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ADHDは保護者の気づきで育ちが変わる・幼いころのケアが重要

ADHDをはじめ、子供の心の発達障害は10人におよそ一人です。小学校のクラスで換算すると、クラスに一人か二人は必ずいるということ。

彼らの心の成長は、周囲の大人の関わり方によってずいぶん変わってくるのです。この記事では、ADHDの病態生理と、治療法・かかわり方などについて記します。

保育園看護師をしていた時に、研修で学んだことをノートに記していたので、その記録から書き起こしました。

こちらにも一部記しています。

保育園幼稚園の先生、小児系の病棟に勤務する方、自分もそうかも!という方にこの情報が届くとよいなと思います。

ADHDの原因と病態生理

先天性・遺伝的なものが原因であり、すべては生まれつきです。

統計を取ると、父親からの遺伝が25~30%・母親からの遺伝が15~20%であるといわれています。その他は、両親どちらもADHDではないが、先天的なもの。さらに統計をたどると、きょうだいにも同じADHDがあるのは25~35%、一卵性双生児では20~54%がADHDであるといわれています。

病態は脳の側頭葉の機能性変化であり、MRIなどの検査をすると、側頭葉の血流が不良であったり、動きが今一つであるといわれています。

側頭葉は、周囲の空気を読むときに働く部分です。他人の表情を見て「あの人は悲しいのかな」と想像したり、「みんなが静かにしているから、無言でいようかな」と思ったりするところ。

ADHDでは、側頭葉の形や大きさはほかの人と同じなのに、働きが今一つであるということです。ただ、側頭葉の「機能性の変化」は個人差があり、この機能の差が症状の差。軽度から重度まであります。

また、脳内の神経細胞「シナプス」でのドーパミンの働きが低下し、脳内で過去の作業を記憶する尾状核が小さめであることもわかっており、社会性にかかわる脳の働きが全体に低下しているともいわれています。

具体的な症状は?

多動・片づけられない・集団行動が苦手・順番が待てない・喋りすぎ・周囲とのコミュニケーションがとりずらいということがあります。

ADHDは乳児期から顕在しており、保育園の先生などは、1歳児クラスでも「この子はほかの子と違う」と何となく感じます。実際に症状に気づくのは2歳ころであり、2歳の時に多動である子供は、8歳になってもおおむね多動です。

人の気持ちが読めないことが多く、そのため周囲とのコミュニケーションがとりづらく、集団の中でうまくやっていくことが難しくなります。

合併症はどのようなものがある?

「落ち着きのなさ、集団行動ができない、言われていることを理解しにくい」といった症状があることから、子供のころから周囲の大人から強い叱責や虐待を受けているケースがあります。

結果として自尊感情が低くなり、成長に従ってうつ病を発症するケースが目立つのです。また、集団行動がとりづらいことから幼児期から、仲間外れやいじめにあう、勉強についていけずに非行に走るなどの子供もいます。

アメリカでは非行に走る少年少女のADHDの割合は87%。ADHDから反素行行動→素行障害という経路をたどることをADHDのマーチともいわれています。

(ADHDによる障害の程度・家庭環境により出現しうる合併症であり、全ての方がこのようになるわけではありません。)

治療方法はどんなもの?

薬物療法と行動療法です。ADHDの病態は脳内のドーパミンの働きが低下している状態。そこで、多動については、リタリン(※1)を服用することで約90%が軽快します。アメリカでは4歳くらいから服用を開始し、2~3年の服用で多動の症状はほとんど良くなるのです。日本では幼児にリタリンを服用させることに賛否あり、小学生以上から服用するようです。

成長過程において薬物療法に合わせて行動療法を行うことで、ADHDであったことが、ほとんど分からないくらいに成長する子供もいます。

行動療法は心理カウンセラーなどが行います。が、周囲の大人が子供に対して「ADHDが疑わしい」と気づかなければ、カウンセリングにも治療にもつなげることができないのです。

予後はどうなる

軽度であれば、大人になると自然軽快することも多く、日常生活には支障がない方も多くいます。

ただし、重度の方が未治療のまま成長すると、失業・離婚・事故を起こしやすいなどトラブルを起こしたり、周囲の人間とうまくいかなくなったりすることもあるようです。

周囲からの支援

ADHDが疑わしいの子供は、周囲の大人が気付くことが重要。

支援のステップは、気づき→告知→対応という流れです。この時、親が認めないケースも見受けられ、親が認めなければその先のステップへはすすめません。当の子供は自分では何もできないのですから。

気付いたときに周囲は、親を責めずに、一緒に子供を良くしていきましょうという態度を見せることが必要だと思います。親自身が周囲からの親切や愛情を感じることで、態度が変わってくるのではないでしょうか。

親への親切心は、結局は子供の利益にもなると思うのです。


私がこの研修で学んだこと

アメリカの治療法は、子供の就学前に行っています。行動を落ち着かせることで、学校という集団生活の場で子供が困らないようにという、子供のライフステージが考えられている。

一方、日本ではADHDへの理解や知識が不足しています。子供のへのリタリンの投与を慎重にしていたら、子供の治療終了は小学校高学年になってしまいます。一方、親が認めたがらないのは、周囲の偏見なども背景にあるのではないかと感じました。

子供からしたら「生まれつきなんだからどうしようもないじゃない、困らないようにしてよ」っていうのが本当の気持ちなのではないかと思うのです。

もっと心の発達障害についての知識が広まり、「お宅のお子さん、風邪ひいてるみたいですよ。」くらいに、障害への気づきを口にできる世の中になればいいのに、と思いました。

少し理解が深まったよ!という方、良かったらスキを押してください。記事作成の励みになります!


リタリン:脳内のドーパミンを増加させる薬。参考サイト

参考サイト:破壊的行動障害のマーチと共感性及び虐待・放任との関連について

・講義を受けた、小児発達外来で診察されている榊原洋一先生




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