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なぞり学習と感覚教育

「なぞらせること」

開発ということばの陰に隠れた破壊は、子ども達の学力にも大ききな影響を与えています。子ども達を囲む環境は大きく変わりました。特に首都圏では、遊ぶことに関する規制が激しく、その結果、子ども達の体力や運動技能の低下を招いています。遊びの変化は、場所からモノ(ゲーム機など)へと変化したことが最も特筆すべきことでしょう。遊び=室内が当たり前になりつつある、実に悲しむべきことです。戸外で遊ぶ、つまり身体を使った遊びは、走る・飛ぶ・蹴る・投げる、採る、捕る、登る、見る(空間認識・遠近)・計る(目測)等、実に多くの機能を使います。ここで培われる能力は、室内環境から得られにくいものばかりです。戸外遊びの現象から、まっすぐに歩けない、走れない、目測ができない、姿勢を保てない、落ち着きがないという問題があり、その一部には精神的な問題も含まれてきます。

また、遊びの変化は学習に活動にも多く見られます。まず、小学校などに進学すると、椅子に座っていても、立っていても、自分の姿勢を保つことが出来ないことです。身体を支える筋肉の未発達、平衡感覚の不統合が主な原因と考えられます。また、文字を正しく書けない子どもも目立ち始めています。いわゆる鏡文字であったり、文字バランスであったり、視知覚の問題を抱えている子どもも見受けられます。このようなお子さんでも、「なぞり学習」は繰り返し行うことで、問題の改善に大きな力となります。

当研究所で制作した教材には一つの特徴があります。例えば、すうじ練習帳・ひらがな練習帳・カタカナ練習帳・タイルさんすう・漢字練習帳、これら全てに共通しているのが「なぞり学習」です。「なぞり学習」は、大人の方がお寺で行う写経と同じです。線の通りになぞるのは大変難しいことです。「なぞり学習」には暗黙のルールが存在します。それは、「はみ出してはいけない。」というものです。遊びでも分かり易いルールがあり、そのルールーがその後の生活上の規範となっていきます。そして、書くときの姿勢も大切にします。これらは、学習を「意識」させるという大切な役目を担います。書写「なぞり」は意識しなければできない学習です。まずは、線を意識する。その過程で目視、姿勢、テキストの位置、鉛筆の持ち方の指導を行うことで、次第に平衡感覚も身について行きます

線のなぞりが出来てくると、次第に文字全体に意識が傾いていきます。その後、単語、文節、文と、広い視野で意識が集中してきます。これが学習の変化です。まさしく「クリティカルピリオド」(臨界期)という学習経験に最も重要な時期を迎えます。なぞり学習を用い「たすうじ練習帳」は、直線、曲線、斜線を意識した内容が基本から出ています。文字を書くには、線の認識が必要です。今学期販売された「漢字練習帳」(完売いたしました)もなぞり学習をふんだんに取り入れています。それは、自学自習が出来るからです。そして、「はみ出してはいけない」というルールから、適当な扱いが出来ません。丁寧に書かなければ、学習とは認められません。いい加減な対応は直ぐテキストで証明されてしまいます。家庭教育には最も適した学習ではないでしょうか。

しかし、いくら書いても文字を丁寧になぞれない子がいます。それは、指先、手先の感覚不統合が原因かも知れません。この不統合とは、文字を書いていて止まるところを止められない、自分の意志に反して、指先、手先が反応していない、もしくは遅いことを意味しています。すると、ひも結びができない、ハサミが使えない、ペットボトルのふたが開けられない等、日常生活で問題を抱えている筈です。

このような場合が見つかった場合は、指先を使う遊びや、手伝いを数多くさせて下さい。決して直らないということはありません。

学習を通して御津から我が子の生活能力、学習は教室だけで行うものではありません。我が子の状態をしっかり見ておきましょう。そして、この夏は、親子で「なぞり学習」を楽しんで下さい。

2013/7/2


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川教育研究所 代表 石川 幸夫

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