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知識から思考へ

「考える!?」

幼児教育を経験してきた子は指導しにくいと言うコメントがありました。様々な研修会で、出席された先生方から同じような苦情に似たお話を良く耳にします。以前から、これからの教育は「思考力」を高める方向に向かうと申し上げてきました。塾の先生方からのご指摘は、ある意味確証をついているのではないかと思います。

先生方から、「知っている!知ってる」と、授業を妨げるように言い放つ子どもの大半が幼児教室経験者であるという報告があります。ところが、内容について尋ねると表面的な事だけで、改めて指導し直す必要があるというのです。「確かに、多くの事を知っています。でも、それだけなのです。」と嘆かれます。何故、このような状態に陥ったかは、このブログをお読み頂いてご理解されているかと思います。幼児教育の流れは、一時期の右脳ブーム以降知識偏重になっていたのです。知識と記憶が一体となった教育がブームとなりました。これには、我が国の受験を代表するテストのあり方にも関係しています。知識優先ですから、知識を確かめるためのテストが主流でした。ところが、20年ほど前、東京の有名私立小学校の受験問題に知識優先から、行動観察という項目が加わったのです。ペーパーという判断だけではなく、広く子どもを見るという受験は、その後の小学校受験を変えたと言われています。

学校では、指導要領が変更された今も知識中心の授業が展開されています。しかし、幾つかは、間違いなく思考力が試されていると思われる問題が出題されています。教育現場は簡単に指導法を変えられません。また、知識に関する指導に比べ、思考力を育てる指導は大変なのです。

フラッシュカードも知識偏重の代名詞で使われていました。幼児に歴史や化学記号などを行っていた教室もあります。しかし、彼らはその後思うほど大成しなかったと関係者は言います。何故でしょう。それは、知っていることが考える力を押しのけていたからだと思います。授業中、自分の中にある知識が出てきたことで満足し、その先にある思考までたどり着けなかったからです。また、幼児期にこれだけの事を記憶できる教育は凄いと保護者の方も感じたでしょう。決して知識が必要ないと言うことではありません。一定の知識は必要です。しかし、幼児期に必要な知識の中に、大人受けする知識が必要かどうかです。それよりも、脳内に思考の回路を作ることの方が大切ではないでしょうか。

プリンスジュニアで行われているカードを見ると、以前とは違って来たことに保護者の方は気付かれることでしょう。幼児には幼児期に必要な言語に関する発声発音が中心です。また、数のイメージに関する内容が中心です。他には重要な短期記憶を意識したカード、単なる知識ではなく、その先に繋がる内容のカードになっています。子ども達の成長発達をしっかり捉えれた指導法であれば、フラッシュカード指導も活かされます。

ここまで書くと、では子どもに考えさせるにはどうしたら良いのかという質問が来ます。実際、知識の与えっぱなしが多い今の教育では思考力を育てることは難しいでしょう。プリントさえ与えればいい、問題を数多く与えればいいという単純な発想でしかないかも知れません。考えさせるのは時間もかかる、面倒くさいと言うのが本音かも知れません。プリントも、問題を数多く解くことも側面では大切な事です。それだけでは、新しい学力感にはほど遠いでしょう。思考力を育てるには時間が必要です。その為、指導者や大人側も根気が必要です。待つという姿勢も必要になるでしょう。

思考を育てるには、例えば天気予報があります。明日の天気を子どもに予報させます。天気予報は、必ず次の日には結果が分かるので子どもにとっては面白いでしょう。予報の際、子どもは何を頼りに明日の天気を予想するでしょうか。ここに知識が必要になります。空を見るでしょう。雲を見るでしょう。温度計や湿度計を見るかも知れません。ニュースや、ずるをして天気予報を見るかも知れません。でも、自分で考えた場合は空を見る目が違うはずです。すると、予報が当たっても外れても、その理由が知りたくなるはずです。こうして、自分で考え、必要なデータ(知識)を集めることになります。世界地図や天気図の見方も独学で行うかも知れません。こうして、ICT時代、知識は新聞、テレビ、それ以上にコンピュータの中に無限に存在します。人間の知識力では適いません。この情報を如何に思考し、活かすかそれが問われています。自ら進んで学ぶことはどれだけ楽しいことか、子ども達に味合わせてあげたいものです。

2013/9/6


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川教育研究所 代表 石川 幸夫

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