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【最新版】検証!指標で導く「独立リーグ→NPB」する魔法の自由分析考察

開いていただいてありがとうございます!
四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスでオンラインインターンとして広報を務めています。(2020シーズン~)
そこで四国ILを見てきた中でスカウトに注目させる、NPB入りする「ピッチャー」についてなんとなく感じたことをまとめてみたいと思います。以下、あくまで四国アイランドリーグplusの話。

前回(2022シーズン)までの検証はこちら

1番下に結論!


NPBへの条件過去のデータから導く目標ラインは?

下図は2020シーズンから2023シーズンで主に規定投球回に到達したピッチャーのK/9奪三振率BB/9与四球率(今回は死球も含む)の散布図です。規定投球回未到達ながらドラフト指名を受けた行木俊投手(2020年)、椎葉剛投手(2023年)、宮澤太成投手(2023年)、シンクレアジョセフ孝ノ助投手(2023年)、菊田翔友投手(2023年)を追加しています。

これらのデータから以前出した四国ILで求めたいライン

与四死球率:3.00以下
奪三振率:10.00以上

上図でいえば「いかに『右下』へ近づくことが出来るか」を追求するのです。先発登板するとなれば「イニング数と同じ数の奪三振」「1巡(3イニング)で四死球は1つまで」が目安になります。

2023年では規定投球回に達した投手のうち藤田淳平投手のみが「与四死球率:2.88、奪三振率:10.28」このラインをクリア。見事ドラフト会議で指名を勝ち取りました。このラインは目安としての価値があると改めて主張できます。


目指せ、7回8奪三振2四死球ピッチング!
(与四死球率:2.57 奪三振率:10.28)


と言いたいところですが、それだけで終われないのが2023年のドラフト指名の傾向。指名された5人の投手のうち救援タイプが4人となりました。NPBでも独立リーグ出身投手が中継ぎに回る場面が目立っており、四国ILで「先発で支配的な投球をする」ことだけではなく「1イニングをどう制圧するか」を追求することも重要となってきそうです。中継ぎとしてアピールするなら「奪三振率」「どう三振を奪うか(追い込み方から)」という点がまず重要なポイントとなるでしょう。

圧倒的・支配的な先発投手≧強烈な尖りのあるリリーフ
>>試合を作れるいい先発>>>そこそこのリリーフ

あくまでドラフト指名だけを追求する


どんな投手ピッチャーとしてのスペックあれこれなら実現できる?

では「与四死球率:3.00以下」「奪三振率:10.00以上」or「1イニングを制圧する」を達成するためには何が必要でしょうか?パッと思いつくのは「コントロールがいい」「球威のあるボールを投げる」といったこと。具体的にさらに掘り下げてみましょう。

ストレート

一球速報をもとにNPB入りした投手のストレートの簡易スタッツを作成してみました。元データである一球速報の精度は相当低いそこそこ球種が書かれてないので、あくまで参考程度。

NPB平均のストレートのSwStr%空振り数/全投球数は7~8%とされています。指名された投手はストレートのSwStr%が10.0%以上を記録している投手が多く「強いストレート」がピッチングの大きな柱になっていたと考えられます。

なおかつ70%近いストライク率が求められます。空振りを多く奪える強いストレートだからこそ、ストライクゾーンで勝負できるのです。当然ストライクゾーンでガンガン勝負できれば、四死球は減ってくるでしょう。

また空振りこそ多く奪えていませんが、中山のように低い被打率を誇り「前に飛ばさせない」ということも1つの質です。投高打低の傾向が続く四国ILのレベルを加味してもストレートで打者を押し込み、早い段階で投手有利のカウントを整えていくことは基本であり全てです。投手によってコントロールできる範疇ではないですが「ストレート被打率.200未満」というのも1つの参考になるラインかもしれません。

もちろん、先発・リリーフどちらであってもストレート最速150km/h到達は必須項目です。リリーフならば150km/h台連発しないとほぼNPB入りは不可能ですし、もっといえば2年以内に155km/h以上が出る予感が欲しいぐらいです。先発なら力を込めれば150km/h台が出るんだなという印象を持てるピッチャーになって欲しいです。

