強制的な幻覚

イヤホンは私の味方だ。いつだって、思えば、学校に行けなくなった私の日々をの中唯一、安心して溺れて泳げて潜れたのは音楽の中だけだった。

現実じゃない事、私の事じゃない事。その中の痛みやその中の喜びを感じて、簡易的に生きてるような気分になる。変化のない日常にとっては都合がよくてなんとも刺激的だった。良くも悪くも毒されたのか、現実の苦しみが全部全部疎ましいばかりになってしまったけれど、それでも後悔しない程の感動や悦楽がここにはたった。代償として外の刺激の殆どに耐性がない物になってしまったけれども。



他人の目が怖い。見られてないのに視線を感じる。深く帽子を被らないと、暑くても長袖長袖じゃないと、外に出られない。


久しぶりに実家に帰る。実家の猫が病気だから定期的に様子を見に帰っている。家族も好きだし楽しい行事のはずなのだけれど、電車が苦痛になってしまって家を出るまでに半日以上を費やしてしまった。仕事終わりの彼が帰ってきて、整骨院に行くらしいので一緒に家を出た。私は駅に向かって、彼は近所の整骨院へと向かった。ようやく乗り込んだ電車の揺れに頭痛と胃の気持ち悪さを感じながらも、家で過ごしているからつけなくなったイヤホンを久々に付けると、頭の中が強制的に音の世界に連れていかれるので、目を閉じれば殆どが気にならなかった。音楽が、好きだなと再確認した。


仕事中も音楽を聴いて歌いながら出来るような職があればと思ってしまった。
16で派遣を始めて、何度目かの現場でレギュラーとして勤務させてもらった現場は有線が流れていてなかなかに快適だったとふと思い返した。




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