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考えられない中学生

「思考の道筋」

3+X=8、等式の性質を使った基礎的な方程式だが、中学1,2年生の中で理解出来ない子ども達が多数いる。中受験をする小学生でもできる計算ができない。その考え方が解らない。この子達には特徴がある。お決まりのパターンだが、集中力がない、人の話を聞けない、考えられない、短い問題文もスラスラ読めない…。皆さんよくお解りの通り、学習姿勢ができていない。学習には道筋というものがある。しかし、最近、この学習の道筋をショートカットしたがる傾向がある。私は、宮大工の頭領を祖父に持つ、その血筋を引いているのか、「職人」と呼ばれる人たちが好きだ。彼らは、人の見えない所にも手を抜かず、手間暇を惜しまない。すると、機械では決してマネのできない「もの」を作り上げる。以前、我が家にはそんな職人気質で作り上げた「電蓄」と呼ばれる、今で言うオーディオセットがあった。それは機械ではなく、家具そのものだった。そこから流れてくる音楽に、不思議と心が安らいだものだ。

方程式を理解出来ない子は、大切な時期を放っておかれたか、学習のショートカットをしたのかも知れない。初期の算数指導で重要な合成分解がある。文字通り数を分けたり、合わせたりする学習だ。単純な様に見えるこの学習、実は奥が深い。合成分解の学習をしっかり積み重ねるなど、丁寧な指導を受けてきた子は、総じて聡明である。まずは、2を分ける。1と1になる。次に3を分ける、2と1、1と2、1と1と1になる。初期では「0」を扱わないから以上に分けられる。すると、ある子が「先生、2は分けられるけど、3は分けられない!」と言った。私は、1のタイルを4こ渡した。「4は分けられる?」と尋ねた。彼は「ウン!」と頷き、1と3、2と2、3と1、1と1と2などに分けた。何故3は分けられないと言ったのだろう。ここで気付かれただろうか。

彼には、妹がいた。つまり、偶数ならば同じ数ずつ分けられることに気付いたのだ。優しいお兄ちゃんだ。勿論、まだ偶数という意味は理解出来てはいない。しかし、同じ数ずつ半分に分けられる数を発見した。

合成分解は、文字通り分けて合わせる。5を3と2に分け、また合わせると元の5になる。(還元算・方程式の基本的な考え方)これをタイルを使って行う。こうした学習を2から始まり、分解と合成を繰り返していくことになる。3と2に分けられた数は、タイルで行えばその差が1であることも視覚的に理解出来る。先ほどのように同じ数になる分け方もある。こうした数の具体的操作が足し算や引き算(掛け算や割り算にも)の基礎に繋がって行く。勿論、合成分解の学習量は、計算能力に比例していく。それだけではない。タイルを使った指導が、より確かな数理解になる。数字だけで数を学ぶのではなく、具体的に数を分けるという感覚は、解らない数を「X」と見立てる方程式などの理解に繋がるのだ。つまり、具体的操作が土台となり、抽象思考へと導かれていくからだ。それだけ具体物(タイル)を通して発見や気付きも多くなる。思考力とは、具体的体験の積み重ねから生じていく力だ。この合成分解だけでなく、大人側からすると簡単で無意味に見える基礎学習は、数年の月日をまたぎ沸き出してくる知的な伏流水だ。

学力に自信を持つ子どもは、こうした基礎学習に多くの時間を割いている。それとは逆に、学力に悩む子は、無意味な時間を費やしている場合が多い。幼児期からの時間の使い方が学力差を生むと言っても良い。この差を埋めようと、高学年や中学生から始めると、指導者によっては基礎部分はショートカットされる。それは当然かも知れない。意味を考えさせ指導する時間がないので、考える為の学習ではなく、解くための技術を指導するに留まるのだ。学習時間に余裕がないと、こうした見えない学力を支える指導ができず、張りぼての学力となる。本来の「ゆとり教育」とは、たっぷりと時間をかけ基礎能力を高めることにある。そこから生まれる自信が余裕となる。それが幼児教育の基本なのだ。物事を考えられる人間に育てていかなければならない。考えるには、それぞれに道筋がある。思考の道筋がある。教育のスタンダード、それが幼児教育だ。

2013/1/28


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川先生監修!

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