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感覚を鍛える

「技能と能力」

良く言われる「頭でっかちな子」の特徴として、知識が豊富で知的能力に優れているのに対し、手先が不器用という形容があります。これは、人の全体を見た場合のアンバランスな状態を指しています。つまり、技能と能力、これは同じとして扱うことは出来ないということになります。技能を広範囲にとらえると「知覚教育」にたどり着きます。さらに、もう一つの側面である「感覚教育」があります。教育という視点から考えると、戦後から50年あまり、主に知能面に集中していました。知覚領域や感覚領域については各家庭や、遊びの中で十分な経験や体験、そして刺激を十分に受けることが出来ていたからです。しかし、子ども達が生き生きと活動できる環境を、「開発」という名の破壊が進み、身体を思い切り動かすことの出来る場が少なくなりました。空き地が減り、昆虫採集にうってつけの草むらもなくなりました。人工的な遊具では、一時は良いのですが遊びの工夫も生まれません。現代社会では知能面だけを追い求める教育に無理が生じているのです。

知能面の教育指導は基礎教育の充実と、小学生、中学生への系統的指導の体系化が進めばより効果的な指導が可能です。反面、技能面については全く手をつけていないという現状です。そこで、私たちは、子ども達の将来を考え、知能面と技能面のバランスのとれた教育へとシフトしたのです。技能面を支えるのが「知覚」と「感覚」です。更に、手先指先を数多く使う「遊びの指導」です。

伝統的な子どもの遊びには「知覚」と「感覚」の刺激が数多く含まれています。大切な空間認知能力も遊びを通して培われていきます。女の子が苦手とする空間認知能力にお手玉という遊びがあるように、自然に体験してきたことが技能に結びつくことは多々あります。

私は、以前「型はめ教育」が必要だと申しあげました。スポーツも含め、基本動作には全てと言って良いほど「型」があります。そこで重要となるのが「姿勢」です。「すうじ練習帳」「書写練習帳」でも扱う「姿勢」は、身体の真ん中の線を「正中線」とし、書くときの姿勢を注意するよう促しています。姿勢は知覚面では、「視覚」に関係します。姿勢が崩れることを嫌うスポーツ選手は数多くいるはずです。打つときの姿勢、投げるときの姿勢、回転するときの姿勢、それは「視覚」のずれを意味します。見ているものがずれるから、身体が矯正しようとする、この矯正時間の調整が難しいのでスランプとなります。

前々回上げた「動詞」は、子ども達の「知覚」「感覚」を鍛えることばばかりです。教育に求められているのは、単に知識の豊かさだけではありません。物事を想像(創造)する力です。その為には思考力が必要です。更には、技能面の刺激が人の可能性を更に広げてくれます。時に、技能が知識を上回ることもあります。基本の大切さ、もっとこのことを私たちは自覚すべきです。テストの点数上に現れるだけの成果では推し量れない、子ども達の総合的能力を多面的に捉えること、基礎教育のスタートラインはそこにあります。

2013/7/30


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川教育研究所 代表 石川 幸夫

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