見出し画像

地方と都市をシェアする!地方型サテライトオフィスで実現する新たな関係とは

「NIKKEISHA STARTUP TABLE」では、スタートアップの「1→100」のために、成長期に直面するさまざまな悩みや課題に応えるべく、“社会との対話“の機会を提供しています。

コロナ禍を契機に広まったテレワークにより、「地方型サテライトオフィス」を活用したビジネススタイルが注目されています。地方リソースを企業経営に活かすことで「優秀な人材の確保」「新規顧客の獲得」「従業員満足度の向上」など、スタートアップの成長や躍進にも期待できます。

昨年、「経営の新潮流!地方と都市をシェアする新しいビジネスの考え方」と題して、内閣官房シェアリングエコノミー伝道師である石山アンジュさんと、島根県のサテライトオフィスを活用する株式会社フェズの代表取締役である伊丹順平さん、そのサテライトオフィスを提供する島根県商工労働部企業立地課の酒井洋輝さんをお招きし、「地方と都市をシェアする」という観点から新しい関係性の在り方や実践例についてお話しいただきました。その講座から、ポイントを少しだけご紹介します。

[PR]島根県

■豊かさの変化から求められるシェアリングエコノミー

ウェビナーでは、石山さんから、シェアリングエコノミーが地域の経済・社会システムにもたらす可能性についてお話ししていただきました。

石山様プロフィール

私は3年前から、東京と大分での二拠点生活をしています。なぜ敢えて大分の空港から2時間半もかかるような田舎の地で、築100年の古民家を借り受けて生活しているのかと言いますと、都会の競争的な社会から少し距離を置いてバランスをとりたいとか、自給自足率を自分の中でも高めてみたいと思ったからです。

私の例はあくまでも一例ですが、マクロな視点で見ても、今まさに「豊かさ」に求める価値観が大きく変わろうとしています。

図①

これまでは、社会は成長し続けるものという前提の上で、資源も無限だという認識もあり、大量生産・大量消費を繰り返すことで経済が成長してきました。何も無いところから一生懸命に働いて、マイホームやマイカーを所有することが「豊かさ」の象徴だったと思いますし、大企業や有名ブランドなど大きなものに帰属意識を持っていることが安心のステータスであったと思います。

今や、「豊かさ」というものが改めて見つめ直されています。これからはリスクと共存しなければならない社会を前提として、どのようにして豊かさを追求していくのかが求められています。モノに対する価値基準も、新しい物を手に入れることよりも、その利用価値や体験価値を分かち合うということへと変化しています。より大きな一つのものに帰属するよりも、小さくとも複数のものに帰属するようになっています。AがダメでもBがある、BがダメでもCがある、というように複数の選択肢や帰る居場所があることが、これからの「豊かさ」の基準となっています。

そのような中、都市から地方に求められるものも大きく変化しています。

図②

これまでは、新しい施設や魅力的なサービスが潤沢にあるかどうかが魅力の基準でしたし、インフラが整備され交通の利便性が高いことが快適さの基準でもありました。働き方も、その地域の企業に勤める必要がありましたし、暮らし方としても移住することが必要でした。しかしこれからは、新しいものよりも既にそこにある物や人、コミュニティが重視され、そこに自分が入っていける余白があるかどうかが魅力の基準となってきています。例えば、都会で賃貸マンションに住んでいると、画鋲を1つ刺すにも少し戸惑ってしまいます。しかし、空き家で借りた家を自分の手でリノベーションしていく。いくらでもペンキを塗ることが出来る。そうしたことが、今や「豊かさ」として捉えられたりします。単にサービスを購入して消費するというお客様的な感覚から、この地域に住んで何か手を加えられる、ということが魅力と映るのではないかなと思います。その背景には、働く場所に囚われない働き方が出来るようになったことや、多拠点生活といった暮らし方の変化があります。もちろん、それらを実現するデジタルの利便性というものも重要です。

このように豊かさの基準や地方に求められるものが変わっていく中、管理型・集中型の社会構造から、もっと分散型な社会構造へ転換する必要があると思っています。

必要としている人と持っている人や企業とを無数に繋いでいき、網目のようにいくつもの多様な依存先をつくることで、スキルや余白をフラットに共有・循環させ、共助による持続可能な地域社会へと転換していく。改めて定義しますと、“シェアリングエコノミー”とは、人と企業、スキル・モノ・場所など、あらゆる資産の共同所有や売買、貸し借りができる、または人とのつながりを生み出す社会機能です。

シェアリングは、新たな経済の仕組みとしての「経済的機能」だけでなく、繋がりやコミュニティ、生活の充実度や幸福度にも寄与する「社会的機能」も持つものです。私は料理なら得意です、魚を捌くのが得意です、といったように、あらゆる個人が持つそれぞれの得意分野や経験を繋げていくことで、生き甲斐といったものもまた無数に生み出していくことが出来ます。

