心変わり

僕は信念を持っていると思っていた
核のある人間になろうと必死だった
でもそれは
錯覚で
誤解で
事実じゃなかった

何でもない君の視線
黒い瞳孔に惹かれる
ナイフのように尖った
そのレーザービームに焼かれ
心に穴が空いた
でも僕には核が無いから
埋める指令も出ない
一つ一つの言葉に
手足を縛り付けられるようで
なんて生きにくい世界なんだ
なんて死ににくい社会なんだ
そう心で嘆いて
人との繋がりを絶とうと
立ち上がったその時
暗闇から手を引かれ
足を掴まれ
依然として苦しみ続ける

僕は大抵の人が嫌いじゃない
むしろ好きだ
だけど大抵の人は
僕のことが好きだろうか
そんなことを考えても
理解できる日は来ないし
自分が苦しむだけなのに
いつもこうして落ち込んでは
人との繋がりを大切にしようという信念に
簡単に心を掴まれてしまう

眠れない夜
孤独な夜
白波に誘われ
心を止めてしまう

自転車を漕いでいたら
いつの間にか高速道路の上にいて
周りの人は僕を非難する
こちらに目を向け
異端な、異質なものを扱うように
特に何かをする訳でもなく
通り過ぎていく
高級車が通る時もあるけど
そんなのは僕には関係ない

悲しみを引き摺っているその車は
僕を轢き殺す

本質でない
上の空な人の気持ちが
どうでもいいと分かっている僕の心を縛り付け
一歩踏み出すのが怖くなる
まるで人生の先駆者であるかのように
振る舞う赤の他人が
僕に言葉をかける

人を愛す以上に
人を嫌うことの方が
人を拒絶することの方が
僕を僕でなくす
人に期待するなという助言
そんなものはくそっ喰らえだと
僕は今日も人を信じたくなり
簡単に信念を植え付けられる
正しいことが幸せだと思っている人らに
僕は今日も殴りつけられる
膝には糊が
目には夜が
手には網が

息をすること
それが

こんな夜は
誰にも理解されない夜は
誰のことも理解できない夜は
人間という生き物は
どう過ごせば
どう凍えれば
乗り越えられるのだろうか

苦しみを
喰らい尽くす
さらに大きな苦しみ
焼き増しされた僕の苦しみは
電話と警報が鳴り止まない社会のように
僕を永遠に
生と死のどちらでもない
この夜に閉じ込める

そうして今日の夜は
人との繋がりを絶つ

そしてまた
まだ見ぬ誰かと出会い
別れる

そうして明日の夜は
決断する

抜け出さなければと焦る
この想いを
どうして消化できようか
人ならざるものであれば
覆い隠すことが
粉々に消し去ることが
できるのであろうか

そうして消し去ったとして
何を理解できようか
この想いは
墓場まで着いてくるに違いない
誰にも消し去ることはできない

こんな時代に生まれてしまった自責の念を
よく噛んでから
泥水で流す

僕は決断して
心を閉す
良いことと悪いこと
何を引き出すかは分からないが
分からないから
僕は決断する
僕は君が嫌いだ
僕は決断した
君を君も

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