赤い羽根福祉寄金2023年度助成『十分な社会的スキルを得ないまま「高校卒業」する若者たちへの社会参加や就労等の支援を行う事業』報告会
3月26日(火)に赤い羽根福祉寄金2023年度助成『十分な社会的スキルを得ないまま「高校卒業」する若者たちへの社会参加や就労等の支援を行う事業』報告会がNPO法人抱樸子ども・家族marugoto支援事業部の主催で行われました。
『十分な社会的スキルを得ないまま「高校卒業」する若者たちへの社会参加や就労等の支援を行う事業』とは
事業内容
様々な課題を抱えつつも「高校卒業」資格を得た若者が、十分なスキルを得ないまま、就労や進学したが辞めてしまい、長期無業状態もしくは引きこもり状態になることに対して、アセスメントを行い、課題を見極め、社会参加や就労体験、就労支援などを行うことにより、高校卒業後の就職も含めた社会参加できるように支援する。これにより、若者のひきこもり及び長期化を防止し、将来の4070、5080問題の予防を目指す。
事業対象者
高校卒業後、短期離職やその恐れがある若者、進路未決定のまま卒業した若者
在学中ではあるが、課題を抱え卒業後も継続的に自立に向けた支援が必要な学生
高校を中退、もしくは中学卒業後に無就業状態(引きこもり状態)の若者
家族marugoto支援事業部による本年度の事業報告
まず、抱樸の家族marugoto支援事業部より、本年度の事業報告が実例を交えながら行われました。今年度は高校3年生および高校等既卒者(中退者含む)25名の支援を行い、それぞれ就労や就業継続につなげることができました。
1年目の支援を経て、家庭(家庭環境)の課題が、若者の就労や社会参加への困難さの要因になっていることが明らかになりました。また、就労や就業継続できた若者も、そのためには生活支援や居住支援など多岐に渡る支援が必要でした。
今後も就労・自立に限らない、多方面での支援や繋ぎ、関係機関との連携が必要になると考えられます。また、短期的な自立支援ではなく長期的な伴走支援が必要になると考えられます。
子どもや若者に関わる教育機関や支援機関へのアンケート分析
次に坂本毅啓氏(北九州市立大学 准教授)より、子ども若者に関わる教育機関や支援機関に実施したアンケートの分析報告が行われました。
アンケートの分析により、支援を必要としているにも関わらず、社会資源と繋がらないままに社会にでている若者が毎年度一定数いることが可視化されました。また、そのような若者に関して、教育機関も繋ぎ先を必要としていることが分かりました。
今後の課題として、保護者を含めた全体の支援や、繋ぎ先の開拓、若者の自立や就労に限らない居場所作りなどの必要性が明らかになりました。
事業の成果と課題
最後に、事業に対する意見交換が稲月正氏(北九州市立大学 教授)、坂本毅啓氏(北九州市立大学 准教授)、奥田知志(NPO法人抱樸 理事長)の三者で行われました。
助成事業の1年目を終えて、稲月氏からは「卒業後の進路や就職などに関して、目に見える成果が出ている。しかし、いちばん大きな成果は(目には見えないが)つながり続けることで若者の社会的孤立を防いでいることだと思う」との評価をいただきました。
坂本氏からは「この数年で子ども支援は社会的に厚みが増し、中学から高校に進学するハードルは下がった。しかし、それは一歩間違えると中学卒業時に抱えていた問題を高校に先延ばしにしている状況と捉えるということもできる。しかし、ポジティブに捉えれば、高校に進学するということで支援する期間は伸びたということでもある。高校進学率の上昇に伴って、子ども支援は次のフェーズに入ったといえる。支援の成果をどう可視化できるかが、2年目以降の課題である」とのご意見をいただきました。
奥田理事長は子ども支援における伴走支援の重要性について「解決するために繋がるのではなく、解決しなくても繋がり続けることが大切である。家族機能には①気づきと②繋ぎがあると考える。状態が悪くなってから支援先に繋がるのは従来の解決型のソーシャルワークの考え方である。日々の繋がりの中で状況の変化に気が付き、未然に対処することが大事」と述べました。
最後に
支援の今後にむけて、稲月氏からは「支援を繋ぐときには、投げっぱなしにしないことが大事。どこかが主体性をもって、繫いで戻すを繰り返す期間が必要。抱樸がやってきたことをどうモデル化できるかが課題」とのご意見をいただきました。
奥田理事長は「自分たちのやっていることを可視化し、立ち止まって振り返るいい機会となった。息の長い事業として続けていきたい」と赤い羽根福祉基金への感謝の気持ちと今後の抱負を述べました。
後日、3月27日に『十分な社会的スキルを得ないまま「高校卒業」する若者たちへの社会参加や就労等の支援を行う事業』は赤い羽根福祉基金より2024年度も継続助成いただけることが決定しました。
今年度の課題を来年度に活かしつつ、引き続き支援に励んで参りたいと思います。今後とも宜しくお願いいたします。
いただきましたサポートはNPO法人抱樸の活動資金にさせていただきます。