2023年の指名選手を見ても椎葉、菊田、藤田がストレートで高い空振り率を出しており、宮澤は空振り率はそれほど高くないものの155km/hにまで乗せたことで評価を高め、指名に繋げました。

自由研究ただの参考になるnote紹介
こちらのnoteによると ストレートで空振りを取る要素として
他の条件が同じならば
・リリースの高さは低いほうが空振りを取れる
・投球高さは高いほうが空振りを取れる
・縦の変化量は大きいほうが空振りを取れる
・球速は速いほうが空振りを取れる
・遅くても浮くストレートならゾーン内では、速いけど沈むストレートより空振りが取れる

戸田懐生投手が170cm、石井大智投手が175cmであり、宮森智志投手が193cm、中山晶量投手が188cmという点がSwStr%とは無関係とは思えない。別に極端に低いわけでもないが「高身長から投げ下ろす」タイプはストレートで空振りが奪いづらいか。身長の高い投手は年々増えている印象。この投げ下ろすタイプの投手は実力がないからストレートが当てられるのか、タイプ的に空振りが奪えていないのかは投手自身が考えるべきポイントなのかもしれない。それこそラプソードなどでのボールの解析が役に立ちそう。身長が低ければ低いで、数字上は空振りが奪いやすいとはいえシンプルに高い出力を出さねばならず、それは相当大変なこと。

【再掲】Namikiさんのnoteを参考にしています



変化球

ストレートと同様にNPB入りした投手のストレートの簡易スタッツを作成してみました。元データである一球速報の精度は相当低いそこそこ球種が書かれてないので、あくまで参考程度。ちなみにPitch ValueはSwStr%空振り数/全投球数である程度説明がつくものらしいです。

結論から入ると変化球で求めたいことは「縦変化で空振りが奪える強烈なボール」です。これはNPB入りした投手の共通点とも言えます。追い込んで以降、三振を取るために有効に使えるかという点でWhiff%空振り数/スイングした投球数に注目してみると、フォークのみ唯一空振りの方が多かった球種と言えます。「ストレートの軌道から落として消す」これが変化球の理想であり、最強なのです。ピッチトンネルってやつですね。

戸田、石井、藤井など四国ILに限らず、独立リーグ出身投手のほとんどはNPBではリリーフとしての起用が主になります。その点を見据えても、わかりやすい決め球となり得る「縦変化」を搭載しておくことは重要なポイントです。ただ上記の3投手は四国ILで奪った三振の半分以上は変化球ではなく、ストレート。つまり、これだけ強烈な数字を残しながら、頼らないピッチングを構築できていたのです。そのレベルにまで来なければならない、NPBへの道は甘くない。。。そして四国ILでの圧倒的絶対的エースでも1軍の壁を超えることはそう甘くない。。。

2023年の結果でいえば、椎葉、藤田がストレートでの奪三振が半分以上。一方で宮澤、菊田はフォークによる奪三振が最も多いという結果。(シンクレアは三振を奪うタイプではないが、スライダーが強烈に有効)
特に右投手はストレート×フォークで勝負できるタイプはやや評価されやすい傾向を感じます。

投手のほとんどがスライダーを投げることができます。ただ、それを決め球、自分の1番信頼できるボールとして良いのか。もちろん、カウント球として必要な球種にはなってきますが、もう1つ使える変化球を搭載しておいた方がNPB入りは近づくでしょう。

さらにスライダーについて、四国ILでは全体的にNPB水準と比較して「遅い」という印象があります。NPBでは140㎞/h台のカットボールも多く使われており、スライダーと言っても変化の向きや曲がり幅がいろいろあるとはいえ130㎞/h台中盤は欲しい。その中で独立リーグだと120km/h台のスライダーを投げる右投手もまだまだそれなりに。。。

誰でも150km/hを投げられる時代、球速を上げる方法が確立されてきているからこそ、その次のステップとしてカウント球としてストレートの次に多く投げるであろう「スライダー」の質、使い方も見直していくべきだと考えています。


球速帯

(左上)歳内 (右上)石井
(左下)戸田 (右下)行木
(左上)中山 (右上)藤井 
(左下)宮森        
(左上)椎葉 (中上)宮澤 (右上)シンクレア 
(左下)菊田 (右下)藤田 

