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映画を教材にしたプログラム設計の裏側

アート、音楽など、作品を軸としたアウトリーチプログラムは数多く存在していますが、中高生ってなかなか対象として巻き込み辛い層なのではないでしょうか?小学生より知識量も多く、情報を自ら結びつける力もあり、意見も形成できる、けれど感受性はまだまだ柔軟な彼らとの学びの場は、常に刺激的で、はっとさせられる視点に溢れています。

今回のnoteでは、株式会社テレビマンユニオン様と共同で実施した対話型映画鑑賞プログラムのプロセスを紹介していこうと思います。

ことの始まり

昨年21年12月。師走だね〜と締め作業に入っていたチームに、映画「プリテンダーズ」のアシスタントプロデューサーである鈴木悠太さんから、「プリテンダーズ」の特別上映をセットに学園の生徒を対象に体験型のプログラムを実施できないか、との依頼が舞い込んできました。

絶対おもしろいな。と直感し、早速ミーティングをセットさせて頂きました。「プリテンダーズ」は、主人公達の女子高校生達が、生きづらさや、表現することへの葛藤、SNSとの付き合い方などと対峙していく物語が、ずば抜けた演技力で生々しく描かれています。制作チームとしても、ますます混沌としていく現代の中、生徒達にとって、この映画を通してさまざまな社会の実相に触れることができ、議論や発想を促せるのではないかと考え至ったそうです。ありがたや。

告知資料

まず前提として、私たちのチームで実施するプログラムは「応募制」となっています。世間一般的なイベントにあるような所謂「告知」を学園生徒(および保護者)向けに配信し、興味関心を持った生徒達が応募フォームを通して参加してくれる、という流れです。2万人以上の中高生に一斉配信される資料となるのですが、中身を見るか見ないかは表紙とタイトルにかかっているので、毎度デザインの素人達が工夫してがんばっている、というリアリティがあります。

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参加が決まった生徒達はslackチャンネル(場合によってはワークスペース)へ招待され、当日の連絡案内や担当者とのやりとりが開始します。

やったこと1:対面で鑑賞

今回は「映画鑑賞」+「監督や制作チームによる映画製作という仕事の話」+「全体での対話」の3セットを含む内容で、応募枠を「対面参加」と「オンライン参加」として2つ用意しました。

そう、対面したのです!ロケハンは鈴木さん担当のもと、映画の舞台である渋谷の映画館を貸し切り、少人数でのリアル映画鑑賞の機会を設けました。コロナ禍ということもあり、鑑賞後の感想はそれぞれの手元で付箋に書き出し、ロビーのポスターに貼って帰宅、というシンプルな1日目となりましたが、なんと当日は熊坂出監督もお越しいただき、会場の外では生徒達が直接監督に感想を伝えている姿もありました。

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やったこと2:オンラインで鑑賞

対面での鑑賞に参加できた生徒はやはり関東圏出身が多かったのですが、学園全体の生徒達は全国各地に点在しており、今回も「オンライン参加」の生徒が大多数となりました。渋谷から何キロも離れた街の高校生へが抱く作品への感想と、渋谷で日常的に遊ぶ高校生の抱く感想が同時に拾える、という面では制作者としても関心を寄せる点でもあったようです。

生徒達へは公開に制限時間とパスワードを設定した観賞用のVimeo URLをSlackで共有し、各々のタイミングで観てもらうという形式です。【ネタバレ注意】の感想共有スレッドを立てて、観終わった人から任意で感想を聞かせてもらいました。

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やったこと3:監督やプロデューサーのお話を聞く

2日目、作品を鑑賞後に今度は全員オンラインで集合しました。

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進行はgoogle slideで作成するスライドを画面共有しながら進めます。(↓当日使ったスライドの一部)

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普段聞くことのない映画監督の仕事や製作の裏話から、作品に対する疑問に至るまで、話を伺いながらもzoomのチャットでは「知らなかった」「まじか」「わかる」などのコメントが行き交います。進行役は適宜そのコメントなどを拾いつつ、トークを拡げるDJです。

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一方的に話を聞くだけではなく、チャットが同時に動くことで生まれる臨場感は魅力的な演出要素だと考えています。ただ運営側としては画面の管理が大変で、最低でもモニターは2つ用意して、zoomのメイン画面で全体の様子を伺い、進行用のスライドをタイミングに合わせて切り替え、チャットを拾いつつ、slackではスタッフ間の実況スレッドを立てて裏でやり取りをしながら進め、時折飛んでくる生徒からのメッセージにも対応する、ということをしています。本当にチームワークが大事です。めちゃくちゃ脳みそ使うので、私はいつもチョコレートを用意しています。

やったこと4:グループでの対話

プログラムの最後はグループでの対話です。ダイアローグ。そこで使うのがブレークアウトルーム機能です。生徒達にはプログラムの開始のタイミングで表示名を変えてもらい、1日目に対面参加した生徒には「A_名前」オンラインで視聴した生徒には「B_名前」というように設定してもらうことで、前半のトークの進行中に、1日目に対面で参加した生徒達は同じグループになるよう、ブレークアウトルームの部屋をテクニカルチームが用意します。(今回はもし何かトラブルがあった時に備えて駆けこめる「staff room」も用意しました)

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グループ内での対話のテーマは「映画の感想など」として、自由に話す場としました。TA(Teaching Assistan)達が各自2部屋を出入りして、進行のサポートをしてくれました(【問いのリスト】を軽く用意しておきました!)。

まとめ

以上が表面的なプログラム実施までの流れになりますが、水面下ではテレビマンユニオン様とのミーティング、企画書の作成、契約書の締結、予算の確定、スタッフ間での事前ミーティング、応募してきてくれた生徒達との連絡、プログラム実施後の報告書作成やプロモーション活動なども行います。

まるでイベント屋さんのようですが、枠にとらわれない学びの場を創出できることが、体験学習の面白さ。今回のプログラムも、新たな設計フォーマットとして今後も反復していければと考えていますので、映画、映像、演劇、ミュージカル、なんでも、ご提案があればご連絡お待ちしております!!


最後に、今回ご協力いただいたテレビマンユニオン様、学園TAのみなさん、職員のみなさん、そして参加してくれた全ての生徒さん達に、心からお礼申し上げます。