見出し画像

3月8日/2023

(続き)

しばらく舗装の道を進むと小さな橋を渡ってようやく登山道らしき道に入る。達磨石と表示されたポイント。梵字?が彫られた大きな石が鎮座している。ここを過ぎるとまもなく三ツ峠山頂3.0km→という道標。ここが登山口らしい。さあ行こう!!。いきなりしっかり登りだな。ゆるゆる登山で始まるのかなと思い込んでいたが、そうじゃなかったみたいだ。急坂でもわりとふつうでまだ登り辛い道にはなっていない。でもやっぱり登りはだるい。登り始めはいつもの感じ。これから2時間ほどの道のりか。このままずっと登りっぱなしなのかな?。高速から眺めた険しそうな山の全容からするときっとそうなんだろうな。これはけっこうヤバいかも。そんなこといっても見上げれば木々の向こうの空は真っ青。絶好の日和なんだ。登り始めたのだから引き返すことはできない。しかし、今日の陽気はすっかり春だ。山に入って今年初めて寒さという感覚がない。もう山の服装も衣替えか?。そんな暖かさだ。まだ登り始めだよ。どこかで上着一枚脱がないと。だるい体をゆっくりゆっくり持ち上げるようにして登っていく。前方に何やら看板。そこには股のぞきと書かれている。そして富士山が大きく現れる。天橋立みたいに富士山を股の間から見るというヴューポイントなんだな。看板の下には股のぞき用の小さな台も設置されている。別に股のぞきしなくても富士山のキレイさは堪能できるので。股のぞきの行為は遠慮しておく。そばにベンチがあるので、そこで富士山見ながらほっと一息。富士山にはまだまだ白い部分が下まで続いているけど、里はすっかり春だな。こんな麗らかな陽気なのに山登りなんてしてるなんてバカバカしいのかな?。そんなこともふと頭をよぎるけど。ま、考えても仕方がない。さてと歩行再開だ!!。ちょっと休んだから足取りもちょっと軽い。道に雪が現れてきたぞ。一昨日、富士五湖周辺は雪が降ったという情報は得ていた。下の駐車場までは雪がなかったけど、遠目に見えるこの辺の山々はまだ雪化粧している。三ツ峠山はこの辺でも一際高い山だから、これから先雪も深くなっていると思われる。どこでチェーンスパイク履くか?。でも、まだまだ上りというのもあるしこのまま行けそうだ。雪の出現と共に道も険しさを増す。道に岩が現れどんどん増えてくる。そして歩みは妨げられ、どんどんゆっくりの歩行になる。息も上がる。そして次なる道標。馬返し。馬はここまで、ここから人は馬から降りて歩いていってください的な意味なんだろう。ここから先は馬は登れない急登が予想される。そんなことを頭に浮かべながら道標を通過。ちょっと展望が開けた方を見るとここでも富士山の眺望。若干、空気の澄み具合はキリッとしていないが雲ひとつかかっていない富士山の存在感は圧倒的だ。そして歩いていく先に目を戻すと岩と雪の道が壁のように迫っている。出たな急登!!。両手に持ったストックを片手にまとめて持って、岩を掴みながらよっこらしょと登って行く。これはキツイなあ。キツイのもあるけれど、足踏み外したらと思うと怖い。帰りの下りは難儀しそうだ。前方に視線向けると道の先は青い空。登山道が天まで続いているようにも見える。ちょっと心折れそうな道のりだ。でも時折木々の間から見える富士山に励まされてえっさえっさと登って行く。そして愛染明王塔という看板が見える。そしてその先の道はこんなとこ行くのかという感じの急登。ここにもベンチあるからちょっと腰下ろして息整えて行こう。ここのベンチは雪で濡れている。乾いている端っこに腰下ろして、リュックも下ろして一休み。ちょっとここまで険しい山とは思ってきてなかったので、朝ごはん抜きで来たので、体が帰りまで持つか心配。水飲んで柿の種を無理して流し込む。ここから先はベンチ見つけたらこまめに休憩とっていこう。食料がランチパック一個というのも心もとない。ここで供給したいところだが帰りの体力の方が心配だから頂上まで取っておこう。食べ物や水分を供給するとちょっとはやる気というものが湧いてくる。よしっ、行こう!!。リュックを背負い岩をよじ登る。思えば道が険しくなるにつれ周りの杉林の風景はいつの間にかまばらになり視界は開けてきている。標高が上がってきて植生も変わってきているということか?。そういえばここまで誰にも会っていない。こんな季節にこんなところに来る人いないのかな?。ちゃんと頂上はこの先になるのかな?。