NPB入りした選手たちの球速帯を表示させました。球種以上に球速の入力がされていない一球速報なので、あくまでイメージを掴む程度に。

ストレートは最速が150㎞/hを超えてくることは必須条件、アベレージとして145km/hを切らない出力だと魅力的に感じます。欲を言うと、先発投手は試合の中で投げるストレートは1年間常に145km/h以上を出すぐらいのつもりで、中継ぎ投手は全部150km/hを出すぐらいの勢いで投げなければなりません。四国ILではストレートの最速148km/h平均143km/hぐらいのピッチャーが多い印象なので、ここで差をつけて「球の速い投手」という印象を持たせてほしいです。145km/hを切らないように!

変化球の場合、特にスライダー、フォークといった球種は130km/hを割らないことが目安になりそう。変化のぬるい変化球で好成績を出すことができても、NPBに届くかと考えると厳しいのではないかと思います。もちろんスピードが早ければいいというわけではなく、変化量や軌道、再現性も必要となります。投球構成や球質を上げる1つの切り口として「変化球の球速を上げる」というのもアリでは。


コントロール

勝てる投手、力のある投手の1つの特徴として「投手有利なカウントが作れる」ことがあげられます。そこで目指したい数値として「ストライク率66%以上」を求めたいです。イメージとしては「3球投げて1B2Sのカウント」ということ。

そもそも、ストライク率ってどれくらいなのでしょうか?2020年シーズンのMLBのストライク率平均が「63.0%」で、2021年シーズンのNPBのストレートのストライク率が「65%」変化球のストライク率が「62%」とされています。(こんな記事も参考に

四国ILの投手にはストライク率が60%未満の投手も相当数います。ストライクゾーンに安定的に投げられるようになることで成績がかなり改善される、投手として次のステップを目指せる投手は絶対に多いです。

さらにストライク率を改善するために考えたいのは「初球」です。当たり前ですが、制球が悪い投手は投手有利なカウントが作れません。ストライクが来なそうだとなれば、キャッチャーは仕方なしのストレートを要求しがちですし、打者もストレート待ちで構えておけばいいとなり、駆け引きの何もない非常に簡単な勝負になってしまいます。まず「初球にストライクを取れるようになること」でズルズルしないで済むのです。

「3球投げて1B2Sのカウント」

これを徹底できれば「ストライク率66%以上」というのは狙えるラインのはずですし、66%というラインを目指す価値も一定あると思うのです。せめて「2球投げて2B0Sのカウント」を減らしたい。。。

短いイニングであれば球威で押し切ることもできますが、ストライク率が低いと特に先発として長いイニングを投げることはできません。ランナーを出して失点のリスクが高まりますし、球数がかさんでしまいます。2023年ドラフト指名の結果にもそれが表れています。


現時点でのまとめ

以下のまとめに当てはまるようなピッチャーになれば、スカウトに見てもらえるのではないかと今はなんとなく思っています。さらにスカウトの前、特にドラフトが近い後期シーズン(8月9月)に高いパフォーマンスでアピールできるかもドラフト指名の確率を上げるうえで大事になりそう。

フォームの改善やトレーニングはNPBへのラインを超える高い成績を出すためのもの。独立リーグからNPBに行くには投手野手関係なく「自分の武器で勝負する」だけでは非常に難しいと思います。自分の武器や個性を理解したうえで「NPB仕様」に改造しなければなりません。自分の武器だけで通用するなら恐らく独立リーグに来る前の段階でスカウトの目に留まるはず。誰が化けるかわからない、複雑怪奇だからこそ、独立リーグは面白い。

目指すラインは
「与四死球率:3.00以下」
「奪三振率:10.00以上」
「7回8奪三振2四死球ピッチング!」
注:1イニングを制圧できればチャンスはあり!

最速150㎞/h以上を出す高出力
注:ストレート"平均"球速も高く!
×
空振りを奪える or 前に飛ばさせない
高品質なストレート
×
空振りを誘う強烈な"縦"変化
×
ストライク率66%以上のコマンド力
(3球で1B2S)
×
NPBへの強い想いと運と縁
大事な試合でのアピール力

<文・分析>
S.N.

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