見出し画像

ししょうせつ・2

目前の景色。登校中の子供たち。四方の丘から落ちてくる小道を流れる小川のようにズルズルと重力に引っ張り込まれるようにやってくる。流れは道が交わるごとに大きくなる。小さな流れは渓流から平野を流れる川になる。自分もその流れの中で溺れないように足を進める。今朝は不本意な帰宅を繰り返した都合上、駅へ向かう歩みは巻きで行かなくちゃいけない。子供の集団には乗っているし、ついていけてるんだけど、髪の毛をサラサラ風になびかせ颯爽とワンピース翻していく女の人や無難に暑苦しさを感じさせずにスーツ決めた男の人は子供達の川の水面を滑るように進んでいく。自分もそれに合わせないといけないと思うのだけれど、そういう意識はすぐに忘却。省略。大人たちの背中はみるみる小さくなっていく。各所各所には旗を持って通学河川の流れをコントロールするお母さんや地元のおじいちゃん。お母さんたちの義務労働は大変だな。と思いつつも、一方。「子供達を見守り隊」の蛍光グリーンのベストを羽織ったおじいちゃん。通過する一人一人に「おはようございます」の声がけしてくるのがうっとおしい。ここは爽やか笑顔でおはようございますと大人の対応することが正しい街の住人のすること。けど、しない。睨み付けるとか積極的な敵対逸脱行為はある意味相手の挑発に乗る行為でもあるし?。この場面はガン無視という振る舞いで通り過ぎる。否応無しに子供たちの渦に揉まれた進軍。最終目的地が見えてくる。小学校の正門。子供の流れはこちらからの流れだけではない。正面から。右から。左からも。この流れをたくさんのお母さんや先生が制御。適切にさばいて昇降口へと流し込んでいる。小学校に吸い込まれている色とりどりの子供たち。これだけの人数の子供たちの行動が連日整然と達成されているのはけっこうな驚きだ。毎日満員電車にに乗って黙々と通勤をしている大人はこんな子供時代から仕込まれた資質なんだなあって。列を乱さない。それがこの国のアイデンティー。そんなこと思いつつ。物質的な子供の群れの圧力から解放された。自分なりのペースの流れ作れる解放感。フーッと深呼吸して。先を急ごう。学校をすぎると道も広くなる。丘を緩やかにくだってきた傾斜も平坦になる。この辺は海抜数メートル地帯。みっしりと立て込んでいた住宅街の世界から、視線を上げると前方に高いビルも望める。道の両脇も個人住宅からマンションやオフィスビルなど比較的大きな建築物が並ぶようになってくる。そんな中。緑色のペンキが所々剥がれて赤錆色に覆われそうなトタンの波板で作られた小屋が近づいてくる。この小屋の佇まいがなんともこのあたりの風景に馴染んでいなくて。でもそれがちょっと気にもなり。この横を通り過ぎることは、毎日の道すがら一つのアクセントにもなってる。雑草に覆われたトタンの波板建築を今日も無事に通過。そんなテンション保ち。進行方向に改めて目を向ける。大型車両や普通車両が頻繁に流れる大河。カツカツと靴音を響かせ自分と同じ目的で歩く人たちがどんどん増えてくる。彼ら彼女らと共に大河に近づいていく。エンジン音に圧倒されるようになる。大河を渡りきるために信号待ちをしている人、バス停でバスを待つ人。コンビニに入っていく人。目前を横切っている大河の先を見ればランドマークタワー。ここは横浜駅を目指す自分の中間地点。ひとまず一区切り。ようやく到着。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?