褒められた時の返しは 『ファッション ファッショ』山田詠美・ピーコ(対談 2003)

この本を初めて読んだのは、中学生の頃だった。
以来、服を選ぶ時に、「靴の色と脚の色を合わせなさい」というピーコのアドバイスを思い出してしまうことがある。

なぜか、数年おきに繰り返し読んでいる。

多分、山田詠美とピーコの掛け合いがおもしろいからだと思う。
くすくす笑えるおかしさはもちろんだけど、会話術というか、返しの上手さに、なるほどと思う。
たとえば、山田詠美の時計をピーコが褒めるくだり。

ピーコ「今日の格好に似合ってるよね」
詠美「ありがとう。ピーコさんは、時計してないね」

他人から褒められてうれしい時の反応って、難しい。
謙遜するのは嫌だ。いいねと言われているのに、まるで、急いで帳消しにしようとしているみたいだ。素直に受け取りたい。
かといって、「ありがとう」だけでは、そこで話が終わる。
どうしたら褒められ上手になれるのか?と思っていたけれど、山田詠美のように、相手に注意を向ければいいのかもしれない。

とても軽妙なので、しゃべった内容そのままではなく、かなり手を入れているのだとは思う。
でも、おかげで読み物としておもしろい。

ファッションに関しては、「頭を使いなさい」というのが2人に共通する意見みたいだ。
山田詠美が、「合う、合わないを"自分で決める"ことが大切なんだよね」と言っているように、流行に飛びついたりブランドを崇めたりするのではなく、自分のスタイルを探すこと。
それは一朝一夕に手に入るものではなくて、客観的に自分を観察しながら考えていくもの。
そう思うと、ファッションって知的だ。

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