山道で人に会うのはあんまり好きではないが、まるっきり人に出会わないというのも不安だ。道の雪も次第に多くなり、これ以上深くなったらチェーンスパイクの登場だなと思いつつ。岩岩の道を登る登る。ふと視界が開け前方に赤い布が点々としているのが見える。何だろう?。たくさんの石仏に赤い前掛けみたいなものがかけられている。前方にはその大型版。八十八躰供養塔と表示された看板。雪原に現れた不思議な風景。心の中で手を合わせ拝礼する。ここにもベンチがあり富士山が臨める。ここでも一休み。富士山の姿を写真をパチリ。数枚撮ったら。登山再開!!。ここを過ぎたら屏風岩というのが現れるらしい。下から見えたあの岸壁か?。頂上はあの上にあるのがどうやってその上に行くのか?。興味もあるが、メチャ不安も大きいのですが。ミシミシと雪を踏み締めて登り道。登り切ると目の前に大きな岩壁が視線の先を覆う。あれか?。でかいな!!。そして道は下り、しかも細くて片側が断崖。崖側に鎖状の手すり。もう限界だ。ここで雪対策しないとこれから先二進も三進も行かなくなる。まだここなら、しゃがみ込んでも安定を確保できる。ここでチェーンスパイクの登場。お世話になります。ちょうど良い岩に腰下ろしてリュックからチェーンスパイク取り出して装着。さあこれで足元は安心。岩壁を巻くように走っている細い雪道を慎重に歩いて行く。ここを歩いていると、さっきまでの登り道はキツかったけれど、それだけのことだったなと思われる。今はここを無事に乗り切れるか。目の前の状況をこなしていくことだけに集中。必死だ。こういう時に必死って使うんだろうな。なんて考えたら滑落必至だし、そんなこと考えてる余裕1mmもなし。なのでこの必死についての件は後付け。ちょっと気を休められる場所に出て屏風岩を見上げる。しっかしデカい。見上げていくと後ろにひっくり返りそうだよ。ひっくり返ったら谷の底。写真を撮ったら、すぐに歩行再開。まだまだ慎重の道は続く。さらに登りも加わる。ここにきて急登か?。そうだよねあの屏風岩の上が頂上なんだから。デカい岩壁はクライマーじゃないと登れないし、一般人のための登山道だってそれなりの登りのはず。見上げると山小屋のベランダみたいなものが見える。頂上ももうすぐか?。ここまで来ると完全に雪山の雪道。ザクッザクッと雪を踏み締める音。ただ、今日の陽気で溶け始めているのかゆるい。これが滑りやすいし、靴底にへばりついて重たい。慎重の道はさらに慎重のハードルが上がる。そして急な階段。これが頂上へと続く階段か?。それにしてもこの階段ほぼ壊れているし登りにくさは岩の山道以上。おまけに可愛いハシゴや鎖も両側に張られていて、けっこうな危険箇所だ。緊張しながらももうすぐ頂上だというモチベーションで力を振り絞って登っていく。やがて視界が開け、山小屋らしき建物の前の広場に出る。目の前を人が横切る。今日初めて出会った人。やったー!!。着いた!!。近くにあるベンチに腰を下ろす。今まで見上げてきた屏風岩を今は見下ろしている。下の街並み遥か遠くだ。ここに座っていると今までが何だったんだというぐらい人が往来している。きっとメジャーな登山道は自分が登ってきたとこじゃないのなんだろう。そして人々はここで休んでいない。たくさんの人々の声が聞こえる方へ視線を向けると巨大なアンテナが立つ山が見える。多分本当の頂上の開運山はあそこだ。確かにここより上だ。さっそく立ち上がり人々が向かっていく方向へ歩き出す。ここから雪道だが歩きやすいちゃんとした階段。もう一つアンテナが立つ別のピークも見える。あっちが三ツ峠山を構成する一つ御巣鷹山か?。昔、旅客機が落ちた山なのか?。そっちにも寄ってみたいが、とりあえず、まず三ツ峠山の最高点の開運山だよね。最後の階段、頂上はもうすぐ。ふと振り返ってみると驚愕の風景。南アルプスの全容。こんな風景初めて見た。鳥肌が立つ。富士山ももちろん見えているのだがこの湯8期化粧した南アルプスの山々の神々しさはまた別物だ。視線を元に戻し再び登り始める。降りてくる人とすれ違う。さあ、いよいよ頂上。今度こそ本当に着いた!!。圧倒的な富士山と南アルプス。想像を遥かに超える絶景だ。よくここまで来れた。本当に来れてよかった。(続く続く)

この記事が参加している募集

山であそぶ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?