■シェアリングシティが地域社会にもたらす可能性

「シェアリングシティ」とは、シェアリングエコノミーを活用して、少子高齢化や人口減少、空き家・空き店舗の増加、子育て・教育環境の不足等といった地域が抱えるさまざまな課題を解決しようとする、地域共助による街づくりの取り組みです。2012年頃から世界中のさまざまな都市で推進されてきました。

私は、この概念を5年前に日本へ持ってきまして、政府と一緒にモデルづくりをしています。現在は132の自治体が何かしらシェアリングエコノミーを活用した事業を行っています。

地域はさまざまな課題を抱えています。人口が減っていくと地域の税収も減少し、公共サービスを維持することが徐々に難しくなってきます。シェアリングエコノミーは、それを補完する一つの方法として期待できます。例えば、バスや電車等の公共交通の採算が合わなくなってきた際に、その補完として、市民同士で送り合うといった代替サービスを導入しましょう、ということも考えられるかもしれません。

雇用という観点でみると、これまでは地域の企業の雇用を増やすか、都会から企業の移転を誘致するという策しかありませんでした。しかし、シェアリングを通じて、地域に居ながら働く人を育成していくことが出来るようになると、可能性は拡がっていきます。

暮らし方という観点では、「関係人口」を増やすことにも貢献します。日本全体の人口が減少する時代では、移住というのはその地域にとっては良いことかもしれませんが、全体でみると人口のシェアを奪い合っていることになりますよね。「関係人口」という考え方は、その地域に完全移住するのではなく、第二の地域として滞在したりもう一つの居場所となる地域を無数に設けたりすることで、交流人口を増やしていくという概念です。シェアリングエコノミーは、関係人口をさらに推進する上で非常に親和性が高いものです。

私も、関係人口に関する政府の審議会の委員をさせていただいていましたが、そこで分かったことは、多くの人が多拠点居住をしたいと思っているけれども、移動に係るコストや第二の拠点として新たに家を借りるコストが課題になっている、ということです。そうした課題に対して、シェアリングのサービスでは、定額で全国100カ所に住み放題というサービスや、企業や自治体同士がお互いの場所を共有し合って全国いろいろなところへ行けるといったサービス、自分が家を空けている時間を他者へ貸し出すことができるサービス等が次々と生まれてきています。また、地域の人材不足とスキルを持つ人とのマッチング等、人を繋げるサービスもあります。

図③

ここまで、シェアリングエコノミーが街づくりにもたらす可能性についてお話してきました。

魅力的な地域づくりをする上で必要なことはやはり、そこに住む市民一人ひとりが市民としてのシビックプライドを持って参画していけるかだと思います。シェアリングによって市民同士がもっと繋がることで、市民参画を促す機会が無数につくられ、市民主導の持続可能な地域社会というものが生まれてくるのだと思います。

「都市から地方へ」として地方に向けたビジネス展開に取り組む上でも、こうした市民参画の在り方が、その地域と企業とを繋げ、その先の地域の経済活性へと繋がっていくのではないかと期待しています。

※シェアリングシティの情報はこちらからもご参照いただけます。
「シェアリングシティ推進協議会」https://sharing-economy.jp/ja/city/council

■都市から地方への関わりを生む二拠点展開

後半では、サテライトオフィスを島根県に展開されている株式会社フェズの伊丹さんに、都市と地方とをシェアする二拠点展開の具体的な活用についてお話ししていただきました。

伊丹様プロフィール

株式会社フェズは、データ分析の力を用いて小売業界をもっと元気にしていきたいという想いから、リテールテックという業態に取り組むベンチャー企業として2015年に創業しました。本社は東京ですが、島根県大田市にサテライトオフィスを展開しています。

なぜ地方へ進出したのかと言いますと、大きな理由は、私たちが掲げているミッションにあります。

私たちはミッションとして、「消費そして地域を元気にする。」を掲げています。小売店舗というものは、私たちが生活する上で必要不可欠なインフラですが、それと同時にその地域に人が存在しないと存続できないものでもあります。小売事業者さま自身もまた、商圏エリアの消費者を元気にすることが自らの重要なミッションであると捉えられています。私たちも小売事業者さまをサポートする企業として、同じミッションを掲げています。この地域を元気にしていくというミッションを体現する一手として、島根県にサテライトオフィスを設け雇用創出に取り組んでいます。

また、今はリモート環境等も整っていますので、東京と同じ仕事が場所を選ばずに出来るということも理由の一つです。

もちろん同じ内容の仕事をするのであれば、賃金も東京と同水準に引き上げないといけないと思っています。一方で、その分の収益もしっかり島根オフィスメンバーで上げていただかなければいけません。東京と同じ仕事をして、且つ収益も東京と同じ形で上げていく、そして、東京と同じ水準の賃金をお支払いする。それによって、大切にしている地元を離れなくても、やりがいと収入を得られるといった、幸福な働き方を一人でも多く実現できるようにするための循環をつくっていきたいと思っています。

