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乗り心地の悪さ日本一?須磨浦山上遊園のカーレーター

異次元空間は、世界のヘンテコを追う同人誌「異次元空間」のオンライン版で、風変わりな場所と構造物の紹介がメインです。

みなさんはカーレーターなる乗り物があるのをご存知であろうか。

エスカレーターではない。エレベーターでもない。はたまたモノレールでもない、そんな不思議な乗り物が世界にたった一つ、兵庫県の須磨浦山上遊園にはある。

今回の異次元空間では、須磨浦山上遊園のカーレーターを紹介する。

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須磨浦山上遊園のパンフレットには画像のように説明が掲載されている。長さは91 m、勾配は25 °と、それなりの規模がある乗り物のようだ。テレビでお馴染!!と強調されていることから、テレビではたびたび紹介されているのかもしれない。

カーレーターはロープウェイ山上駅と回転展望閣を結んで、昭和41年3月に開通いたしました。
その姿も当時のままで、「乗り心地の悪さ」が評判です。
「いもむし」に乗った感じをお楽しみください。
なお、振動がありますので、体調の優れないお客さま、また、妊婦の方は平行してあるハイキングコースをご利用ください。
須磨浦山上遊園ウェブサイトより

体調の優れないお客様にハイキングコースを薦める乗り物とは一体。

カーレーターは「カー(車)」とエスカレーターの「レーター」を合わせた造語とのこと。

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山陽電車の須磨浦公園駅からロープウェイで上がった先にカーレーター乗り場が存在している。カーレーターは片道200円、往復350円という絶妙の価格設定である。なお、ロープウェイ・観光リフト・回転展望閣入場料と合わせた往復割引回遊券が割安である。

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乗り場は折返し部に沿って円形になっており、入口と出口は柵によって分けられている。

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きっぷを提示して乗車する。25 °の傾斜は水平部から見るとなかなかのものである。

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下部を見ても構造がよく分からない。かご自体はくぼみによって支持されているのだろうか。

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かごはサイドバイサイドの二人乗り。乗降部は自動で開閉する。

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かごは水平を保つようにできており。斜面部はベルトコンベアによってかごが昇降する。写真がぶれている通り、ガタガタと強い振動に見舞われる。

早速、緑色の大きなかご(ゴンドラ)に乗り込む。背もたれと椅子にクッションが付いているが、乗り心地をまったくアップさせてくれない。10秒もしないうちに激しい縦揺れが起こる。思わず手に持っていたカメラを落としそうになった。10秒ほどで収まり、その後は「ガタッガタッ」と小刻みに揺れながら25度の斜面を登っていく。左手には明石海峡大橋や淡路島を望む絶景が広がる。
 なぜ激しい揺れが起きるのか-。同園の森秀幸支配人(63)によると、平面の乗り場と、斜面のベルトコンベヤーの間をつなぐ数メートルの部分に敷かれているゴム車輪が原因。乗り継ぐために複数の車輪が縦に並んでおり、その上を通過すると大きく振動するという。
 開通時は44台のゴンドラが狭い間隔で運行しており、その姿と乗り心地から“いもむし”と称された。ただ、老朽化などで現在は18台で運行。もともと国内に2カ所しかなかったが、75年にサンケイバレイ(現びわ湖バレイ)のカーレーターが廃止されて以降、日本で唯一の乗り物となり、年間約12万人が利用する。
 森さんは「昭和のレトロ感あふれる乗り物。懐かしさを感じながら乗ってもらえたら」と話した。
神戸新聞社 M'S KOBEより

文中にも出ているびわ湖バレイ(旧サンケイバレイ)のカーレーターは全長2.0 kmで途中にトンネルが3箇所もあったという。乗車時間は23 分間にも及んだのこと。

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終点は回転展望閣である。なお、カーレーターを使わずに階段で来ることもできるので、片道だけカーレーターにしてみるのもいいかもしれない。

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下りのかごから下側を眺める。心理的に登るよりも下るほうがスリルあるように感じた。

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全線をシェルターで覆う必要があること、ベルトコンベアのメンテナンスが大変であることを考えれば、普及しなかったのも納得できる。

なお、須磨浦山上遊園ではカーレーターの乗り心地の悪さを適度に保つために維持管理しているという。そういった意味では乗り物というよりもアトラクション的側面が大きい。

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カーレーターのりばに戻ってきた。カーレーターは常時稼働しているわけではなく、誰も乗っていないときには停止しているようだった。

(2021/10/29追記:搬器は下部の台車で支持・ガイドされているようだ)

スタッフの苦心によって半世紀以上も維持・稼働している昭和レトロな乗り物カーレーター。近くに行かれた際は乗ってみてはどうだろうか。

日本にはまだ見ぬ不思議な光景があるものだ。

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