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2種類の死とウェッジソールの生命力 『ザ・メキシカン』ゴア・ヴァービンスキー(映画 2001)

死の分類。

3人ほど、あっけなく死ぬ人物がいる。
伝説のピストルの一時的な所有者、ベック。
サマンサの監視役、リロイ。
リロイと恋に落ちそうになっていた、フランク。

ベックの死は、ストーリーを進展させる歯車だ。これが、主人公ジェリーの遭遇する最初の災難。ベックは登場後まもなく事故死する脇役で、感情移入する要素がない。
それに対し、リロイとフランクの場合は、あっさりした描写にも関わらず喪失感を引き起こす。なぜなら、それまでのストーリーにおいて、リロイの人間性が描かれているから。

ジェリー(ブラッド・ピット)は、犯罪組織の命令で、伝説のピストル「メキシカン」を手に入れるためメキシコに向かう。ところが、トラブルに巻き込まれ右往左往。一方、彼の恋人サマンサ(ジュリア・ロバーツ)は、彼が役目を果たすまでの人質として誘拐される。

この映画のバランスのよさは、ジェリーとサマンサの役割分担によるものだと思う。
ジェリーはダメ男で、道連れの犬とともに、コメディ要素を担当している。一方、サマンサは感情的な面もあるが、愛情深く、ここぞという時に勇気を見せる。ピストルをめぐるドラマを締めくくるのは彼女。

衣装を見ていても、ジュリア・ロバーツのほうが主人公のように思えてくる。
たとえば、ピンクのインナーにオレンジのカーディガン、ライムグリーンのパンツという組み合わせ。砂漠や石造りの街など、色味の限られた画面において、サマンサの個性を印象付ける。
そして、足元。映画の中で彼女が履いているのは、ウェッジソールサンダル。底が黒色のものと、ジュート素材のものの2足。スニーカーでもピンヒールでもなく、存在感のあるウェッジソールというのがいい。これもサマンサの強さにぴったりだと思う。

そういえば、『ハモン・ハモン』のペネロペ・クルスも、ウェッジソールのエスパドリーユを履いていた。やはり、生命力の強い女性の役だった。

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