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性別にこだわる言語の、性別のない「わたし」

スペイン人の同僚と車に乗っていた。彼は日本語が流暢で、私たちは日本語で話していた。
途中、運転手が会話に入ってきて、スペイン語で、「”わたし”って”yo”だよね?」と言った。
Así es, muy bien! そうだよ、うまいじゃん。私たちは話を続けた。
ただ、私の頭の中でなにかが引っかかっていた。
後から思い返してみて、「yo(一人称単数・主格代名詞。英語の”I”に当たる)に対応する日本語は、”わたし”以外にもある」と思った。
僕、おれ、あたし……。話し手によって、いろいろだ。

ここで私が気になっているのは、日本語ではなくスペイン語のほう。
スペイン語はほぼすべての名詞が女性・男性名詞のいずれかに分類され、形容詞は修飾対象に合わせて性変化する。
でも、一人称は”yo”だけ。男女の区別はなし。二人称単数も同じで、”tu”と”usted”のみ(後者は丁寧な表現)。でも、三人称になると、”ella”または"él"があり、その人物や物(男性名詞or女性名詞)の性別によって決まる。一人称・二人称の複数形も同様に性変化する。
性別にこだわる言語なのに、一人称・二人称の代名詞には性変化がない。(もちろん、その代名詞を修飾する語は性変化するけれど。)
どうしてだろう?

タイトル画像は旧市街にて。マヨール広場への道。

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