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稟議書に困惑したが、すぐれた経営者から経営の原理原則を学ばせてもらった

企業運営には、稟議書、あるいは決裁申請書とよばれる書類があり、大手企業から中小企業まで、日本では多くの企業が予算の使用を決定する際に「稟議書」を使って社内稟議で承認を得ることで多くの施策を実行しています。

私の場合、新入社員で入社した企業では稟議書を使用していませんでしたから、ソニー子会社に入社して「稟議書」に困惑しました。
どのように稟議書を書くかも知りませんでしたが、上司の言われるままに稟議書を書いていましたが、面倒なうえに、私が苦手な手書きでした。
さらに間違えば、訂正ができませんでしたから、再度書き直しです。
慣れれば、なんのことはないのですが、当初は地獄でした。
ソニーの場合、稟議書の書き方自体は、箇条書きですから覚えてしまえば簡単です。
資料が必要な場合は、別途添付(A4で1枚以内)するだけです。

稟議では、何段階かのプロセスや複数の承認者からの承認が必要であるため、よく「非効率な日本型のプロセス」とも言われますが、稟議書は、現場の従業員が自身が考えた提案や計画を、しっかりとまとめて承認者や決裁者に届ける過程で現場の意見を伝えることができます。
私のような挑戦タイプには格好の手段でした。
事業計画の作成と同時に、稟議書を書きまくっていました。
そして承認されれば、即実行、そして厳しいレビューが待っていますが、やりたいことができた仕組みのひとつです。

企業の中で「誰が何を決める権限を持っているか」「誰に申請すれば決裁が得られる」といった意思決定プロセスが明確になっていることで、権限や責任の所在が明確となります。
権限や責任の所在が明確になれば、何かのアイデアや意見、あるいは提案があるような場合に社内的な共有ができます。

また、自分自身で目的や計画を考えることで、施策やプロジェクトへの当事者意識が高まります。
稟議書の作成過程や提出までの過程で、その意思や意見を伝えることもできるため、経営職などへ現場の声を届けることができます。
勿論、課題がないわけではありませんが、権限委譲された組織ではなかなか有効は機能です。
稟議は、決裁(稟議)権限規程に基づいて必要な事項、特に投資をおこなったり、契約を締結したりということを組織単位、責任者単位でおこなっています。

そもそも会社は、他人からお金を出して(出資)もらって運営しています。
それをいいことに、勝手にお金を使用されたのでは、株主(お金を出した人)はたまらないでしょう。
ちゃんと社内のルールにのっとって仕事をしているのか、ということを確認する機能が必要になります。

稟議書は、書面として記録として残しておくため、後日、監査部門などのチェックがはいった場合でも仕事の流れと責任の所在が明確になります。
間違った判断などがあれば、稟議書の内容から指摘を受けますが、業務改善をおこない仕事のレベルアップと資金の効率的な運用、組織機能の健全性を確保するなど相当幅広い役割を担っています。

ちなみにソニー子会社時代は、紙ベースだったので手書きで起案していましから、管理する総務部門においては保管管理の事務作業が結構大変でした。
転職したある企業では、基幹システムをペーパーレス化して構築したので、そのため稟議の起案も実にシンプルで、またシステム上で稟議書を保管管理するための総務部門における事務作業がまったく必要ありません。

この企業の創業経営者は若い方でしたが、理系出身ということもあって、業務改善(省力化)は徹底していました。
経営者自身、パソコンにプリンタドライバを入れておらず、自ら紙に出すことはできない、と話していました。
経営者自身が、やればできる見本でした。
2004年ごろには、会議資料もデータだけで紙は一切使用しませんでした。

株式公開のための経営管理支援システムの導入と構築をさせてもらいましたが、この点だけに限れば、ソニー子会社で経験した以上でした。
投資の判断がはやく、システムを導入する意味、いわゆる全体概念をもっておられ、システム導入に対する課題の共有ができ、しかもすぐに投資の判断をしてもらえますから、稟議書を書くことが楽しくしてしょうがなかったことを思いだします。
システム導入後は、海外出張中や夜間であっても、即決が必要な承認ならば時間に関係なくされていました。
私にとって、創業経営者の凄みや決断力、そしてスピードを本当に勉強させてもらった方でした。
やればできるを見事に実行されていた経営者でした。

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