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感覚を鍛える

「便利さは必要ない!」

子どもの成長に関する教えに「便利さは敵」ということばがあります。その中で最も便利な「道具」があります。この「道具」はとっても便利なもので、どんなハイテク製品も適いません。そして、その範囲は驚くほど広く、時に成人しても十分使える優れものです。もう何だかお解りになりましたか。それは「母親」です。では、なぜ母親は子どもに対して過管理、過干渉となるのでしょうか。一番は「待つことが出来ない」でイライラするからではないでしょうか。その反動は、子ども達を取り巻く環境に入り込む便利なグッズ類を生み出しました。その一つが「マジックテープ」です。紐を結ぶより早く「便利」です。お母さんの本音として、子どものすることは、遅く、汚く、手間がかかると見られています。実際には、お母さんにスプーンで食事を口元まで運んで貰っている年長児や小学生がいるほどです。後片付けの大変さ、時間がかかることの煩わしさが背景にあります。

便利な時代になるに比例して、子どもの生活習慣に大きな乱れが出てきました。およそ30年ほど前から生活力のない子どもが増えてきたのです。そして、それまで保護者にはあまり見られなかった過管理、過干渉という傾向が主流を占めるようになってきました。その頃から、次第に子ども達は頭でっかちな子へと成長していきます。知識はあるのですが、具体的な生活認識のない、常識を知らない子ども達が増えてきました。箸も、鉛筆も満足に持てません。スプーンの多用から前屈みで食べる癖(犬食い)がつくようになってきたのもこの頃です。結果、授業中の姿勢も悪くなってきました。今では、正しい姿勢で座れる子はごく少数です。姿勢の崩れは学習の基礎力も阻害し始めました。聞くことが出来なくなってきたのです。これは、学ぶことの基本であり、全てに(コミュニケーションも含め)共通する必要な力です。子ども達は10歳くらいまでしっかりと鍛えなければなりません。もっと不便さを体感した方が良いのかも知れません。

「遊びの大切さ」

現代社会では、社会環境の安全性が問題視され、子ども達は、戸外で遊ぶことが次第に出来なくなってくると言う状況に追い込まれています。遊びを通した感覚の訓練が出来なくなってきたのです。遊びは、子ども達に何をもたらしてくれていたのでしょうか。

  • 小集団意識(小社会の形成・上下関係・コミュニケーション)

  • リール作り(遊びのルール・規則の重要性)

  • 時間感覚(待ち合わせ時刻・帰宅時刻)

  • 皮膚感覚(戸外の寒暖・水の温度・太陽の温度)

  • 触覚(砂遊び、泥遊び等)

  • 平衡感覚(平均台やシーソーに類するモノ)

  • 回転感覚(鉄棒など)

  • 逆さ感覚(馬跳び、鉄棒など)

  • 高さ感覚(ジャングルジム・登り棒)

  • 前後の揺れ感覚(ブランコ・渡り鉄棒)

  • 空間認知(ボール遊び・ビー玉等)

  • 心肺機能(缶蹴り・鬼ごっこ)

  • 季節の概念(草花、日の入り、温度差、季節で見る色の違い)

  • 想像力/独立心(秘密の基地作り)

遊びからは多くを学ぶことが出来、上記以外にも数多く学ぶことがあります。子ども達は、便利さの追求と、遊び場を奪われたことで多くの大切な力を失いつつあります。広い野原に子ども達を連れて行くと、直ぐに思い切り走り出します。自然に鬼ごっこが始まるのですが、足の速い子が目立つようになると、鬼ごっこの中身に変化が出てきます。こんどは捕まった子同士が手を繋ぎ始めます。「手つなぎ鬼」です。個人から小集団へ、仲間意識が芽生えていきます。このような遊びが自然発生的に起こり、次第に自分の好きな仲間と別の遊びへと移行します。動から静へと切り替わるのです。そして遊びに工夫が入って来ます。

私たち幼児教育に携わる者は、学習面だけ注視しているわけではありません。総合的な見方が必要とされていきます。この夏休み、我が子に責任も持たせ、家庭内の仕事を与えて下さい。その場合、片目をつむるようお願いします。不便さも体験、体感させて下さい。

2013/7/31


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川教育研究所 代表 石川 幸夫

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