では、なぜ島根県なのかというと、手厚いサポートをいただいたことにあります。

特に、大田市長には熱量高く誘致いただきました。もちろん補助金のレベルも高かったこともありますし、県と市が一体となって取り組まれていたところも大きなポイントです。

地方で組織を新たに創り、実際に雇用を生んでいくためには、リーダーとなる一人目を採用できるかどうかが非常に重要です。島根県を選択して良かったと感じたのは、こうした優秀な人材の1号・2号社員となる最初の方々を確保する際に、島根県の方々にも密に連携して取り組んでいただいたところです。最初のリーダーを見つけるまで、県と市の方と一緒に採用イベントを開催させていただいたり、県の採用イベントに参加させていただいたりと、手厚いサポートをいただきました。

人口流出の多い地域に優秀な人材がいるのかといった質問はよくいただきますし、私自身も最初は、東京と同じレベルの仕事が出来るのだろうかという不安がありました。しかし、採用の競争自体が東京とは異なりますので、採用活動にきちんと本気で取り組むと、その分優秀な人材を採用できるのだということを今は実感しています。

立地に関しても、好条件な場所はたくさんあります。地理感覚が無くても、おすすめの立地をご紹介いただけますので、オフィスの環境に関しては特に不安は無いと思います。通信環境も整備され、東京にいるメンバーと島根オフィスのメンバーとのコミュニケーションロスも、ほとんど無い状況です。

私たちは、ITを駆使した難しいビジネスにチャレンジしています。そのような中でも、島根オフィスのメンバーもさまざまな業務を担えるポテンシャルがありますので、東京と同じ業務を遂行し、同水準の賃金で働く、ということも実現していける状況です。

皆さまも思い切って地方でサテライトを展開されても、同じような環境や人材、サポートが得られるかと思います。ぜひチャレンジしていただければと思います。

■地方への拠点展開の具体的なメリット

最後に、島根県商工労働部企業立地課の酒井洋輝さんに、地方にサテライトオフィスを構えるメリットについてお話しいただきました。

皆さんの中には、島根県と聞いてどこ?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。島根県は広島県の北側、日本海に面したところに位置し、海や山といった豊かな自然が身近にある県です。出雲空港へは東京から約1時間30分、大阪の伊丹空港からですと50分の距離にあります。特に、県庁がある松江市は、出雲空港と隣の鳥取県にある米子空港のどちらからも車で約30分程度。2つの空港を使える便利な都市です。陸路でも、首都圏から新幹線と在来線の特急でお越しいただくことができます。首都圏から少し遠い県ですが、アクセスが充実していますので、サテライトオフィスでビジネスを行うには程好い距離感ではないかと思っています。

地方にサテライトオフィスを構えるメリットですが、働く社員の方からすると、通勤時間の節約、満員電車のストレスからの解放等が挙げられます。自由な時間が増えることで、例えば育児や介護の時間もとることができ、ご家族の都合による離職も回避できると思っております。

また、経営側の視点からみますと、時間的な業務の効率化や、先ほど伊丹さんからもお話があったように、大都市圏では競争が激化している人材確保の課題に対して、地方にいる優秀な人材の確保が出来ることもメリットであると思っています。オンとオフの切り替えが明確にできますので、ゆとりある生活環境でワークライフバランスが向上して、結果的に社員の生産性や幸福度もアップすると思っております。

現在、島根県内には、民間で運営されている施設も含めると、30ヵ所以上のサテライトオフィス施設がございます。サテライトオフィス展開を検討してみようかなと思われた方には、こうした施設の情報もご紹介させていただきますので、お気軽にご連絡いただければと思います。

※サテライトオフィス拠点の情報はこちらからもご参照いただけます。
「しまねBizStyle」https://shimane-bizstyle.jp/

島根県では、全国トップクラスの優遇支援制度も用意しています。
新卒やU・Iターンの方の雇用助成で一人あたり約100万円を、フェズ様のように大田市に進出された場合は一人あたり約130万円を交付するといった助成制度となっております。また賃貸物件に入居された場合の家賃補助や、本社との間を県内の空港を利用して往復する場合の運賃の半額助成など、さまざまな助成制度をご用意しています。また、こうした県の助成とは別に、市町村の方でも優遇制度があり併用することが可能です。詳しくお知りになりたい方がいらっしゃいましたら、ご連絡いただければと思います。

“ご縁の国・島根”と言いますが、ご連絡いただきましたら、サテライトオフィスの選定から各種手続き、助成制度や人材確保まで広くサポートさせていただきます。どんなことでもお気軽にお問合せください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?