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【映画感想文】罪の声

Amazonプライムにて。

素晴らしかった。
本当に、見て良かった。
劇場で見なかった事を後悔したけど、でも劇場で見てたら嗚咽や鼻水で周りにご迷惑が掛かってたと思うので、まぁアマプラで助かったのかも。
配信なのに、家なのに、スタッフロールに入っても放心したまましばらく動けなかった。
野木亜紀子さんの脚本だし、星野源さん出てるし、題材も凄く興味あるし見たいなぁとずっと思っていた作品。
想像を超える見応えだった。
以下、原作は読んでいないので映画を見た限りの感想です。

脚本について

原作のある作品なので話の素晴らしさは原作による所かと思うのだけど、脚本として素晴らしいと思うのが台詞の自然さ。
野木さんが書く言葉のやり取りはリアルな人間の"会話"で。説明のためだけに存在している"台詞"が無くて。だから余計なところに気が散らずにその世界の中にストンと入れる。例えて言うなら、Googleマップのストリートビューにドボンする黄色い人みたいに、その世界の中にストンと落とされるようなイメージ。

自分的に一番しんどかったシーンは、大人になった聡一郎くんが自殺を考えていたシーン。
ドラマ「最愛」でもそうだったんだけど、自分が"弟がいる姉"だから、"弟"がしんどい目に遭う展開がなんだかとてもしんどくて。自分の弟とどうしても重ねて見てしまって本当に胸が潰れそうで。さらに私の場合は家庭環境により弟を自分のこどもみたいに感じている部分もあるので、聡一郎くんのお姉ちゃんとお母さんにめちゃくちゃ感情移入してしまって後半は涙でぼろぼろだった。
最後、お母さんと対面するシーン。
『追いてってごめんってそんな事謝る必要ないんだよ、生きててくれた事それだけで涙が溢れるほど本当に嬉しいんだよ。辛いのに公に名乗り出る事がどんなに覚悟がいるか、そうまでして会いに来てくれた事、自分の事気にかけててくれた事、何よりも生きていてくれた事、本当にありがとう』って、そんな言葉が自分の感情として噴き出てきて涙が止まらなかった。
この言葉を、台詞として書いてお母さんに喋らせればもっと"分かりやすい"シーンになったのかもしれない。けど、それを台詞で言われていたら、私はここまで感情揺さぶられて泣いていなかったんじゃないかと思う。
野木さんが書く台詞って、見る方が持っている感情を呼び起こす"呼び水"みたいな感じがする。そして呼び水以上の事はしないでいてくれるから、受け取る方が自分の感情でそれを増幅できる。そういうさじ加減のようなものがすごく心地よくて、大好きな脚本家さん。
軽妙な展開の運びとか会話のキャッチボールの絶妙さとかも大好きだけど、そういうところが一番好きかな。

話について

3人の、闇を背負わされた子どもたち。
お姉ちゃんは、他の2人より少し年上だったせいで、自分がさせられた事の重さを自分だけ分かってしまった。分かってしまったから、何も考えずに言われるまま過ごすことはもうできないし、一生背負う十字架の重さがあまりにも苦しい。
もちろん、まだ何も分からないもっと小さな2人も、親の喜ぶ顔を見たかったり親に褒められたかったり、そんな純粋な動機から読んだかもしれない原稿に人生を踏み躙られるなんて考えただけで胸が苦しくなる。

リアルの世界でも、日々のニュースを見ていると今現在の日本にも確実にそんな闇はあって、その闇の中ではたくさんの子どもたちが何らかの罪に未来を汚され、十字架を背負わされ、夢を砕かれ、自由を奪われているんじゃないか、と、思わざるを得なかった。

あと最後の方、曽根俊也と聡一郎が初対面するシーン。
壮絶な人生を語る聡一郎に、あなたの人生はどうだったかと訊かれる俊也。
きっとこの時、俊也の人生がどんな人生であれ聡一郎は動じなかっただろうなと私は思う。
もはや達観しているというか、自分と似た境遇であったとしても傷を舐め合うような関係は望まないだろうし、まっとうな人生であればそれはそれで自分の希望になるというか。
お互いにお互いを、もう一つの道を歩んだもう1人の自分だと思っているような印象を受けた。

演技について

まず星野源さんの、淡々とした喋りの中にいろんな感情が波になって現れる感じがとても好き。
そしてお姉ちゃん(望ちゃん)役の原菜乃華ちゃんの演技がとても良かった。最後、公衆電話で夢を諦めたく無いと叫ぶ姿が、思い出しただけで涙がにじむ。
他にも実力派揃いで大変な見応えだった。

ああ、いい映画見たなぁ。

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