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世界最速の美術館?現美新幹線

異次元空間は、世界のヘンテコを追う同人誌「異次元空間」のオンライン版で、風変わりな場所と構造物の紹介がメインです。

近年、考えさせる展示を狙った現代アートが脚光を浴びつつあるが、新潟には走る車両の中で現代美術を鑑賞できる新幹線があるという。

今回の異次元空間では、世界最速芸術鑑賞を謳う現美新幹線を紹介する。

越後湯沢駅には記念撮影用のパネルが置かれていた。現美新幹線はここ、越後湯沢から新潟までの間を一日に何度か往復している。

越後湯沢駅に停車する現美新幹線。他の新幹線にはない塗装が目を引く。

世界最速の芸術鑑賞 「GENBI SHINKANSEN(現美新幹線)」
各車両に注目のアーティストがこの列車のために制作した現代アートが展示されている他、「romi-unie」のいがらしろみ氏が監修した地元の素材にこだわったスイーツと燕三条で人気の「ツバメコーヒー」監修のコーヒーなどを提供するカフェ、現代アートに直接触れることができるキッズルームがあり、沿線に広がる車窓とともに、様々な魅力を発見できます。
JR東日本新潟支社ウェブサイトより

外観には長岡の花火があしらわれている。空に咲いては一瞬で消える花火もある種の現代アートといえば現代アートなのかもしれない。実際に花火を用いた現代美術家としては蔡國強氏が存在している。

余談ながら、弊同人サークル「にしきかむろ」の名前は花火の種類「錦冠(にしきかむろ)」に由来している。

現美新幹線のロゴと名前が黒い車体にレタリングされている。黒い新幹線というのも珍しい。

現美新幹線は6両編成で、それぞれが違ったコンセプトの車両となっている。指定席は11号車のみで、他の5両は自由席である。

松本尚氏がデザインした11号車は光をテーマにした内装になっている。

一面に鏡があしらわれた小牟田悠介氏デザインの12号車は、窓の外が鏡で映り込むようになっている現代アートらしい作品だ。

13号車はカフェスペースがある。カラフルなアートワークは新潟の風景と歴史をテーマにした古武家賢太郎氏による作品である。

同じく13号車にはキッズスペースがあり、プラレールで遊べるようになっていた。内装はparamodel アートユニットによるもの。壁にも床にもプラレールのような模様が描かれている。

14号車は、パキスタンにある世界2位の高さを誇る山・K2の石川直樹氏により撮影された写真群を展示している。

全体に新潟をテーマにした作品が多い中で、K2の写真は新鮮である。

15号車は空中に吊るした花が重なるような作品が展示されている。荒神明香氏は各地でこのようなインスタレーションを手掛けているが、現美新幹線においては車両の揺れによってゆらゆら動く面白みがある。

16号車は新潟の里山をテーマにしたAKI INOMATA氏の映像作品が展示されていた。雪の中を歩くヤドカリの映像が印象的である。

越後湯沢から各駅に停車する現美新幹線は新潟までの所要時間は50分なので、カフェスペースの13号車を除いた各車両を10分ごとに見ていくとちょうどいいのかもしれない。

今年で5年目を迎えた現美新幹線だったが、既に年末での運転終了が決まっている。

また、E4系は2021年3月に、E2系は2023年の引退が決まっており、今後上越新幹線の車両はE7系に統一される。終着の新潟駅では、引退を控えた3系式の並びがみられた。

ユニークな試みとして話題になった乗ってたのしい列車現美新幹線。旅と移動の新しい楽しみ方を提案したという意味では、印象に残る存在だったといえるだろう。

日本にはまだ見ぬ不思議な光景があるものだ。

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