ドラマ【アンナチュラル】感想|「可哀想」が意味するもの
アンナチュラル・MIU404から繋がる映画『ラストマイル』に備えて、アンナチュラルを見返した。
当時もすごく衝撃を受けた大好きなドラマ。やっぱり凄すぎるアンナチュラル。
最終回感想
『可哀想』
『同情する』
一見優しさのように見えるこの言葉は、「自分にはその不幸は襲いかからない」という根拠のない自信を持った人が、安全圏からこちらを見て発する言葉のように私は感じている(もちろん例外はあるけれど)。
その感覚はきっと、可哀想、と言われる側になった事のある人になら伝わる気がする。
寄り添うではなく、こちら側とあちら側を分ける言葉。
きっとミコトも中堂さんも、高瀬も、人生の中で幾度となくあちら側の人たちから言われてきたのであろう。
その憤りがわかるからこその最後のミコトの言葉。
「ただ、同情はしてしまいます。この可哀想な被告人に」「あなたの孤独に、心から同情します」
高瀬が一番言われたくないであろう言葉をぶつける。
きっと彼にとってその言葉は何よりもの否定で、何よりもの屈辱。
強烈だ。
こちら側やあちら側などというのは、本来はどこにも無いはずの境界。
可哀想と同情した相手と同じ環境に、明日の自分もなるかもしれない。
「人なんてどいつもこいつも切り開いて皮を剥げばただの肉の塊だ」
という中堂さんの言葉は真理だ。
可哀想な人なんていない。
みんなただ、運命に飲み込まれても抗って一生懸命に生きているだけ。
それを知っているミコトは、同情なんてしない、という言葉を何度か発している。
中堂さんの事件を一緒に解決しようと提案するときも、「同情なんてしない」と言った。
そう言えるミコトだからこそ、中堂さんも自分の心の中をミコトに見せることができたんじゃないか。
ほんとに野木さんの脚本は凄い。
1話〜9話 好きなところの羅列
1話
「そんな気分じゃないから、食べるんです」
このドラマは『生きる』を『食べる』で表現してる。そこがとても好き。生きることは食べること。
「あたしの服どうでもいいから!」←かわいい☺️
2話
「あのー…その言い方、やめませんか?無理心中なんていうの日本だけです」
(冷凍車の中で)「明日の夜あいてる?なんっでも奢る」「明日?」「明日」「明日何食べよっかなぁ」
「絶望してる暇あったら、美味いもの食べて寝るかな」
3話
「気の弱い人や声が小さい人が損しちゃう世の中なのよねえ」
「ふざけるな、女は信用できねえだとかお前がクソ小せえこと言ってるから俺は駆り出されたんだ」
まあそう感情的にならないで、で少し胸がスッとしたけど、あの夫が中堂さんにお礼言って頭下げた時に「見解はミコトと全く同じなのに結局"男性だから"上手く行ったかのようじゃないか」と思ったところで男性である中堂さんからこの言葉が吐き捨てられるのが、ジェンダー差別の芯の部分をちゃんと抉っててさすがと思った。
4話
「プライドならあんたよりある、商品に愛情だってある、だけどねえ、人を死なせてまでやることなのか」
「いろんな話きけた。会社でのお父さんのこと。…楽しかった」←😭ああああーー
5話
「(絵本を)知らないだろう、マイナーだからな」
中堂さん、なんて柔らかな表情するんだ🥲ゆきこさんは中堂さんにとって、本当に好きで大切な人なんだ。
「法医学者として、何かできることがあれば」
法医学者として、というのが絶妙。何かできることがあれば、だけの場合は少し同情のようなニュアンスも感じるけど、法医学者として、と言い直したことで対等な場所から語りかけてる感じがする。
「殺すやつは殺される覚悟をするべきだ」
「さっさと解決して、永遠の問いに決着つけましょうよ、同情なんてしない、絶対に」
6話
(最後の「飲み行く?」「行く!」からの)「友達じゃありません」「ただの同僚です」「そう、ただの同僚」「ねえ」→目を合わせてたまらず笑い合う→六郎の「わっかんねえなぁ」の表情
同僚ってほんとに不思議な関係だよなぁと思う😌この微妙なニュアンスがほんとうに上手い。
7話
「ここまでが、法医学的見解。ここからは、法医学者ではなく、私個人の見解として話をします。」
「法律では裁けない、いじめという名の殺人。」
「あなたが命を差し出しても、あなたの痛みは決して彼らに届かない。
あなたの人生は、あなたのものだよ。」
「許されるように、生きろ。」
8話
「帰ってくればよかったのに。毎年待っちょったにね」←😭
「ロープは、私が教えました。覚えとったんやなぁ」←😭
ご両親、三郎さんが笑顔で写る写真みて本当に嬉しかったろうなあ。息子さんがみんなに愛されて幸せに生きていた証拠だものね。
からの、「生きてるうちしか話せないんだよね」からの六郎と父の対話からの「二度とうちの敷居を跨ぐな」←!!、からの「美代子さん…帰れてよかったね…」からの、ラボのみんなの「おかえり」←😭😭😭あああーーー😭六郎そりゃ感情めちゃくちゃになるよね、からの週刊ジャーナルの流れ、野木さん鬼か😭
9話
「寂しい人生でも、最後ぐらい花になったっていいじゃない」→(映像)最後があのスクラップ場、「あったかくていい匂いのする場所で」→(映像)冷たい金属の解剖台の上、の対比が辛すぎる😭😭😭
回想でのゆきこさんの逆プロポーズを受けての中堂さんの笑顔…!!!😭解剖後に声をころして泣き崩れる中堂さん…!!!😭😭😭あああーーーあああーーー号泣
さいごに
最終話の最後の六郎の言葉、「法医学者は未来のための仕事」。
1話がちゃんと最終話に活きてくるの、好きだなぁ。
あと野木さんの脚本は、会話がすごく生き生きしてる。生の人間の会話がそこにある感じ。
だから、物語がリアルで自分のすぐそばで起きている出来事のような感覚がある。
アンナチュラル、本当に凄いドラマだ。
次はMIU404を見返す。
・
関連note
野木さん脚本の映画『罪の声』感想文
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?