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理想の家②−耐久性

大金をはたいて家を建てるのであるから、なるべく長持ちして欲しい。よく日本の住居の寿命は30年・・という言説を見かけるが、実際はどうなのだろうか、改善策はあるのだろうか、ということを研究した。

日本の寿命は約30年の嘘と真

この約30年という数字は、実際には「解体される家屋の築年数」を意味するようだ。つまり、もう使えないから壊すだけでなく、まだ使えるけど壊すという事例も含んでいる。むしろ、後者の事例の方が多いかもしれない。断熱性などの機能が古くなってきたから壊す、リフォームにお金がかかるから壊す、といった事例をよく目にする。

しかし、欧州の100年以上経っていて、今なお使われている住宅も、当初は断熱材など使われていない、電気設備も入っていない建物ばかりだ。そんな歴史のある建物を、外観を損なわないように断熱リフォームをしたり、電気設備を設置するためのインフラを通したり、手間と知恵と金をかけて住み継いでいくのが欧州流のようだ。

我々、日本人は手間と金をかける価値のある住宅に住んでいないこと、あるいは知恵を持たないことによって、住宅寿命を縮めているのではないかと思う。ただ、イギリスやフランスの住宅は戦争で焼け野原になっておらず、歴史のある建物が多く残っている一方、日本の都市部は多くが一度焼け野原にされており、手間と金をかけた立派な戦前の建物の多くは失われた。また、戦後は、住宅不足を解消するべく、質より量を重視し、住宅を作ってきた歴史を念頭におかないとフェアではないと思う。

耐久性のある建物とは

そんな日本でも、長期優良住宅という概念が出てきて、量から質への転換が叫ばれるようになった。長く愛される住宅に必要な条件は、短期的な性能や機能ではなく、

・点検・メンテナンスをしやすいこと
・経年劣化する部材を構造に用いないこと
・愛着の持てる素材を使うこと

が必要だと思う。

現代の通気工法は事実上、壁内の点検・メンテナンスが出来ない。また各社の主張もそれぞれあるものの、集成材や合板、構造金物は100年スパンで見たところ、経年劣化しない(少ない)という実績がない。気密シートや透湿防水シートはどうだろうか。

愛着についてはどうだろうか。我が実家では、突板の表面が剥がれた内側のベニヤ、汚らしさしか感じない30年もののビニルクロスが目につく。とある建築家の言葉であるが、「”このプラスチック、良い風合いが出てきましたね”とはならない」のである。経年劣化ではなく、経年変化する素材―無垢の木、石、土など―を丁寧に使っていくことが愛着につながると思う。(愛着については人それぞれ感覚が異なるところだろう)

耐久面で理想の家とは?

さて、自分なりの結論。

100年、200年残り、子々孫々財産として残り得るという観点から行くと、以下の要素が必要であると考える。

・土台(基礎上の横木材)を用いず、石場建てにすること
・構造材には高品質な無垢の木を用いること
・内外真壁で木材が露出していること
・経年劣化する建材(ビニールや金物)を奥に用いないこと
・愛着を持てる素材を用いること(私の場合は木・土・石)

これらをストイックに実践していくと、性能面で支障が出たり、予算面で支障が出たりするかもしれない。0か1の世界ではないため、出来る出来ないを取捨選択していきたい。以下、それぞれの項目について説明する。

石場建てとは、横引きの土台を用いず、礎石の上に柱を置く構法のことである。下の写真の参照元のサイトにて詳しく説明がされているので、興味のある方は読んでほしい。価格やデザイン上の制約などデメリットもあるが、耐久性を考えたときに一番実現したい構法である。

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(写真は綾部工務店様より)

構造材に高品質な無垢の木を使うことについて。
無垢材ではなく集成材や合板でも良いかもしれない。昔の集成材や合板は耐久性がなかったようであるが、最近は各社とも長期的な使用に耐えるという宣伝をしている。ここは宗教論争の領域とも言えるので、各自、自身の信仰に従って決めてほしい。100年経てば結果が出るだろう。

内外真壁について。
構造体があらわになった真壁が耐久・保守性の両面で優れていることに異論を唱える人はいないだろう。問題は、断熱性や気密性能、防水性能に難があることだ。内外どちらかを大壁仕様にすることで妥協する道も大いにある。

経年劣化する素材を奥に用いないこと、について。
構造用の金物、気密テープ、気密シート、透湿防水シート、アスファルトルーフィングなどなど。これらはなるべく用いたくない。ただ、各社耐久性を謳っているので、集成材や合板と同じくメーカーを信じる人は使えば良いと思うし、また、手の届かないところで劣化していても、最初の数十年機能してくれれば良いという考えもある。これらもどこまで使うか、あるいは使わないか、頭を悩ませる問題である。

価格のこと

耐久性を追求していくと、建築費がどんどん跳ね上がる。単価はどうしても上がってしまうので、総工事費を減らすために建物のサイズを小さく考えることが必要となるかもしれない。余分な物を持たない暮らし、ひと手間かかるが空間を二重三重に活用できる暮らし、などなど、日本の伝統的な暮らし方にそのヒントがあるかもしれない。

私の場合は、30年毎に安価な家を建てるより、100年以上使える高価な家を建てたほうが良いと考えた。また、居住面積をなるべく絞り、残りの部分も事業兼用とすることで、実質的な居住費を圧縮する方向で考えている。

番外編。コンクリート造について。

コンクリートに住むイメージが持てなかったため、検討していない。コンクリートは100年持つのだろうか?コンクリートは優れた素材なので、経年劣化にも強いのであれば、RC造で家を建てるのが早いかもしれない。ただ、製造時のCo2の排出や解体時の廃棄にまつわる問題はあるので、地球環境に関心がある方は一定の配慮が必要だろう。


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