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知識と思考

「幼児期の指導」

教育の再編で、子ども達には今まで以上に考える力が求められるようになりました。幼児教育者としては、子ども達に考える場を提供したいのですが、非常に残念なことですが、その題材は殆ど全てが指導者側から発せられています。私たちはそこで錯覚してしまうのです。「子ども達に考えさせている」と。これは、一見、考えさせる授業をしているように見えますが、子ども達からは一方的な質問であり、受け身の授業となっているのです。しかし、この指導は決して間違った指導ではありません。ただし、この指導自体がきっかけであると認識していればの話です。つまり、先生の発するのは質問であり、思考の基礎となる「疑問」ではないと言うことです。

「考える」という脳の行動は、色々な現象面から生じる「なぜ?」「どうして」という疑問から始まります。子ども達が、「なぜ」「どうして」という類のことばを多く発するのはいつ頃のことでしょうか。思い出してみると、物心がつく頃、3歳半ごろではないでしょうか。3歳までが大切と、このブログで何度も行ってきましたが、その理由をもう一度考えて見ると次のようになります。

  1. 認知・認識(親・祖父母)

  2. 他の動物の認識(一部の概念)    

  3. 母国語の獲得

  4. 基礎的生活言語数の獲得

  5. 神経発達(脳神経・手先の神経・運動神経系)

  6. 感覚器官の発達(五感+前庭感覚・固有感覚)

  7. 心の形成(基礎的)

  8. 人格の形成

  9. 性格の形成

  10. 知的好奇心の発達

3歳までにこれらの発達が見られます。幼児期の評価が、公的な学習が開始する小学生と異なるのはこの為です。各器官の発達や、脳神経の発達期にあるので、一般的な学力という見方ではなく、発達心理学からの見方、医学的に、身体の成長発達の見方、また、神経科学的な脳の発達からという、学力という一面的な捉え方が出来ないのです。「物心」がつき、「なぜ」「どうして」と発する時期が平均して3歳5ヶ月で、親として。子どもからこのことばが出てくればまず一安心と言うことでしょう。これはあくまでも平均です。絶対の数値ではありません。

子どもの発達と共に発せられる「疑問」こそ、子どもの側が、本格的に学習する体制を整えたという合図になります。この時からの会話こそ、思考を高める上で非常に重要となります。親として、保護者として、しっかりと受け答えすることは大切なのですが、「○○ちゃんはどう思う?」という逆質問も大切です。これでお解りのように、授業ではこちらから質問をして考えて貰います。この両面の思考が大切です。なぜ数学習でタイルを使うかもご理解頂けるのではないでしょうか。具体物があることで疑問が生じやすくなります。単に数字という抽象ではなく、実際に動かすことがイメージとして定着しやすく、思考の援助(タイルが)にもなります。

思考へは、このように、質問と疑問があり、それは能動的な思考と受動的な思考という面を持っています。思考を促すには、当たり前の経験や体験が必要です。まず、家庭内の仕事から始めます。遊びも大切です。(ゲームは別です)また、思考にはことばが必要です。以前、知識を捨てる必要があると申し上げました。断片的な知識では思考までなかなかたどり着きません。その為、名詞、特に固有名詞に偏る学習を知識偏重と言います。ただし、これを極端にとって頂きたくはないのですが、全面的に否定しているのではありません。ことばとしてのバランスが必要なのです。

この時期、家庭で見かける光景で「水!」と子どもが言うとコップに水が注がれて出てきます。名詞系のみのことばのやり取りは感心しません。最低でも「水を下さい。」と言わせることが大切です。学ぶのは、名詞系のことばだけでなく、動詞、形容詞、副詞、助詞、接続詞、慣用語(挨拶、よく使われることば等)を学び、会話を大切にします。夜空を見上げながら、お子さんと会話を楽しんで下さい。かなり難しい質問がくるかもしれませんよ。

【ご報告】
私的なことですが、来週火曜日から木曜にかけ、白内障の手術で入院することになりました。今年の正月から1日も休まずブログを書き続けて来たのですが、残念ながらお休みすることになります。どうぞご了承下さい。また、翌週も同じスケジュールで反対側の目も手術をすることになりました。以上報告させて頂きます。

2013/7/11


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川教育研究所 代表 石川 幸夫

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