その子会社・アマダナスポーツエンターテインメント社だ。彼らがデザインを託したのは、イギリス出身のデザイナー、タイポグラファー、アートディレクターのネヴィル・ブロディだ。


 ――日頃のクリエイションにも通じると思うが、どのようなアプローチやプロセスでアイデアを形にしていったのか?

ネヴィル:
私たちはどんなプロジェクトも徹底したリサーチから始める。数ある日本のスポーツチームはもちろんのこと、世界のスポーツチームやスポーツビジネス、スポーツブランドもメディアブランドも、今の東京という街も、包括的に検証した。並行して、東京ヴェルディの歴史を振り返った。そこから、時代に合わせてモダナイズをすることと、たくさんのアクティビティがあるので仕組みとしてモジュール化をすることが大切だと考え、実験的にデザインをしながらクリエイティブなものに仕上げていった。

ネヴィル:
多くの代理店やデザイナーは絞り込んだ2~3案をプレゼンするが、私は考えられるすべてを出して、方向性は持ちつつも、皆でディスカッションしながらゴールを目指せるようにしている。簡単ではないが、本当にクリエイティブなものにするためには大切なプロセスだ。押し付けるのではなく、すべての可能性を提供して差し上げることがクライアントへのリスペクトであり、感情や意思などを共有しながら進めるのが正しい手法だと思っている。徹底したリサーチに基づいて作り上げた骨格と、柔軟な展開や運用ができるようなシステムを構築する一方で、将来に向けて成長するための余白や不完全さを尊重することもブランディングにおいては大切なことだ。


――今回、新デザインをするうえでとくに意識したことは?

ネヴィル:
クリエイティブであることと、シンプルであること
だ。ブランドはかつては静止的で伝統や権力などを象徴するものが良しとされてきた。けれども近年はクリエイティブであるかどうかが重要視されている。これからのブランドは自らストーリーを発信しなければならず、タイプフェイス(書体)やフォント、色、サイズそして言葉そのものなどすべてがブランドや企業の顔となるものであることが大切だ。また、デジタル化に対応し、スマートフォンからユニフォーム、スタジアムの旗まで大小のスケール感が異なったり、バーチャルなものからフィジカルなものまで、柔軟に対応できるようなものにした。今はよりシンプルなコミュニケーションデザインが必要な時代だ。

東京ヴェルディがリブランディング、デザイン界の大御所ネヴィル・ブロディを起用(松下久美) - エキスパート - Yahoo!ニュース


④Jクラブとして初のグッドデザイン賞を受賞

https://www.brand.verdy.co.jp/g-mark2020

東京ヴェルディは総合クラブとして取り組んできたブランディングで
2020年度グッドデザイン賞を受賞しました。

2019年、創立50周年を機に掲げたブランドビジネスと総合クラブ化。
展開性のあるアイデンティティーの刷新、スポーツ人口拡大へ向けた複数競技の運営、ブランドカラーで全社が統一したユニフォームデザインなど、
スポーツのビジネスモデルを拡張する一連のプロジェクトが評価されました。
Jリーグクラブとして初の受賞であり、スポーツクラブブランディングの取り組みが受賞対象となった初のケースとなります。


■審査員評価
スポーツの健全なビジネス化のために、サッカーだけでなく、マイナーなものを含む、異なるスポーツチームのブランディングを1つに統合し、かつ、マネタイズしやすいようにデジタルやグッズなどへの横展開にも配慮されている。

ビッグスポンサーに頼らず、地域とともに各クラブが自立していくという、これからのスポーツブランディングの手本となるような存在である点が評価された。(受賞ページより)

グッドデザイン賞|総合クラブブランディング 東京ヴェルディ (verdy.co.jp)


上記の内容から、東京ヴェルディの総合型クラブ化への移行と、地域と日常に溶け込むリブランディング化のプロセスが理解できました。
「V」をイメージさせるアパレル商品の販売や、2020シーズンのユニフォームに掲出されるスポンサー企業のロゴをブランドカラーであるゴールドに統一するなどが評価され、2020年度のグッドデザイン賞を受賞しています。
デジタル化の影響やストーリーとメッセージの重要性を改めて感じます。

別クラブだとアルビレックス新潟も、レディースチームや野球チームを持つなど、ヴェルディと同様の方向性だと考えられます。


今シーズンから変更した名古屋グランパスや徳島ヴォルティスのデザイン変更についても下記に記載します。

名古屋グランパス

https://qoly.jp/2023/12/12/y1tmz7j5-kit-lfb-1?part=4

GRAMPUS SOCIO PROJECT 新エンブレムのデザイン検討プロセスについて|ニュース|名古屋グランパス公式サイト (nagoya-grampus.jp)

名古屋グランパス 新エンブレム決定 ~クラブロゴ・フラッグデザインも新たに~|ニュース|名古屋グランパス公式サイト (nagoya-grampus.jp)

徳島ヴォルティス

https://qoly.jp/2023/12/12/y1tmz7j5-kit-lfb-1?part=2

クラブエンブレムのリニューアルについて | NEWS | 徳島ヴォルティス オフィシャルサイト (vortis.jp)

新エンブレムデザイン決定 | NEWS | 徳島ヴォルティス オフィシャルサイト (vortis.jp)



モンテディオ山形やガンバ大阪の記事も参考になりました。

モンテディオ山形

モンテディオ山形の記事では、フェラーリや新幹線などのデザインを手がけ
奥山清行/ケン・オクヤマ氏の、デザイナー側の話もあり参考になりました。予算や売上は経営において、もちろん重要ですが、規模によってかける労力やクオリティは変わらないという考えにも共感しました。

ガンバ大阪

ガンバ大阪が取り組んでいるブランディングだが、これまでに国内外の多くのクラブも同様な取り組みを行ってきた。イタリアが世界に誇るビッグクラブであるユヴェントスは、2017年にこれまで長く使用してきた伝統あるエンブレムを変更した。

同クラブのブランディング戦略を担当した日本法人の株式会社インターブランドジャパンが公開したプレスリリースでは、その理由の一部が明かされている。ユヴェントスは既存のファン・サポーターに加え、これまであまりサッカーに馴染みのなかった人々をも巻き込み、新たなマーケットやコミュニティを拡大し、クラブ、ブランド、ビジネスにおいて好循環を生み出すことが目的だという。クラブのイニシャルである「J」を使用したシンプルなロゴにすることで、即座にクラブを想起させる狙いがあるという。そして、同クラブのオフィシャルショップではクラブのユニフォームだけでなく、ロゴ入りのパーカーやリュックサック、帽子、水筒、傘といった人々の生活により身近な商品が販売されている。

クラブ創設30周年となるG大阪、ブランディングの背景と狙いとは | VICTORY (victorysportsnews.com)

他スポーツでは、ジョーダンやヤンキースなどがアパレル、日常にも溶け込んでいます。バスケや野球に詳しくない人でも身に着けている人も多いのではないでしょうか。
Jクラブだと鹿島アントラーズやツエーゲン金沢もアパレル産業に乗り出しています。
サッカーファン層だけではなく、非サッカーファン層へのアプローチや、日本だけではなくグローバルも視野にいれたデザイン・ブランディングを各クラブが行っている傾向にあります。
一方で、今シーズンのFC琉球などのようにエンブレム変更が検討し直しになる事例や、約5年前の町田ゼルビアの、クラブ名変更に対する反対もあったことから、改めてサポーターの意見も重要だと感じました。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?